フォワードによる理論価格とカバーなし金利平価のメモ

昨日、下記のツイートについて、私の周りで少し話題になりました。


私は上記を一読した時には、「理論値とも解釈できるのかも」と思いました。というのも、「カバーなし金利平価」(Uncovered Interest Parity, UIP)という「理論」によれば、一年後の為替レートは、フォワード価格になると期待されると解釈することもできます。どの国際金融のテキストをみてもらってもよいですが、例えば、永易先生らの国際金融のテキストみると(p.79)、為替の動き(期待値ベース)は内外金利差で決まると記載されており、これが「カバーなし金利平価」です。

一方、内外金利差から決まる価格は、フォワード価格でもあり、フォワードの価格は、単に予約価格を決めているだけという側面もあります。これを「カバー付き金利平価」(Covered Interest Parity, CIP)といいます。これはフォワードのプライシングが内外金利差から決まるという議論なのですが、これは単に「予約価格」を決めているだけです。上記で「現時点で1年後に決済されるドル円について裁定取引が起こらない値」と記載されているのはこのカバー付き金利平価を意図しているとおもいます。カバー付き金利平価についてはまた自著の宣伝になってしますのですが、下記の私の書籍の12章が参考になると思います。


「カバーなし金利平価」という理論に基づく将来の為替を「理論価格」とした場合、問題である点は、この理論は予測力がないということが広く知られている点です。私は昨年、ある著名な経済学者に、「カバーなし金利平価によれば、内外金利差が拡大したら、将来円高にならなければいけないのではないですか」と質問したら、「カバーなし金利平価は成立していないから」と一蹴されてしまいました。カバー付き金利平価の話に戻ると、内外金利差から決まるフォワード価格は単なる予約価格であって、それが実現する保証もなければ、投資家がその水準になることが「期待」されているかも保証がないわけです。

そのうえで、私が感じたことは、実務家の方が、「カバーなし金利平価」に立脚した価格を「理論価格」と感じにくいのは、おそらく予測力を持つに足るような理論になっていないからなのではないかと感じました(理論値と言いたくない気持ちも理解できます)。「理論価格」といった場合、その背後にある理論を明示されないということも誤解が生じやすい背景にあるかもしれません。

なお、フォワードを理論価格と呼ぶこと自体はそれなりになされています。例えば、下記では理論先物価格について私が説明していますが、これもフォワードに立脚した価格といえます。
国債先物暴落以降における国債先物と現物国債の裁定関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)

上記は私の単なる備忘録になります。違和感がある人もいるかもしれませんが、必要に応じて修正します。なお、金融危機以降、為替フォワードの価格は内外金利差のみできまらなくなってしまったのですが、これについても「日本国債入門」の12章を参照してください。

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