見出し画像

「わたし」と「あなた」 〜 人称が自己評価に与える影響についての実証研究

青山学院大学 経営学部 服部ゼミ 3年生
大澤 尊・大橋 潤也・落合 乃彩・宮川桃寧

概要

一般的なアンケート調査では、全く同じ内容の質問をしていたとしても、設問における主語(人称)が異なる質問方法が混在しています。

質問内容は同じだが、設問で使用される「人称」が異なる例

本研究では、質問で使用される「人称の違い(わたし と あなた)」が回答者の自己評価やその開示に及ぼす影響を明らかにするサーベイ実験を行いました。大学生140名を、内容は同じであるが主語(わたし or あなた)のみが異なる2種類の質問群に無作為に割り付け、その質問への回答傾向を比較しました。質問のタイプとして  (1) 性格的な特徴に関する質問、(2) 仮想的な状況における行動に関する質問を行い、回答の比較を行いました。

実験結果から、
① 男性は、社会貢献に関する質問(『あなたは XX 円寄付できる』or 『わたしは XX 円寄付できる』において「あなた」が使用されている質問への回答は、「わたし」が使用されている質問への回答に比べて、有意に高い金額を寄付できると回答した。
② この効果は、男性の中でも、自信・謙虚さ・素直さ・ネガティブ思考の程度が低い人たちに顕著に見られる傾向である。
ことが明らかになりました。

この結果は、社会貢献への姿勢のように「他者からの目」が重要になるような問題においては「あなたは」と問われることで、第三者の目を意識したことが要因ではないかと考えられます。

この結果は、アンケートや調査の際に、設問の仕方、特に人称の使用法によって回答にバイアスが生じる可能性を示唆しており、調査の設計や評価に重要な意味を持つと考えられます。

頂戴したサポートは、ゼミでの研究運営費用に充てさせていただきます!