日銀の利上げの予測に用いられるBOJスワップ:利上げ確率の計算例

前回、BOJスワップについて簡単なメモを作りましたが、今回はその簡単な補足です(まずは下記のnoteを参照してください)。
日銀の利上げの予測に用いられるBOJスワップに関するメモ|服部孝洋(東京大学) (note.com)

まず、昨日の夜から内外金利差が拡大し、円安が進み、160円を突破しました。下記をみると、米金利(青色)とドル円(白色)の動きは分単位で見ても非常にきれいに相関しています。

それに伴い、市場参加者の利上げに関する予測が高まり、(次回の決定会合スタートの)BOJスワップのレートが15bpsまで上昇しました。

上記を前提に、BOJスワップを用いた利上げ確率について簡単なメモを書いておきます。まず、今のマーケット構図では、10bpsの付利が付されており、業者間市場のコストなどを加味し、TONAが7.7bps(≒8bps)で推移している状況です。利上げ確率をどのように考えるかですが、一つの考え方として、8bpsからどの程度上昇すると市場参加者が織り込んでいるか、ということです。

例えば、次回の決定会合でTONAが25bpsになるように誘導されるとアナウンスされるとしましょう。この場合、利上げがなされた場合、8bpsから25bpsになるところ、現在のBOJスワップレートが15bpsですから、次回の会合以降、平均的に15bpsで取引されるとマーケットで見込まれていると解釈できます。したがって、(15-8)/(25-8)=7/17という形で、利上げ確率は41%程度と計算されます。

もっとも、上記では様々な仮定を行っている点に注意してください。最大の仮定は、利上げされた場合、日銀がTONAを25bpsに誘導するとしましたが、これは例えば、TONAが15~25bpsのレンジで推移するよう誘導するなどもありえます。

また、現在、付利が10bps付されていますが、その関係で実際のTONAは7.7bpsになっており、利上げ後、この付利がどうなるかという論点もあります。付利が25bpsになるように利上げがなされ、例えば、TONAが15~25bpsのレンジで推移するよう誘導すると変更されれば、利上げ後、実際に市場で取引されるTONAは23bpsくらいになるかもしれません。したがって、この場合、利上げ確率は、(15-8)/(23-8)=7/15という形で、47%と想定すべきかもしれません。大切な点は、BOJスワップはOISであり、その実際のコストは、(将来)実際にマーケットで取引されるTONAによって決まり、市場参加者はこの点も織り込んだうえでプライシングしているということです。

言いたいことは、どの程度利上げするかによって利上げ確率が全く異なるため、利上げ確率を見る場合はどういう想定をしているかを注意深く見る必要があるということです。例えば、利上げが単に10bpsであると思っていれば、利上げ確率は50%を超えるということになります。

なお、Bloombergには、WIRPと呼ばれる有名な機能があり、円金利の利上げ確率も計算されます。注意するのは、円金利についてはデフォルトで10bpsと利上げ幅が設定されているため、この値をそのまま使わないほうが良い可能性があります。Bloombergで、「オーバーライドを使用する」という機能を使えば、自らが考える現実的な利上げ幅を設定できるので、その点の調整をする必要がある点に注意してください。

今回は以上になりますが、必要に応じて加筆修正します。なお、上記はOISの知識が大前提になっているので、OISを知りたい読者は「日本国債入門」の11章を参照してください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?