スローな社会文化

keyword: 脱成長/スローライフ/生活文化/カフェ

本稿の方向

近年、コロナ禍において行動が制限される中、セルジュ・ラトゥーシュ著『脱成長』に描かれる社会観が見直されている。
本稿は、彼の掲げた「8つの再生プログラムの好循環(8つのR)」にひもづいて想起される活動や生活文化を探っていきたい。

「8つの再生プログラムの好循環(8つのR)」:
再評価(reevaluer)、最概念化(reconceptualoser)、最構造化(restructurer)、再ローカライゼーション(relocaliser)、再分配(redistribuer)、削減(reduire)、再利用(reutiliser)、リサイクル(recycler)を指す。これらは「循環」という考え方に帰結している。

セルジュ・ラトゥーシュ著『脱成長』

「スロー」ってなに?

そもそも「スロー」には、これまでどのような議論があるのか。一般的に論じられるその一部について、ここで取り上げてみる。

スロー・デザインは、イタリアで生まれたスローフード運動を起源とする、デザインに対する考え方である。モダン・デザイン以来の大量生産による「早い・安い」「簡単・便利」に対抗して、少量生産と「手間・暇」を見直すもの。LOHAS(ロハス)は、Lifestyles Of Health And Sustainabilityの略語。米国で注目されている健康と持続可能な社会生活を志向するライフスタイルのこと。1970年代以降、先進諸国では大量生産、大量消費による環境破壊が進行、90年代には、環境汚染や異常気象などに直面する。現状のままでは、環境破壊をさらに助長し、持続性のある社会生活を営めないという危惧から、健康や環境に関心をよせる消費者層が米国に登場。自然食品や、自己啓発事業、環境問題に前向きな企業の商品など、LOHASスタイルを取り巻く消費市場が拡大中である。2002年9月、日本に初めてLOHASが紹介され、以後注目を集めている。(武正秀治 多摩美術大学教授 / 2007年)

コトバンク 知恵蔵「スロー・デザイン」の解説

1970年代以降、大量生産・消費活動を伴う、産業主義的な社会への反動として「スローフード活動」が元となり現れた考え方であったと思われる。
それは、環境問題が取り沙汰された当時から現在にいたるまで注目されてきたのだ。

ここで、「LOHAS(Lifestyles of Health and Sustainability)スタイル」という言葉が出たので、「IDEAS FOR GOOD」のわかりやすい記事を眺めてみよう。

直訳すると「健康的で持続可能な生活様式」。ロハスに関する明確な定義はされていないが、「心身の健康、持続可能な社会や地球環境を無理なく追及する、心豊かに暮らす生活スタイル」の意味で、目先の利益よりも、10年後、100年後の地球を見据えた暮らし方を指す。ロハス的な思考の根本には、「経済的にも精神的にも無理のない暮らしの中での、地球環境に配慮した生き方」という考えがある。例えば、環境に配慮してマイバッグやマイカップを持参することはロハス的な生活と言えるが、その際に、「自分が出来る範囲で無理なく」環境保全に役立つ生活を送ることが大切である。
(ロハス的なライフスタイルの例)
持続可能な経済: 再生可能エネルギー、エコ建築素材・技術、SRI、代替交通、環境マネジメント、代替・省エネ製品など
健康的なライフスタイル: 天然・有機商品(食品・衣料など)、オーガニック、フェアトレード飲食品、地産地消、パーソナルケアなど
代替医療:東洋医学、ホメオパシー、予防治療、全体治療、補完医学など
自己開発(セルフ・ディベロップメント): ヨガ、禅、瞑想など
環境に配慮したライフスタイル: エコ住宅、エコロジーなオフィス製品、有機・再生繊維製品、環境負荷の低い電化製品、エコツーリズムなど
これらを生活の一部に取り入れ、それを無理なく持続的に行うことがロハス的なライフスタイルの一例で、具体的には、ヨガやピラティス等のエクササイズや、オーガニックな食材を使った食事などを通して身体共に健康になろうという行動が挙げられる。また、スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスの利用を控える、デジタルデトックスや家庭菜園などによるストレスの緩和も含まれる。

「LOHAS(ロハス)とは・意味」IDEAS FOR GOOD
https://ideasforgood.jp/glossary/lohas/

「スロー」も広義な考え方であるが、この「LOHAS(Lifestyles of Health and Sustainability)スタイル」もかなり抽象的な話なのである。
本稿は、このような対象を懐疑的に扱いながら、具体的な広がりを持たせたい。その上で、「スロー」な生活文化を周知できたらと思う。


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