羽菜

ごくごく普通の日常ではありますが、日々のよしなしごとをこのまま埋もれさせておくには忍び…

羽菜

ごくごく普通の日常ではありますが、日々のよしなしごとをこのまま埋もれさせておくには忍びなく、ここに置いていくことにしました。 よろしくお願いします。

最近の記事

何気なくつけた夕方のテレビニュース。 小さな居酒屋の特集。 知らないお店だけど、地元だったのでスマホをいじりながらなんとなくつけていた。 汗を流しながら鉄板に向かって小気味よくコテを動かし接客もこなす女性。 掠れたその声になぜか既知感がある。記憶を呼び起こされる声。 どこで聞いたのか? 画面に映る顔をじっと見つめる。 あぁ。小中学生で同級生だったFちゃんだ。 考えてみれば、同じクラスになったことはなかったけど、同じ部活で汗を流し、朝練では家に迎えに来てくれて、部活終わ

    • 狼少年

      生命の神秘を日々目の当たりにして暮らしている。 祖母は107歳。私にとっては義理の祖母。 完全に寝たきりになってから、もうすぐ一年。 何度も何度も医師から、会わせたい人がいたら呼ぶようにと言われたけれど、その度祖母は持ち直している。 ゼリー飲料がメインで、時々スープや温かいコーヒーなども少量だが口から摂取し、家族との会話も頷くだけのことが多いけれど、それでも時々囁くように声に出して応えてくれることもある。 近所の人に「おばあちゃんどう?」と訊かれる度、あまり良くない

      • 金木犀

        仄かに庭の金木犀が香る 近所の人に言われてはじめて気づくほど微かに 芳香剤とは違う鼻腔に優しい匂い 不意に小学生の頃を思い出す 当時女子の間では空前のポプリブーム わたしポプリ作るのよなんて言うと女子力高めと認定される 御多分に洩れず私も『ポプリの作り方』の本を少ないお小遣いから捻出して買ったりしたけれど、作ったことなど一度もないし、作ったという女子に出会わなかったこともなかった 作ればポプリもきっといい匂いがするんだと思う けれど、少し肌寒い空気の中を歩きな

        • 寝息

          静かな静かな しんとした夜の中でも、耳を凝らさないと聞こえない寝息 本当なら私もその穏やかさのおこぼれを頂戴して ゆっくり心安らかに眠れるのに 隣りに眠る祖母のそれは 生の証 常夜灯のオレンジ色の中 祖母の口元や布団の動きをじっと見つめ 胸の上下動を確認する あぁちゃんと息してる 安堵して布団にもどり私も眠る 静かな寝息を耳の奥で感じながら