84歳で月間ほぼ200km歩く父に高性能スポーツシューズがハマった話
2019年お正月、実家で1940&44年生まれの元気な両親に高性能ランニングシューズをプレゼントした日記です。(2024年1月、父84歳&母79歳で、タイトルの年齢だけ更新)
(ただの日記なんですが) 結論めいたものを書いておくと:
未知なものへのチャレンジは人を元気にする
「高齢者むけウォーキング・シューズ」は「高齢者が実際にウォーキングするシューズ」として適切でもなく
むしろパフォーマンス用途のシューズが向く
なにかの参考になりましたら。
散歩
80超えた父は1日1万歩ノルマを課し、毎日記録し、足りないと後日増やしてクリアし続けている。伊能忠敬は日本地図制作にあたり歩幅67cm換算くらいで歩測していたそうで、この数字を使えば毎日6.7km。30日間で201km踏破だ。ちゃんと練習してる時の僕のRun距離より多い!
65歳以上対象の医学調査では、「1日あたりの平均歩数が8,000歩以上、うち中強度(速歩きなど)活動20分以上だと、様々な病気予防に効果的」という結果が出ている。8001歩から先が無駄というわけでもなく、個人差・環境差もあるし、自分が気持ちよく動けているならそれが最適解。
毎日1万歩あるくほぼ80歳をもう1人。2009年に胆のうと胆管、十二指腸、2014年に膵臓と脾臓をがんで摘出した安藤忠雄さん:
安藤さんは食事に1回40分かけることで、口内の唾液により消化を進め、内臓の能力低下をカバーする。さらに1万歩+ジム・トレーニングを続けることで、5つの内臓をなくす前より体調がよくなっている。最新医学でも説明がつかず、医者がびっくりしているそうだ。
「ウォーキング・シューズ」の真実
母もノルマはないがわりと歩く。両親とも以前は「ウォーキング・シューズ」と呼ばれる大手国産スポーツメーカー革製のを散歩に使っていた ↓
この商品カテゴリ、とくに日本の高齢層に人気な国内大手メーカーのものは、機能もデザインも、パフォーマンス低下させた設計をされている気がする。
なぜか?と考えると、「ダークスーツ用の革靴(とゴルフシューズ)だけ履いてきた高齢者が、革靴から移行しやすい」という心理的ハードル回避を重視して商品設計されたのではないだろうか? もしくは、「高齢者が好きそうなデザインを非高齢者が考えた」のか?
歩く、という動作は、常にどちらかの足が接地していて、一歩一歩の変化は乏しい。連続ジャンプであるランニングとの違いだ。これは一見、変化に乏しい単純動作なのだが、視点を変えれば、身体の重力変化を時間をかけて確実に感じることができる。
僕の経験でも、自転車とか始める前から「1歩の動作」の可能性にハマっていたのは、2014年10月ブログ『最新医学が健康効果を証明した「1日5分ラン」、その実体験を語ろう』でも書いた ↓
なんだけど、革靴の延長線に作られた「ウォーキングシューズ」では、歩くという動作に隠れたおもしろさを消してしまう。普通の暑底ジョギングシューズも同じく。単純な薄底では膝とか痛めるリスクも上がる。
そこで僕は、ウォーキングに真にフィットするシューズを贈ることにした。
中高年ウォーキング用途への僕のオススメは、軽くて反応性の高いランニングシューズだ。
ただし、ランニングに特化し過ぎているのはストライクゾーンが狭すぎる。歩行動作が不自然になってしまう。(とかいってNIKEヴェイパーフライとかを高下駄の如く履きこなし歩くのも楽しいかもしれない笑)
デザイン面では、若者専門みたいなブランドも厳しい。たとえばUNDER ARMOURを最近試した時、スパルタンで俊敏な機能性は斬新でおもしろいのだけど、アメリカの10代あたり想定のデザインは、さすがにちょっとないかなと。まあここは相手次第ではあり、85歳でも似合う人は似合うのだが:
結論として
が選定基準かなと僕は思っていた。
結局買ったもの
西尾のスポーツデポ店頭で親が選んだのが、Onのランニングシューズ。スポーツシューズ売り場で、Onの陳列コーナー前で「ここでどうか?」と聞くとデザインで気に入って、そこから絞ってゆく。
結果、父は雨でもイギリス人のごとく散歩に出るのでウォータプルーフのクラウドを。母は色で選んだクラウドフローを。いろいろ書いたけど、親の判断基準はシンプル。
