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IODATA LIVE ARISER GV-LSMIXER/I レビュー

アイオーデータさんからライブ配信向けスイッチャーのLIVE ARISER GV-LSMIXER/l(本稿では執筆の都合上、本機の名称をブランド名であるLIVE ARISERに統一して呼称しています)をお借りすることができたので、試用レビューをお届けします。

突然のレビュー記事で驚かれたかと思いますが、僕が入っているFacebook上のコミュニティ「ライブ配信部」内でのアイオーデータさんのレビュー企画があり、試用する機会をいただきました。

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僕がこの製品に興味を持ったのは、ライブ配信の機材をまるっとパッケージ化できるかもしれないと期待したところにあります。オペレーターが不慣れでも、スイッチャーとiPadがセットになっていれば、少なくとも起動までは難なくいくだろうというもくろみです。これに動作確認済みのカメラとケーブル類を箱に入れて、配信をしたいと思っている(けれどオペレーターを派遣するまでもない)現場にどーんと送るわけです。
そういった点からすると、ほかの方のレビューとは視点が異なっているかもしれません。

注意したいこと

LIVE ARISERには付属品として電源ケーブル、USBケーブルが2本ついています。電源ケーブルはパソコンなどに使われる3ピンのもの。これはPSEマークがついているものであれば別のものも使えると思うのですが、USBについては付属の専用品を使うようにとありました。ケーブルにはタグもつけられています。他製品への流用はやめた方が賢明です。また、専用品以外のUSBケーブルを使用するとiPadとの連携がうまくとれません。

変わった仕様としては、使用中、iPadの充電ができません。充電しながら使用したい場合は、別途アダプタなどを使って給電用と連携用に分ける必要があります。なお、この場合使うUSB-AとAのケーブルは同梱されています。

電源ケーブルをつなげると電源が入ります。スイッチがないのがちょっと驚きでしたがなれれば大丈夫でしょう。

外観について

筐体はスペックを見ていたので大きいとわかっていたのですが、実際手にしてみるとずっしりとした重さもあります。設計上、ファンレス構造になっていて放熱をするために筐体にアルミを採用していることや、内部に電源回路を持たせていることが原因と考えられます。

セットアップはiPadをスリットに乗せて専用USBケーブルで接続し、電源はACケーブルを差し込むだけ。これに有線LANとそれぞれの映像、音声の信号をつなげるだけです。ACアダプタは容量によっては非常に大きなものになりますし抜け止めの処理も考えるなら思い切ってACのみにしてしまうと言うのは策としては有効かと思います。

難点としてはやはり重量です。僕はこれを屋外でのライブ配信に使えないかなと考えていたのですが、特に機材を背負って長時間歩くような運用を考慮すると、2kgの重量はかなりキツいです。またAC直結はバッテリー運用時のエネルギー変換ロスが大きくなりがちで、いわゆる非常用のバッテリーが装備に加わることになります。このため、持ち運びがある程度考えられる現場ではちょっと厳しいなという印象です。

本体底面は金属製のヒートシンク仕様となっています。ファンレスなので動作音はなく、ヒートシンクで行っています。ハンドルはヒートシンク周りにスペースを空けて、効率を上げるのに寄与しています。

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ほかの方の長時間配信レビューによれば、長時間でも安定して動作したとのこと無駄に重いわけじゃないんです。

セットアップが簡単にできるという点は経験の浅いオペレーターを使うような現場でも非常に有利です。どれだけラベルなどで指示してもACアダプタの接続間違いは起きてしまいます。接続のお作法が少しでも減らせれば、セットアップの時間が限られるような現場でも役に立つはずです。

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僕は本体にiPadを載せることはせず、右隣に立てて置くスタイルにしました。理由としては、本体が結構高さのあるものなので、この上でiPadを操作しにくかったことや、画面の作り込みなどをやりつつ本体操作をしたかったからというのがあります。付属ケーブルはこのレイアウトでも十分な長さがありました。

ソフトウェアについて

LIVE ARISERの特徴として、作成したプロジェクトファイルを本体に保存することができる点があります。初期状態ではライブ配信やプレゼンなどに合わせたプロジェクトが保存されてあり、必要に応じて呼び出して利用することができます。

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とにかくライブ配信をやってみたいという方はデフォルトのプロジェクトを作り替えればそれなりにいい感じのものが作れると思います。

