あの時、もし。(買い切りマガジン『航海日誌。』)
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不思議と、文章が「そっちに行ってしまう」ということがある。
べつにそれを書こうとおもってるわけじゃないのに、そうなってしまう時のことだ。
私の中で、それは「人生」だったり「ガン」だったり、「バセドウ」だったりする。これは私自身じゃないけれど、≒で私自身を指していたりして、とても厄介だ。厄介で、しょうがない。
ガンが発覚してからは約十三年、バセドウが発覚してからは約十年経っている。だけどいまだに、そこから抜け出せない。
これは、私がおそらくこれからも、抱え続ける矛盾。
「もし、病気じゃなかったら」
幼いことだと、思う人もいるかもしれない。私自身、いまだにそんなことを言うのかと、馬鹿馬鹿しく思う時もある。
でも、どうしても抜け出せないのだ。
「あの時、もし」から。
〇
cakesコンテストで佳作を頂いた文章も、そういうものだった。本当は別の事を書こうとしていたのに、どうしても、病気について書いてしまう。
一度書いたんだから、もう書かなくていいと、そう自分に言い聞かせていた。正しくは「書いてはいけない」と。
だって、自分語りってうざいじゃん。誰も興味ないもの。
でも、どうしてもだめみたい。
今、小説を書いている。
プロットも主人公の名前も決めずに、書き始めたそれは、書いているうちに次第に輪郭を表してくる。
おそらく、主人公は、彼女はもともと病気だった。いまだに、「もしあの時病気じゃなかったら」って、そう思っている。そう思うことも、恥ずかしいと思っている。
そんな子にするつもりはなかった。なかったけど、気づいたらそうなっていた。
〇
そろそろ降参しなくちゃいけないかもしれない。
十年経ってもまだ、私は自分の病気から、抜け出せない。べつに抜け出さなくてもいいかもしれないけれど、一度きちんと、これの奥底に潜って、潜って、潜って、その海のそこでうずくまっている、もう一人の私に会いに行かなくちゃいけないのかもしれない。
だから、これは旅路である。
どうしてもそちらに行きたいなら、とことん、とことん付き合ってみよう。
恥も、かっこ悪さも、情けなさも、全部一度書いて、書いて、書いてみたいと思う。
マガジン『航海日誌』は、そういうマガジンです。
一人で旅をするのはさみしいから。だれも見ないかもしれないけれど。買いきり100円。更新は不定期。意味不明なメモみたいなものの時もあると思います。
それでもいいよ、どこまで潜るか、興味あるって人だけ、一緒に潜ってくれると、すこしだけ心強い。
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