CDSについてにメモ

CDSのプレミアムはなぜ100%を超えうるのか」というメモをかきましたが、CDSの商品性は明示してなかったため、ここではCDSの商品性をより明示し、CDSのプレミアムが100%を超えることが有り得ることを考えます。今回はまずはCDSの商品性について確認します。


そもそも、CDSはある会社がデフォルトした場合の保険を提供するデリバティブ取引です。例えば、筆者(私)が企業Aのデフォルトの保険を提供して、読者がその保険を受け取るとします。その一方、私は読者から保険を提供する対価として保険料(プレミアム)を受け取るとします。この場合、私は保険を提供しているので、プロテクション・セラー(プロテクションの売り手)といい、読者は保険を買っているので、プロテクション・バイヤー(プロテクションの買い手)といいます(下記の図のとおり)。


CDSの商品性の理解を深めるため、次に、CDSのキャッシュフローを確認します。私(プロテクション・セラー)が受け取るプレミアムを2.5%とすると、私が受け取るキャッシュ・フローは毎年2.5%になります。想定元本を100円とすれば、私は保証の対価として毎年2.5円を受け取り、読者は保険料として毎年2.5円支払います。これはデフォルトがなかった場合に支払うプレミアムであることに気をつけてください。

<期中のプレミアムの支払い(デフォルトがなかった場合)>

このようにデフォルトがなければ、私は読者から毎年2.5円ずつ受け取れます。もっとも、私は読者にA社のデフォルトに伴う保険を提供しています。したがって、もし仮にデフォルトをしたら読者は私からその保証を受けることができます。そこで、次に、この場合のキャッシュフローについて考えます。

まず、読者がA社の社債を持っているとして、その社債のデフォルトのヘッジとしてCDSのプロテクションを買っていたとします。読者がA社の社債を100円もっていて、デフォルトし、例えば、その社債の価値が1円になり、損失を被ったとします(残余財産があるなど0にはならないとします)。

素朴な決済方法は、読者がA社の社債を私に渡して、私が100円を読者に渡すことで決済をします。読者は社債を満期まで持てば100円得られるところ、デフォルトしたため、その価値が1円になりました。しかし、読者がこの社債のヘッジとして、CDSのプロテクションを買っているため、デフォルトした社債を私に渡し、私から100円を受け取れれば、社債を最後まで持ち切ったと同じ経済性になります(つまり、デフォルトが保証されたということになります)。この関係を見たものが下記の通りです。このように社債そのものを渡すことでCDSにかかる決済を行うことを「現物決済」といいます。

<デフォルト時の決済:現物決済>

一方、社債を持っていなくて、現金で決済することもできます。上記と同じ経済性を考えれば、私が「100-社債の価格(債務の価値)」を読者に渡せば経済性は同じといえます。したがって、下記のような取引になります。これは現物でなくて現金で決済するため、「現金決済」といいます。

<デフォルト時の決済:現金決済>


ちなみに、CDSのテキストなどでは「100-社債の価格(債務の価値)」を「100-回収率」などと記載します。この回収率はオークションで実施するのですが、CDSのオークションについては必要に応じて別の機会で解説します(CDSのテキストを参照してください)。

最後に注意点を記載します。まず、本稿では、デフォルトと書きましたが、CDSではクレジットイベントが明確に定まっています。日本の場合、3つのクレジットイベントが用いられていて、バンクラプシー、支払不履行、リストラクチャリングです。それぞれの説明はCDSに関する書籍に譲り、ここでは割愛します(ちなみに、金融だと4つのクレジットイベント、米国では2つのクレジットイベントなど、セクターや国によって変わるので気をつけてください)。

また、ここでは話を簡単にするため、毎年2.5円を支払うという形で説明しましたが、実際にマーケットで取引されているプレミアムの支払い方は、このような形ではなく、期中支払うプレミアムは1%と基準化されています。その一方、2.5円毎年支払った場合と価値(PV)が同じになるよう、当初に資金を受け渡す形になっています。両者の価値は本質的に同じであるため、本稿では毎年、2.5円支払うという形で説明しました。

上記を前提に、次回はCDSの商品性を前提に、CDSのプレミアムが100%を超えうることや社債との関係をかんがえていきます。

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