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今日からはじめるVRスチル撮影(準備編)

当社でVR撮影を業として受けることになった。ガチのVR動画撮影機材は導入コストが高く、なかなか参入することが難しい。スチルであれば手持ちのカメラと追加のレンズでなんとかなることが多いのでまずはこちらからはじめてみるといいだろう。

本連載では水平垂直方向ともに360°回せる360°x180°写真を便宜上、360°写真として記載している。

※本連載ではNodal Ninjaのアフィリエイトリンクを含んでおります。収益はすべてNodal Ninjaでしか使えない仕様にしており、新規機材の購入費に充てつつ、新しいレビュー記事執筆などに活用いたします。ご協力のほど、よろしくおねがいします。

当社で使っている機材

当社では普段撮影の仕事もやっているので、カメラを新たに購入することはなかった。レンズも手持ちの最短のものでとりあえず撮ることができたが、撮影工数を下げるために円周魚眼レンズを新規導入した。

カメラ:Nikon D5
レンズ:SIGMA 20/1.4 Art、Nikon AF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E ED
パノラマ雲台:Nodal Ninja 6
三脚はGITZOのマウンテニア#3、カメラストラップはPEAKDESIGN

VRスチルで得られる仕事

Google マイビジネスに連動したGoogle Street View(GSV)
建築やインテリア業界
不動産業界(VR内覧)
イベント関連
観光事業(風景撮影)
などが挙げられる。

機材のセレクト

機材は自分がやりたい分野に応じたものを導入することで、工数を削減したり、重量を削減したりできる。たとえば、GSV一本で攻めるというのなら、それ専用のパッケージが存在する。
ただ、このパッケージはコンパクトな反面、使えるレンズが固定されており、気合を入れた撮影をしたくなったときに不便だ。

GSVで使われるレンズは円周魚眼というもので、前後1ショットあればとりあえず作ることができる。拘る人は追加で上下1ショット撮る人もいる。ショット数が増えれば後の作業の工数が増えてしまうので、GSVなどでウォークスルーさせる場合など、数をこなす場合は1カットの撮影数を減らす工夫が必要なのだ。で、それができるのが専用パッケージだ。

不動産や建築系になってくると高解像度のものが求められる。レンズは魚眼でなくても構わない。焦点距離は20mm前後。当社では20mmを使っている。360°写真を撮るならこの辺が限界かなと思う。様々なレンズやカメラに対応させられるパノラマ雲台と呼ばれるものを導入する必要がある。もちろん。これでGSVの撮影もできるが、装備重量としては重くなる。

風景撮影で360°写真でないもの、横方向のみのパノラマ撮影をやるなら長めのレンズを使い、解像度を高めることができる。本連載ではこの撮影はテーマとして取り扱わない。

機材の購入

カメラは手持ちのもので構わないが、可能なら軽いものを選びたい。重いと三脚のバランスが崩れやすくなるのだ。当社はD5を使っているが、D5の機能は殆ど使わないのでもっと軽いボディでもいいかなと思っている。
ミラーレス一眼はレンズの選択肢がまだ少ないのが現状だ。

パノラマ雲台はいろいろなメーカーから出ているが、定番かつ安定して供給されているものにNodal Ninjaがある。Nodal Ninjaには機材の重量にあわせて3シリーズと6シリーズがあり、3シリーズはミラーレスなどの一眼、6シリーズはD5などの縦位置グリップがあるタイプの一眼までカバーする。
おそらく殆どの人はNN3で事足りるはずだ。

Nodal Ninjaはこちらのサイトで購入可能(英語)だ。
日本の代理店も存在するが、ちょっとお高い。サポートを期待するなら日本代理店で、自分で全部やっちゃえる感じの人は本国から買うといい。

パノラマ雲台で何をやるかというと、ノーダルポイントというレンズ内で光軸が収束するポイントを探し求め、そこを中心にカメラを回すのだ。Nodal Ninjaはこのノーダルポイントを探るのに様々な工夫がなされているのだ。

カメラ、レンズ、雲台が揃えばとりあえず撮れる。しかし楽したい。撮影を快適にする補助ツールを導入することを検討しよう。

ローテーター
これはカメラを設定した角度ごとにサッと回転させられるツールだ。レンズによって180°、90°、45°、36°と振る角度が決まってくる。解像度を高めるために多めに撮りたいなーってときもあるしこの角度を柔軟に設定することができるのが、ローテーターだ。買っといたほうがいい。バンドルされてるものがあるのでこれでいい。

ネイダー(ナディア)

360°写真で一番の悩みは三脚どうやって消すの問題だ。様々な方法があるが、一番楽なのは合成ソフトに消させることだ。我々は楽したい。金で解決できるならしておくべきだ。ネイダーは三脚に乗せたままカメラを外側に振ることができるツールだ。三脚を並行にサッと動かし、ネイダーでカメラを外側に振り、三脚が元あった場所の地面を撮影する。Nodal Pointはズレるが処理しやすい画像を用意することができる。
これもバンドルされているものがあるので、まとめてしまうといい。

レベリングツール
地面は水平とは限らない。雲台は回転するので、できるだけ水平に保つ必要がある。三脚の脚を調整して水平を出すことも可能だし、パノラマ雲台の下に自由雲台をセットして水平を出すことも可能だ。ただ、重くなる。レベリングツールは3つのネジを回すことで水平出しを簡単に行えるツールだ。床で使うならこれがあれば自由雲台はいらない。
ただ、屋外で使うなら自由雲台がいいと思う。地面も雨水を流すために若干の傾斜がついているし、山の中は水平な場所を探すほうが困難だ。

スティッチソフトウェア

これを忘れていた。そして、これがないと始まらない。とりあえずこれを買っとけというものが、PTGuiだ。まずはこれでいい。Macにも対応している。Standard版とPro版どっちを買うか悩むが、余裕があるならPro版の方が良い。特に三脚消したいとか20mmぐらいで360°写真撮りたい場合は、マスク機能がPro版にしかないため、必要になる。

PTGuiの購入はクレカが必要だが、クレカが使えない人のために当社で銀行振込による購入支援を行っている。手間賃程度の手数料で済むので、カードの壁で利用を諦めている方は文末のフォームから見積もり依頼をしてほしい。

実はAdobe Lightroomでパノラマ合成を行うことができる。ただ、いじることができるパラメーターが少なく、実務に向いているとは言えない。

これで機材は揃った。次はセットアップだ。360°写真は品質を無視すればスマホでも撮影できる。しかし我々は高水準の機材を揃え、高品質の写真を撮影しようとしている。次回はセットアップについて解説する。


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