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ドローンのVTXの技適の取得を個人でやった話(72号)

改定履歴:24-05-31 公開


だいぶ前になるんですが、当社でドローン事業をやろうということになって、当時としては高額だった技適取得済みVTX(映像伝送装置)の販売をすべく、技適の取得をしたことがありました。

Frskyの技適取得済みVTXがそこそこ安価で出たのをきっかけに事業から撤退したのですが、技適取ってみたいなって方に向けて諸々の資料を有料記事の一部として見られるようにしてあります(ちょっとお高いです)。

※技適取得のフローはあくまでも僕がやったやり方ですので、これが正解というわけではないです。他の会社さんだと出力をちょっと高めにしたりいろいろ工夫されているのを見かけます。

※関連パーツのリンクは一部Amazonですが、当時めちゃくちゃお世話になったCAVE RTAさんの商品ページへリンクしてあります。

技適取得のフロー

当社でやった技適取得のフローは下記の通りです

  1. 候補となる無線機の選定

  2. アンテナの調査

  3. 無線機の技術適合検査

  4. 申し込み

  5. 技適取得と開局申請

候補となる無線機の選定

候補となる無線機は総務省の技適検索を使って、すでに技適が取られている無線機と同じものを選ぶのが最適かと思います。僕もそのようにしました。選んだ無線機はTBS Unify Pro32 Nano 5G8 V1.1で、個体差なども考慮して複数店舗から最終的に30台くらい購入しました。複数店舗から買った理由としては、仕入時期が異なることによるロットのばらつきを期待したためです。
後述する適合検査では様々な無線機を一緒に持ち込んで、電波の測定をやったんですが、Unify以外だとTrumpが結構いい感じでした。

費用の話

技適をとるには適合検査の費用がかかります。費用は無線機の台数やアンテナ端子の数によって変わってきます。
技術基準適合証明の手数料の詳細はこちらで公開されています。

ここでは台数は1台、端子数1とした場合の費用は以下の通りです。
基本料新規:36,000円
1台目の試験手数料:38,000円

合計74,000円

念のため申し込み前に見積もりを取るようにしてください。

アンテナの調査

技適の申請時にアンテナ(空中線)もセットで技適を取得しました。そのためUnifyに付属しているアンテナの放射がどのようになっているのかを調査する必要がありました。アンテナの調査は専門の会社に依頼するのが確実なんですが、特に安価なメニューを提供しているところは「TELECに出すような調査結果票は提供できない」と断れることが多かったです。ので、アンテナの調査もTELECに依頼して行いました。
調査結果は当社で取り扱っているアンテナという体になりますが、課金エリアからダウンロードできるようにしてあります。

メーカーからアンテナの放射パターン図を送ってもらうという方法もあるのですが、測定する周波数が申請周波数と一致していること、水平、垂直のパターンがあること、測定条件や測定装置、測定時の写真など結構詳しい内容を入れ込む必要があります。これらを指示するのは大変なのでプロに任せた方が確実でした。

アンテナには念のためシリアル番号を入れました

放射パターンはTBSの純正アンテナFOXEERのLolipopを取得しています。課金エリアにはTBSの試験結果がダウンロードできます。FOXEERは別料金です。

無線機の適合検査

技適の検査の前に対象となる無線機すべてにおいて技術に適合しているかを申請者自身で検査をする必要があります。それなりの設備が必要になるのですが、当社では外注せずに東京都の産業技術研究所(都産技研)に行ってスペクトラムアナライザーを借りて検査をしました。スペアナの使い方は追い課金すればスタッフの方から教えてもらえます。

こういった施設は全国の自治体にあります。長野県だと長野県工業技術センターという名前です。お近くの施設を探したり、必要な機器を探すページも用意されています。
全国鉱工業公設試験研究機関保有機器・研究者情報検索システム

施設が見つかったら機器利用のページを開いて、手続きをチェックしてください。どうしたらいいのかわからないときは技術相談ってのがあるのでそこで聞くといいでしょう。僕も聞きました。
ドローンに搭載して映像を伝送する無線機の技適取得をしたい。技術基準に適合しているかの測定をそちらの機器利用でやりたいんですが
みたいな感じです。すると機器を選んでくれて費用なども教えてもらえます。僕の場合1回あたりだいたい3時間借りてました。

申込時に検査したい内容と対象の無線機、出力、アンテナ端子を連絡しておき、同時に使いたい機器があれば一緒に申し込みます。
僕の場合、スペアナと直流安定化電源(5Vが出せれば機種は問いませんと伝えました)をお願いしました。
無線機の出力によるのですが、-20dbのアッテネーターを用意するように言われたのでMouserで適当なのを用意しました。今みるとアホみたいに高いですね、こんな価格じゃなかった気がするんですが…
技適で申請する出力が25mWとかならアッテネーターは不要かと思いますが、もし400mWとか大きめの出力にする際は必要になってきます。うっかり高出力をスペアナに入れちゃうと壊れてしまう場合があります。スペアナは1台で何千万もするような機器なのでマジでくれぐれもご注意ください。