後から調べると、どちらもやや軽快(表の右)、体重も歩行量も多い父がクッション重視のクラウド(下)、軽めの母がフロー(上)、と機能的にも合ってた模様。(直感で選んだら実は論理的という展開ちょっと嬉しい😁)
タイム別の表ではこういう選び方ができない。これはOnの人が言ってることが正しい。
追記: 20ヶ月後の2020年夏、父は600万歩をほぼ1足で走破したことになるのか。距離にして4000kmか。既に本州1周してる感じかな。四国一周するお遍路さんで合計距離1200kmだ。耐久性低いといわれるOnだけど、少なくとも歩くだけなら、本州1周分の耐久性はある。聞くと、
とのこと。ランニング用シューズならではの感想だと思う。
母は軽量かつ歩行距離が少なくてそこまではいってないが動きキレある:
普通、買う方は「ウォーキング目的」だと思ってお店に行って、無難な「ウォーキングシューズ」を選ぶことが多いように思われるた。だけど「ウォーキング目的のシューズ」と「ウォーキングシューズ」とはイコールではない。
ここ、高齢化の進む日本のスポーツショップ市場でミスマッチがわりとあるかもしれない。歩く=買う方にも、売る方にも。だとすれば、ちょっともったいないかも。
2020年8月追記:父は1足目(Onクラウドのウォータープルーフ)をほぼ履きつぶし、2足目に突入。
年齢補完要素:犬
散歩習慣は以前からだが、10年前からイッヌ登場、犬とは別に人間専用散歩タイムを設けている。たとえるならば散歩は個人競技、犬の散歩はテニスやバスケの1−1ディフェンスのような対戦競技。外形的動作は共通でも中身が違う。
犬は震災の年にひょんな流れで飼うことになり、10歳のもはや老犬キャバリア犬Uちゃん(写真)の存在は大きい。ちょうど父が70過ぎて仕事を引退したタイミングとも重なり、毎日の散歩ノルマは良い習慣的刺激になっている。
その波及的な運動効果は多様で、家の中に犬エリアと非犬エリアを分断する50cmの壁をトランプ大統領に先駆け設置したために、毎日何十回とハードル選手のごとく50cmハードルを超えることとなり、腸腰筋トレーニングになった。
また育て過ぎて小型犬なのに12kgまで大きくなったために、ちょっと持ち上げる時などウエイト(=犬の体重)トレーニングも行われている。そして毎日の犬の散歩。犬を飼う日常とはスポーツな日常なのである。
参考: 歩く動作は基本
トヨタのスマートタウン構想で話題の米ラスベガスのデジタル技術見本市CES2020、アシックスがスマートシューズを発表している。シューズにセンサーを埋め込んで歩き方を分析するんだと。
ランニングのデータ分析も流行してるけど、1ランナーとしての感覚だけでいえば、難易度が高すぎると思う。歩行動作のほうが分析に向いている気もする。大きな違いは時間軸。ランニングは一瞬の反射運動が重要で、意識ではコントロールできない領域で大部分が決している。でもウォーキングなら考えながら動くことができる。
だから50すぎに自己ベストサブスリーを達成した漫画家ランナーみやすのんきさんは『ランナーが知っておくべき歩き方』(2019)などで一貫して歩き方にこだわっているし
オンライン指導だけで月500万円超を売り上げる美容家森拓郎さんが『やせウォーク 4週間プログラム』(2020)で指導する歩き方も共通。元800mランナーらしい。
アシックス スポーツ工学研究所も『究極の歩き方』という新書を2019/9に出している。
キプチョゲのように走りたい人は超マニア層だけど、100歳まで元気に歩きたい日本人は多いはず。医療経済的にも将来性ある。ここで書いたお散歩用シューズの選び方は、そのために即効性があると思って書いてみた。ご参考になれば。
ついでにマイクロ書評:『84歳の母さんがぼくに教えてくれた大事なこと』 辻仁成
収入上がったり速くなったりする本では全然ないけど笑
辻仁成さんの両親のファミリーヒストリーであり、昭和の戦後の女性のライフキャリア。
NHKでやってる的なのを文章でここまでかっこよく書ききる辻仁成さんはすごい。
2−3歳の自分自身についての表現力からしてさすが売れっ子小説家は違うなあと感心する。僕は全然覚えてない笑。でもけっこう覚えてる人もいるみたいだ。にしてもそこまで表現するのはすごい。僕がなにげなく素通りしてきたものを、物語として読ませる。
Amazonで上位レビュアーが、「なんでこんなにカッコつけるのだろう」と辛口コメントしている。この反応をひきだすのが辻さんらしさ。良い意味でね。