学生が2008年の金融危機を学ぶ際の簡単なガイド

今回もライトなメモです。今月、株価や為替が大きく変動し、金融危機だというような記事も多くみられました。

私個人の体験を書くと、私が入社1年の時に、リーマン・ブラザーズが潰れたという経験をしました。当時は六本木ヒルズにリーマン・ブラザーズがあったのですが、2008年に、リーマンの社員が大手町にくるという体験をしました。私は2008年に入社したリーマン・ブラザーズと同期にもあたります。

今思うと、当日は1年目だったこともあり、金融ビジネスはほとんどわからない状況でしたので、率直に言えば、2008年時点では何が起こっているかはわからないという感じでした。むしろ、事後的に先輩から教えてもらったり、あるいは、その後の規制改革を受けながらどういうことが起こったかを把握したという印象です。

今回は、今の学生が、2008年の危機をどのように学ぶかという観点で簡単なメモを記載したいのですが、まず圧倒的にお勧めしたいのが、下記のバーナンキ先生によるレクチャーです。当時のFRB議長が大学で講義を行った内容で、大変分かりやすいです。

英語の字幕があるので、無理なく理解できるとはおもいますが、もし日本語で理解したいなら、「連邦準備制度と金融危機―バーナンキFRB理事会議長による大学生向け講義録」という日本語の書籍がでています。

金融危機関連の書籍についてはそれこそ膨大にあり、面白いものも多いのですが、私は、当時の財務長官だったガイドナーの書籍は非常に面白く、何度もよみました。


映画については、下記で、「マージン・コール」と「マネーショート」をお勧めしました。特に「マネーショート(英語名はBig Short)」は人気がある映画だとは思うのですが、その一方で、学生目線だと、かなり難しい映画ともいえるので、注意が必要だとおもいます。私が解説しながら、学生と(映画の一部を)一緒に見たこともあるのですが、一部のシーンを説明するだけでかなり時間が取られる印象です。


「マージン・コール」と呼ばれる映画も有名です。最初にリストラのシーンで始まるのですが、私の知人が驚くほどリアルだったと指摘したのを覚えています。

これらの映画は金融危機を全容がわかるというより、ドラマとして楽しむという印象です。ドキュメンタリーという観点では、「インサイド・ジョブ」という映画も重要です。これは「アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞」もとった評価の高い映画だとおもいますが、金融業界や(一部の)経済学者を厳しく批判している側面もあります。私個人は賛同しかねる部分もあるのですが、学生が興味を持つきっかけを作るに有効なのかな、とも考えています。

個人的には、こういう一般向けの書籍や映画をきっかけに、経済学などの教科書などへ進むのが良いのではと思っています。マクロ経済学のテキストや金融論のテキストには、金融危機の経験について記載があるので、そこでどういう説明がなされているかをチェックすると全容がより整理されるとおもいます。

金融危機を経て、金融規制が大きく変わり、金融ビジネスそのものも大きく変化しました。今社会人になってデリバティブビジネスなどに関わると様々な規制を覚えなければなりません。そういう意味で、例えば、「金融規制の原則」など、金融危機後の規制の書籍を読むというのもお勧めしたいです。

私は、財務省の「ファイナンス」などでバーゼル規制についても説明しており、関心がある人は下記をみてください。個人的には、新書などで、もっとライトに金融規制について学べる本をいつか書いてみたいなと感じています。
バーゼル規制(銀行規制)を勉強したい人向けのガイダンス(アップデイト版)|服部孝洋(東京大学) (note.com)

今回は簡単なメモですが、必要に応じて加筆修正します。

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