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目標から逆算する - 一人トレーニング論3

早稲田大学は2020年度の開始を4/20以降と決定した。学生が五輪ボランティア参加できる日程を組んでいたのもリセットだ。部活動の自粛も2週で済む保証はない。いつ明けるかを心配するのは、自分ではコントロールできないこと。これを機に一人トレーニングのマインドセットを育てるほうが生産的だ。

前回、『2種類の目標設定 - 一人トレーニング論2』では、

現状からの改善=フォーキャスティング思考
目標からの逆算=バックキャスティング思考

と両対称なアプローチを紹介した。

教科書に書いてあるのは前者の現状改善型。今の走力(※ランニングの場合)に対して目標ペースを設定し、今のフォームを少しづつ改善してゆく。基本としてはまったく正しく、これで満足できる成果が出続けているのなら問題ない。

後者の目標逆算アプローチは、教科書には書いてないけど、ハマれば非連続的なジャンプアップが起きるかもしれない。なのに教科書にあんまり書いてないので、今回ここをもう少し説明してみよう。

最初に断っておくが、教科書に書いてないのは、再現性が低くて書きようがないから。それを僕が書けるのは、自分が体験したという標本数=1の世界においてのみ書くからだ。そんなもん使えるか!という方、それが常識的な反応だと思います、ここでお戻りくださいな。

目標設定

前回書いた通り、僕は目標逆算アプローチでトライアスロンを始めた。1500m走4分50秒台の僕が(※高校陸上部としてはかなり遅いタイムです笑)、同世代の箱根ランナーとか5000m13分台実業団ランナーとか対等に勝負できてしまい(=スイム・バイクのリードで勝てる)、「ランが強い八田さん」などという誤解まで発生してしまった。バイクも初レース最下位近くでのギリギリ完走レベルから、練習量は落としながら、急成長できた。

この手法の核心は、前回も書いた通り:

目標設定=最初の情報分析=理想の状態とはなにか

その解像度を高めてゆくことだ。

たとえばキプチョゲのように走りたいのなら、1km2:50を楽に走るとはどのような身体状況なのか?と発想する。僕だと1km3分10秒以上かかるので1kmは無理。100m17秒ならなんとか走れる。このように実行可能なところまで細分化する(=目標逆算)。次に、より楽に走れるようにしてゆく(=ここは現状改善的)。

僕がトライアスロン初期、ランで設定したのは1km4分ペース。湘南・片瀬海岸の推定1.8kmの主練習場(混雑する夏の日中を除く=夜は意外と走れる)、では7分12秒。そのタイムを目標に走って、最速3:50ペースくらいまで上げられた記憶がある。すげー!速え!と嬉しかった記憶もある。そして翌日は筋肉痛に苦しむ。

基準

大事なのはこの後だ。そのペースのまま、力を抜いてゆくのだ。そして本数を増やしてゆく。最初、1本しか走れなかったものが、3−4本くらい走れるようになっていった。脱力できるから本数を増やせる、という考えだ。

改めて確認しておくと、この練習の目的は、「表彰台の走りのシミュレーション」だ。だから「1km4分ペースを楽に走れるか」が基準になる。そのために「動作の効率」を高めてゆく。

よくある練習では、「全力で1km4分を走れるようになったから、次は全力1km3分50秒、2km8分」と記録向上を目指すだろう。体力は向上するので、実現はできるだろう。しかし「動作の質」を上げにいっているわけではない。体力と動作の質を同時に上げられるのなら構わない。そうではないと、体力の範囲内でしか成長しずらくなる。

現実には、「動作の質を高めるつもりの練習」でも、体力も同時に上がるので、結果として楽に走れるようにはなるだろう。ただポイントはそこではなくて、意識をどこにおくか? 最大目標はなにか?ということだ。

目的と結果

成長の2要因:

A) 練習の目的として高めにいくもの
B) 練習の結果として高まったもの

この2つは、明確に区別するべきだ。

特に昨今は電子デバイスが向上して、B的な結果指標を豊富に取れるようになり、その数値を分析してくれるネットサービスも充実している。数字を追う楽しみは増え、SNSブログなど見ていてもその報告は多い。しかし、ランニングの上下動のような動作系データにしても、結局はアナログ領域な意識と動作の結果だ。それはいつまでも「結果世界」だけの成長。

そこに頼る限界とは、成長の過程がブラックボックスになってしまうこと。そして体力まかせの成長に陥りがち。

練習の目的意識を明確化し、そこに徹底集中することで、成長の過程を理解できるようになる。それは動作意識とか、身体センサーとかの高度化であり、つまりは競技性能の向上だ。さらに体力の向上という結果も得られる。そこにジャンプアップへの可能性が発生する。

そのための手段として、「目標からの逆算=バックキャスティング思考」を活用するのだ。

僕はこうして「表彰台レベルの動作の質」に集中していた。これを3種目積み重ねると、結果として、まあまあな練習ボリュームになったようで、レース本番で持久力不足を感じることはなかった。

・・・

以上あくまでも僕の経験論。教科書は別に読んでくださいね。ただ、いくら教科書を理解しても、その先には「教科書的知識の限界」は現れるだろう。あなたが天才でない限りは。そんな時のヒントに少しでもなれば僕は嬉しい。

次回、一人練習のモチベーションなどについて書いていきたい。「表彰台の走りのシミュレーション練習」のメンタル面での効果についてだ。これは僕にはかなり効いたし、一人トレーニングでのモチベーションの核心でもあると思う。

前回noteも併せてどうぞ ↓ ↓

「ベストな教科書」というものは存在しないけど、この1冊だけでも応用性は高くて、自転車や水泳にも役立つと思う。「自分なりの教科書」になれば、それはベストな教科書になるだろう。


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