本日の日銀の政策決定会合(2024年3月19日)のまとめ:マイナス金利解除とYCC廃止

本日、日銀の政策決定会合が発表されました。大枠では、①YCC廃止、②無担保コールレート(オーバーナイト)を0~0.1%程度で推移するよう誘導、③長期国債買い入れを継続、④ETF・JREITの購入停止(CP等の買入は1年後を目途に終了)という理解をしています。詳細は下記のリンクを参照してください。
k240319a.pdf (boj.or.jp)

今回はリーク記事が相次いでおり、大部分の内容は例えば日経の事前報道が追認されたという印象を持っています。その意味でほぼサプライスがない結果といえます。もっとも、例えば、無担保コールレート(オーバーナイト)を0~0.1%程度を即日適用するかどうかや、3層構造がどうなるかなどについて関心を持っていました。

まず、3層構造がどうなったかですが、「無担保コールレート(オーバーナイト)」を、0~0.1%程度で推移するよう促すうえで、「この方針を実現するため、日本銀行当座預金(所要準備額相当部分を除く)に0.1%の付利金 利を適用する」と注記されており、これはマイナス金利前に戻すこと(いわゆる1層構造)と解釈されます。私にとって少々サプライズだった点は、「新たな金融市場調節方針および付利金利は、翌営業日(3月21日)から適用する」と注記されており、いわゆる即日適用という点です(過去の利上げについても基本的に即日だということです。利上げのタイミングについてはここなどでこれまで議論してきました)。

日銀のウェブサイトには下記のようないわゆるポンチ絵が出ており、上記の内容が整理されています。

k240319b.pdf (boj.or.jp)

長期国債の買入についても具体的に公表されていますが、2024年4~6月の買入については下記のように記載があり、長期国債の買入は維持されます。興味深いのは、「長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買い入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施します」と記載されており、長期金利にケアするため、指値オペやいわゆるシグナルオペについては維持されるということです。

mpr240319b.pdf (boj.or.jp)
mpr240319a.pdf (boj.or.jp)

また、買い入れのレンジをよく見ると下限は維持されているものの、上限は減少しています。例えば、5年超10年以下については2024年1~3月について4,000~9,000億円とされていましたが、4月からは4,000~5,500億円とされています。ただし、直近の買い入れ額は今回修正されたレンジでもカバーされているため(今の買い入れ額が中央値になるように新しく設定されているように解釈されます)、増額余地をなくしただけとみることもできます(物価連動国債は変わらず)。

mpr240229c.pdf (boj.or.jp)

キャプラの浅井氏は、ほぼ市場の予測通りであったころ、このレンジを買えた点に新鮮味があったとしています。

日銀の決定内容は、ほぼ市場が予想した通りの結果となったが、しいていえば、国債購入額の上限を下げた点に新味があった。(月間)6兆円程度をコミットすることとなったが長期的には買い入れ金額が増加するより下がると明確にしたことは今回の一つの注目点だ

日銀の追加利上げ「25年末までに3回」 英キャプラ浅井将雄氏 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

後日、植田総裁が、国債の保有を減らしていく可能性について下記のように記載しています。

大規模緩和の終了で「バランスシートのサイズを徐々に縮小していく方向感である」と表明。「将来どこかで国債の買い入れ額を減額し、国債の保有残高も国債の償還に伴い減少していくという局面に至る」としつつ、タイミングは「現時点で確定的なことは申し上げられない状況」とも述べた。

国債購入は将来的に減額し保有も圧縮、当面は残高維持-日銀総裁 - Bloomberg

ちなみに、短期の共通担保オペの運用については、「2022 年9月以降、金額無制限で実施してきた短期の共通担保資金供給オペ については、今後は、金融市場の状況を踏まえ、適宜の金額で実施します。オ ファー金額は、オファーの都度、通知します。」と記載されており、一定の制限が課されるようです。
mpr240319a.pdf (boj.or.jp)

今回は簡単な整理ですが、適時アップデイト・修正を行います。

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