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スポーツ中継はコンテンツの魅力で勝負を!

ラグビーワールドカップは日本が試合を重ねるごとに視聴率は上昇カーブを描き、南アフリカ戦は41.6%、瞬間で49.1%を叩き出した。当初、これほどの視聴率を稼ぐとは誰も思っていなかっただろう。日本シリーズが吹き飛んでしまうほどの破壊力だ。前日のニュージーランド対アイルランドも、日本シリーズの倍の数字を取ってしまったほどだ。なぜ、これほどまでに視聴率が伸びたのか。

なぜこの意見が多くの共感を得ているのかというと、その対極にフジテレビのワールドカップバレーという存在があったからだ。ラグビー好きの人からは案外その視点が欠落している。ジャニタレが試合中にしょっちゅう顔を出す中継に、彼らのファンを除いてはみんな辟易していたのである。
ラグビー中継の視聴率が伸びた要因はその他にもいくつかあるが、"事前番組"として大きな役割を果たしたのがTBSの「ノーサイド・ゲーム」。ワールドカップ前に放送されたのだから、おそらく開催時期に合わせての放送だったが、これでラグビーに興味を持った人が少なくなかったと思う。試合を観たいという飢餓感が、うまくはまった側面もあるといえる。
そして、各国のチームが日本全国でキャンプを張って、合間に地域の人たちと交流したりして、日本全体をムーブメントに巻き込んだ。それに試合後に両チームの選手が一緒におじきする"しきたり"が生まれたり、いい大会を作ろうという気持ちが選手たちにも満ちていて、好感度が上がり視聴者の興味を惹きつけた(試合後に暴れた某国の一部選手を除く)。
日本の好成績も相まって、どんどん相乗効果が出た。一方、中継は「ルールが難しい」ということから反則などで適宜テロップを出し解説者が補足。日テレお得意の資料読みをやる時間がなかったのも結果的に中継の高評価に繋がった。TBSなどがやりがちな選手に妙なキャッチフレーズをつけないのも良かった。
事前には、大会を中継するNHKと日テレ以外の放送局はラグビーワールドカップについては冷淡な扱いだったが、日本の快進撃にさすがに無視できなくなり、ワイドショーなどで周辺情報を流すようになって、それが急に情報量が増えた感じになった源。結果的に、情報にメリハリがつく形になった。日本は準々決勝で敗退したが、準決勝以降も波が続くのかどうか。もし残りの4試合も15%以上が出たら、大成功と言えるだろう。
そして、冒頭に紹介したツイートのように、これをきっかけにスポーツ中継の見直しが進むかもしれない。最近のテレビ局は余計な出費は避けたい風潮があり、タレントを使わなくても視聴率が取れることがわかったのならシンプルな実況解説のみのスタイルに回帰することも考えられる(使わざるを得ないスポーツは、競技そのものに魅力がない証と受け取られかねない)。
もちろん、そのぶん中継技術への投資は必要となるが、製作陣の腕の見せどころが増えるわけで、スタッフのやりがいがうまく中継に反映されれば視聴者にとっても嬉しいこと。サッカーも、もう少し専門用語の解説を増やしてもいいし、野球もデータの見せ方にまだ改善の余地があると思う。スポーツそのもののコンテンツの魅力が引き出された中継は楽しく、視聴者はハマることを今回の中継で悟ったテレビマンは少なくないはず。どこまで魅力を引き出せるか、各局それぞれで工夫を重ねてほしい。

地元網走に帰ってきて5年半経ちました。元競馬専門紙編集部員。サッカーや野球、冬はカーリングなどスポーツ観戦が好き。もちろん、競馬も話題にしています。時事ネタや網走周辺の話題なども取り上げます。よろしければ、サポートもお願いいたします。