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新装版 オーウェル評論集1~4(積読な日々004)

 積読と書いていながら、手放した本を扱います。オーウェルの経歴は長くなるので説明しません。Wikipediaを読もう。

 どうしても「1984年」と「動物農場」にスポットがあたるジョージ・オーウェルですが、戦中戦後に書かれた評論もかなりいいです。オーウェルの複雑な人生経験から得た見識が、ルポライター時代に育んだ明瞭な文章で発揮されています。
 オーウェルとヘミングウェイは外国人作家でも群を抜いて読みやすい作家です。原文は単語が古くて辞書が必須ですが文体は極めてシンプルで、翻訳版でもよどみなく読み進めることができます。
 
”オーウェルを読むならこれ! ライブラリー版評論集全4巻、待望の新装復刊。1巻目は〈経験〉をテーマに、「象を撃つ」「右であれ左であれ、わが祖国」など、自伝的エッセイを収録。”

 過去の評論集や著作集はもプレミアがついているのでお勧めしません。学生の頃に定価で買っても5500円くらいしました。
 2019年の光人社版が、評論の中でもいいとこどりになっていて、中古送料込みで800円くらいなのでお勧めです。

 なかでも「象を撃つ」が一番おすすめ。

背伸びしたいお年頃

 高校生の頃に読んだ「カタロニア賛歌」が初めて読んだオーウェル作品です。きっかけは世界史の授業。小学生の頃にキャパの写真展を見て以来、スペイン内戦に興味がありました。今でもスペイン内戦推しです。
 大学生の頃に評論集を全部買いましたが、自転車旅の途中に3巻を無くしましい、買い戻せそうにもないので全て手放しました。

”主義”から最も遠い地点で思考を巡らす

  オーウェルの生きた時代は”主義(イズム)”に満ちた時代で、彼自身はそれに最も振り回された境遇です。
 イギリスの帝国主義に産湯をつかり、社会主義に惹かれて筆や銃を持ったら、味方の共産主義と敵のファシズムに殴られて重傷を負い、結局は祖国の愛国主義に立ち返りながら、未来の全体主義に警鐘を鳴らす。
 主義に染まる恐ろしさを体験した身から、そこから離れた位置で恐怖の対象を見つめて筆をとる。
 冷戦が終結して30年以上たつ現代でも何かしら主義を掲げるアカデミズムを考えると、オーウェルの思考は極めて客観的であると同時に孤高であると感じます。

おすすめはこれ

 文章が短くても、濃ければ内容は濃くなる。それを分からせられます。

「象を撃つ」 ←平凡社評論集の一巻標題
「マラケシュ」←とりわけ短いが印象に残る
「右であれ左であれ私の国」←オーウェルが好きになる
「おいしい一杯の紅茶」←オーウェルでも英国人の業からは逃れられない

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