だいたいのVTXのアンテナ端子はu.FLなので、これを変換するアダプタも必要です。Amazonでいろんなタイプの変換をまとめてやれるアダプタセットが売られています。
u.FLオス→SMAメスの変換ケーブルがあれば、だいたいの測定器にはつなげられます。利用の際、端子はなんですか?って聞かれます。

このとき、手持ちのいろいろな無線機を持ち込んで電波特性を調べたところ、個体差はもちろんなのですが、メーカーごとに電波の出方が大きく異なっており、技適に通りそうだなーって雰囲気があったのはTBS Unify Mini ProとTrumpだけでした。

ドローン接続用のコネクタと電源ケーブルをはんだして、個体の識別ができるように番号を振りま

無線機は上の画像のように、測定しやすい形に加工しておきます。設定は5745MHzの25mWにあらかじめ設定を済ませておきます。

検査項目はスプリアス、帯域、周波数のズレ、出力のズレなどです。それなりにソフトウェアが整っているスペアナだとちょいちょいと画面を操作するだけで必要なデータを取ってくれます。機器利用の際にこんな検査がしたいのだけどできますか?と聞くのがいいでしょう。

これは生の状態なので、掃引(そういん)して波形をなんていうか固定するっていうかそういう操作をします

適合検査でどのような項目をテストすべきかはTELECが検査項目をまとめた書籍を出してくれています。1万円くらいする(その10が該当します)んですが、ネット上にも同じものが公開されていました。ただ、これが確実か自信がなかったので、結局書籍も購入しました。

無線機の検査という意味では巣鴨のJARDでもやれます。ただ、技適取るためにJARDの施設を使うのはなんかちがうかなーって思いました。なお、ここでも技適取得のサービスを提供しています。

技適を取る前に技術的な興味から、JARDを利用したことがありました。担当の方はとても親切で、どういった操作をしてどう測定して、どのVTXが個体として優れているのかを詳しく解説してくれました。

思えばここの体験が技適取得のきっかけになったのかもしれないですね。

JARDでは測定した画面をスクショにして持って帰ることができました。参考までに紹介します。

スプリアス。不要放射の測定。
一番のピークの他に2倍、3倍の周波数で不要放射があります。
帯域幅の測定

申し込み

申し込む無線機を選んだらいよいよ申し込みです。必要な書類は事前にTELECの担当者から送られてくるので、必要事項を埋めましょう。
記入済みの書類は課金エリアからダウンロードできるようにしてあります。

これに加えてアンテナの検査報告書、無線機のブロックダイアグラム(開局申請で使っているもので大丈夫)、無線モジュールの仕様書、無線機の3面写真(大きさがわかるように直定規と一緒に撮る)、部品の配置図、取説を用意します。
担当者のレビューをもらい、問題なさそうなら提出です。

提出した一式の書類は課金エリアからダウンロードしていただけます。

担当者によって異なるのですが、僕の担当はVTXにそれなりに詳しい方で「チャンネルや出力が後で変更できないよう、設定スイッチを使えないようにしてください」と指示がありました。設定スイッチを取り外す、無線機全体をカバーする、スイッチをグルーで固めるなどすればOKです。
あとは、検査用にDCを取りやすいようリード線を付けて、アンテナの変換コネクターを同梱して送ります。

合格すれば技適の証明書とステッカーが送られてきます。無線機に貼り付けて開局申請して、免許が下りれば使用可能になります。

ラベルは貼り付けた写真をTELECに報告する必要があります。貼付報告書の案内があるので、指示に従って写真を添付して返送します。

課金コンテンツについて

課金コンテンツは当社が技適を取得した際に、提出した書類を一式見られるようにしています。アンテナの試験結果はPDFをダウンロードしていただけますが、申込書などはそのまま利用・提出されるとトラブルになるため、必ずご自身の内容(申込者名とか)に書き換えてください。

アンテナの試験結果はTBSの純正アンテナのみダウンロードいただけます。FOXEER Lolipopが必要な方は別途お問い合わせください。

アンテナの試験結果報告書は当社の管理によるもので、報告書にも当社名が記載されています。従いまして、課金コンテンツを利用されていない方がこの報告書をもって技適の申請をすることを当社は意図していません
また、課金エリアの画像類は外部サイトへの転載、コンテンツ購入者以外への共有を固くお断りします。

技適の申請代行について

当社では技適の申請代行は行っておりませんが、この記事で紹介したVTXと全く同じもので技適を取得し、その無線機を販売することは可能です。詳しくはお問い合わせください。→ Shingo.Okamoto@hatte.co.jp

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