SVB破綻に関するFRBの調査報告書:銀行が有する金利リスクについて

SVB破綻に関するFRBの調査報告書がでており、いくつか報道が出ています。全体の評価については、日経の報道などを参照していただければと思います。原文は下記でみれます。

Review of the Federal Reserve’s Supervision and Regulation of Silicon Valley Bank

今回のSVBの破綻に関し、4つのkey takeawayは下記の通りということです(DeepLでここから機械的に訳しました)。

①シリコンバレー銀行の取締役会および経営陣は、リスク管理を怠った
②連邦準備制度理事会の監督者は、シリコンバレー銀行が規模を拡大し複雑化するにつれ、脆弱性の程度を十分に理解していなかった
③監督当局は、脆弱性を特定した場合、シリコンバレー銀行がそれらの問題を迅速に修正することを保証するために十分な措置を講じなかった
④経済成長・規制緩和・消費者保護法に対応しアプローチと監督政策のスタンスの転換は、基準の縮小、複雑化、主張の弱い監督アプローチの促進により、効果的な監督を阻害した

SVBの破綻については多くの興味深い点がありますが、私が注目している点は銀行の金利リスクテイクについてです。例えば、この報告書では、「SVBFG had fundamental weaknesses in risk management. SVBFG management was focused on a short-term view of IRR through the NII metric and ignored potential longer-term negative impacts to earnings highlighted by the EVE metric.」としており、金利リスクに関してEVEを軽視していた点を指摘しています。

また、「In response to EVE breaches, SVBFG made model changes that reduced the level of risk depicted by the model」という指摘もしており、金利リスクが大きくなったら、モデルを変えるということもおこなっていたようです。私が最初にコア預金内部モデルを知ったときは、そのアイディアは理解できるものの、資産側の金利リスクをとれるようにするためのトリックだな、という印象もうけました。

この辺りの議論は比較的専門性を要する部分ですが、私が記載した「銀行勘定の金利リスク入門」を読んでいただければ幸いです(下記のリンクから読めます)。そもそもバーゼル規制における金利リスク規制がどう扱われているかや、EVEやNII、さらに、コア預金などの基礎的な概念について整理しています。私の「ファイナンス」での原稿は学部生が読んでもわかる水準を目指しており、実際、学部生が読んでもわかると思います。
https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2021_06.pdf

もっとも、紙面の関係でカバーできていない内容もあります。特にコア預金内部モデルについてはもう少し丁寧にカバーしたいと考えており、どこかで大幅にアップデイトしようと思っています。コア預金内部モデルは昔から関心があるので、現在、夏休みに東大生をRAに使って包括的にサーベイさせようと考えています。今年も夏休みにCREPE(東京大学政策評価研究教育センター)というシンクタンクを通じて、私のRAを募集しようと考えています(関心がある学生がいたら連絡してください)。昨年の様子は下記に記載があります。
2022年 CREPEで実施したインターンのメモ|服部孝洋(東京大学)|note

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