すごく気に入ったのはシーンの作り込みのところで、アルファチャンネルつきの素材が使えるところでした。手持ちのスイッチャではこれができなくてなんとももどかしい思いをしていたのですが、メインのスイッチングを手持ちスイッチャで行いつつ、そのPGM出力に対してLIVE ARISERでオーバーレイなどの設定を作り込めば、おお、これは、かなりいい線行きそうだと思いました。

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また、ちゃんとやろうとするとめんどくさい画像のポンだしをシーンに割り当ててしまうという手もあります。

しかし画像のアスペクト比が合っていないと、表示エリアを越えて拡大することができないため、レターボックスのように余白ができてしまいます。

すごくテクニカルではあるんですが、配信中に未使用のシーンを編集することができます。例えば画像ポンだしシーンが足りない場合、配信中に別の画像に差し替えて再使用するという方法が考えられます。長丁場の配信では休憩時間に表示するインフォメーションなどを結構な枚数用意して表示するなんてことも可能です。

操作感について

音声操作のスイッチについては戻りに引っかかりを感じることがありました。操作自体はしっかりできているのですが映像のボタンとちがって指を離したときにボタンが戻ってくる感覚がないので、あれ?引っかかってる?って印象を受けます。ボタン素材の違いか、筐体とのクリアランスがシビアなのかもしれないです。

映像の切り替えはフェーダーで、音声がダイヤルなのがちょっと不思議な感覚でした。フェーダーが使いたい場合はiPad側のフェーダーを使うか、別途ミキサーを使えばいいかと思います。

筐体の大きさに比べるとボタン類が少ないですが、iPad側でも操作ができるため、ライブでの画面作り込みをiPadでやりつつ、切り替えを本体で行うなんてこともできるかもしれません。

配信先は2つ設定できるようになっていました。実際の現場でもYouTubeと何かに2カ所同時に配信できないかと聞かれることがあります。外部ツールを経由させたり、なんとか工夫したりして対応しますが、LIVE ARISERがあればとりあえず事足ります。

ワークフローを考える

初心者さんやオペレーションに不慣れな方でもとりあえずのセットアップは可能なので、シーンの作り込みは追々やっていくとして導入するというのはアリかと思いました。会社や学校など、習熟にあまりリソースが割けない現場での需要を満たせるんじゃないかと思いますし、僕が考えていた配信パッケージ化にも採用できるのではと思っています。

映像配信をある程度やっている方でも、シーンの作り込みでアルファチャンネルが使えるメリットはあるかもしれません。またエンコーダー として利用するという手もあるかと思います。

送出はLANかUSBモデムを介して行えますから、HDMI出力は1つしかありませんが単体でも送出とモニターが可能です。会場のプロジェクタなどへPGMを送りたい場合は別途HDMIスプリッタを使った方がいいでしょう。

また、プレゼンテーションをそのまま会場プロジェクタへスルーアウトするということもできるようになっています。

欲しい装備

ターゲットが割とカジュアル層だと思うので、ガチの現場仕様を求めるのはちょっと違うかなと思いつつ、やはり電源はACとDCそれぞれに対応してほしいと思いました。端子で言えば音声入力もXLRが欲しいなと思ってしまいます。

もともと製品を知ったときは、結構高いし競合製品もあるしで厳しいのではと思ったのですが、実際使ってみるとほかの製品をしっかり研究して作られていることがわかりました。配信といえばとりあえずATEM mini買っとけみたいな感じになっていますが、あちらの製品は環境によってうまく動作しないことがあり、僕を含めて一部の人は敬遠しています。

また、ある程度なれてきて画面を作り込もうとすると、様々なツールを駆使しなければなりません。LIVE ARISERはそのあたりもパッケージ化されているので、ある程度予算が取れるのであれば導入する価値は大いにあります。

いい意味で裏切られた試用でした。

今回接続したカメラはBlackmagicdesign URSA Mini Pro 4.6K+SDI-HDMI コンバーター6Gでした。割と信号を選ぶタイプのスイッチャだと認識してくれなかったりするのですが、今回は問題ありませんでした。

終わってみれば超ベタ褒めなレビューでしたが、もともと自分が使ってみたい用途にマッチするかもと思って手にしているので、不満点があまり見当たらなかったと言えます。ガチ系の現場だとオールインワン型は使わない機能が多くなってしまって敬遠されるかもしれません。

弊社としても、今後導入予定のスイッチャの候補に入れますし、クライアントからの相談でも用途によっては本機をおすすめしようと思いました。


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