補完当座預金制度(付利制度)のメモ②:大規模購入を維持しながら利上げするための措置
昨日、当座預金付利制度(補完当座預金制度)について白川本をベースに議論をしましたが、本日もその続きです。今年の春に利上げが見込まれていますが、それまで二層構造にするか、一層構造にするかなどの議論はしばらく続くと思います(今後、報道など出てくると予測します)。
当座預金付利制度(補完当座預金制度)についてのメモ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
まず、かつての制度主旨を理解することが基本なので、再び、当座預金付利制度(補完当座預金制度)の導入経緯を議論します。当時の経緯を知ることができる重要な文献として、副総裁であった中曽さんの書籍があります。
中曽本では、p.311にその記載があります。
白川本と同様、FRBの影響が大きかったということです。また、下記のような指摘もなされています。
この点はFRBでも企図されていたことなのですが、米国ではFFレートが下限にならず(それは付利の対象外に大きなプレイヤーがいるからですが)、FFレートが付利金利を下回って推移したことは有名ですが、これは私が記載した「フェデラル・ファンド(FF)市場 およびFFレート(FF金利)入門」を参照してください(下記のリンクより読めます)。
202205d.pdf (mof.go.jp)
さらに面白いのは、補完当座預金制度の趣旨として、下記のような指摘をしています。
というわけで、白川本と同様、やはりこの制度は、出口戦略を意識して導入された側面もあるということです。
今のように大規模な資産購入を維持しながら利上げが可能になるのは、白川総裁時代に、補完当座預金制度を入れておいたから、とみることができます。その意味で、この春に利上げが見込まれるこの局面にて、白川総裁が導入した政策の効果がはっきりとみえるということで、まさにこの時の制度主旨を改めて議論すべきタイミングだとおもいます。
なお、中曽本では、「市場金利は、無担保コールレートの誘導目標を中心として、補完当座預金制度の適用金利を下限、補完貸付制度の適用金利を上限とする「回廊(corridor)」の範囲で変動することになる」(p.313)としていますが、この時にコリドー方式が取られていたことが知られています。例えば、慶応の白塚先生の金融政策の書籍では下記のように記載しています。
白塚本では、図表なども用いて説明しているため、関心がある人はそちらも参照してください。
ちなみに、白塚先生の金融政策の書籍も、円金利市場や金融政策を理解するうえで、手元に置いておく価値がある一冊だと思います。今回のように頭から通読せずとも、一つの概念を別の書籍で横から読んでいくことで、別の解釈に触れることが可能になり、より深い理解へとつながると感じています。
本日はここまでですが、必要に応じて加筆・修正します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?