"現代のゴルフ"としてのトライアスロン
「トライアスロン=現代版のちょっと仕上がったおじさんによるゴルフ」というツイートがいいね2000超+リツイート1000超。マイナーなトライアスロンを素材にこれだけ盛り上がるのは珍しい。
イジられてるのは「現代版のちょっと仕上がったおじさんによるSNS内アピール」であって、トライアスロンやゴルフそのものでもなく、つまりは、ある行動に透けて見える本音(=のように映るもの)が対象。ふだんエラそうに見える人たちを見返せてるような感情も込みで、ウケているんだろう。
ではグローバルな現実はどうかというと、「ちょっと仕上がったおじさん」は、SNSアピール抜きでも、やっぱりゴルフではなくトライアスロン的なことをする。世界の先進国に共通にね。将来仕上がりたい若者も知っておいて損はないと思うので、オジサンらしく解説するとしよう。
“Cycling is the new Golf”
この数年、economistやnytimesなど欧米の主要経済メディアで、“Cycling is the new Golf”〜自転車は新しいゴルフ、的なフレーズを目にする。ビジネスエリート共通の趣味は、社交なり接待として使われるもので、20世紀その座はゴルフだった(と酒と、あと…)。
最近、よりカロリー消費の大きなスポーツに替わる流れがある。たとえばNHK2019年5月、ロサンゼルス支社から飯田香織さんレポート:
業績好調のアドビ社は、1万7000千が世界から集まるイベントで、サイクリング・ヨガ・ハイキングなどイベントを用意している。"Cycling is new corporate golf " という表現がTwitterアカウントにも書いてあった。
こんな場面で活躍しそうなのが電動アシストのロードバイク。最近、大手ロードバイク社が続々投入し、しかも早いペースで改善している。ロードバイクで体力を使うのは、まず初動のゼロ発進、そして坂道だけど、これら全て強力アシストしてくれるから、初心者でもベテランと一緒に長距離を走れる。この点は日本製でも海外版でも同じだ。
スエットワーキング、という言葉も紹介されている。検索してみると、講談社系の2015年12月記事にもあった。"ニューヨークで大流行の「ジムで人脈をつくる働き方」〜ジムやヨガで汗を流した後、スムージーを飲みながらビジネスを語り合う" のだそうですよ。
瀬戸内3人の超ハイスペ知事
日本では? たとえば2018年10月「サイクリングしまなみ」での1枚
道端カレンさん(トライアスロン年代別日本ランキング2位と3位を取っている芸能界最速アスリートです)を囲む3人のオジサンは左から、
愛媛県 中村時広知事(当時58歳): 父は愛媛の大物政治家、慶応幼稚舎→三菱商事→39歳で松山市長→50歳で知事。「しまなみ海道」ブームに大きな役割
広島県 湯崎英彦知事(同53): 父は広島大教授、東大法→通産省→スタンフォードMBA→IT企業アッカ・ネットワークを35歳で創業&40歳で上場(&お金持ちに)→44歳で知事
岡山県 伊原木隆太知事(同52): 地元の名門百貨店天満屋の創業家出身、東大工→モニター(マッキンゼー級の世界的ハイスペコンサル会社です)→スタンフォードMBA(湯崎知事と同級生)→32歳で天満屋社長→46歳で知事
と瀬戸内の知事たちは、揃いも揃って超級エリートの50代ばかりだ。スリムな身体で100kmくらい軽く自転車で走る。ここまでスリーカードに揃うのは凄い。でも世界的には、よくある光景なんだろう。
キャロライン・ケネディ前駐日米大使も、このしまなみのイベントを走っている。翌年、2019年9月ツール・ド・東北では、臨時代理大使と首席公使代理というお偉方も参加。
ロードバイクとトライアスロンの差
こうして、高額ロードバイクは世界的に普及して、シマノ社の株価もこの10年ほどで凄まじく高騰しているわけだ。
走るという動作はみんな(練習さえすれば)できるわけで、あとは水泳を習得して、大会に申し込めば、トライアスロンはできる。簡単なことだよね?笑
こうしてトライアスロン会場に行った先にあるものとは、「ハロウィン+リアルお化け屋敷+レールのないジェットコースター」だと思っている。2年前に出した拙書ではこんなことを書いた。
高価なレースバイクが並ぶ選手限定のトランジットエリア、ウェットスーツという特殊装備に身を包み、たたかいの場としての海に向き合うスイムスタート、自分以外に頼るもののない海中、交通封鎖されスピードに集中できるバイクコース。そこでは、特殊な閉鎖空間がロールプレイングゲームの如く次々と登場し、日常から遠く離れた異世界へと入り込ませてゆく仕掛けが幾重にも続く。ウェットスーツや高額なバイクなどの特殊装備は、喩えるならば、近年盛り上がりを見せる十月末の「ハロウィン」の仮装にリアルお化け屋敷とレールのないジェットコースターまで伴った、安全制御の不十分な遊園地のようなものだ。 (p20)
今読み返すと、堅い文章だなあと笑。
冒頭ツイートでは、このうち「ハロウィン」的な見せる要素についてイジってるわけだけど、トライアスロンで本当におもしろいのは、お化け屋敷的な高心拍ジェットコースター。参加型スポーツだからね。まあ茶化したい方は、スマホの画面からお好きなだけどうぞ!笑笑
"現代のゴルフ"の次は?
冒頭ツイートに反応した人たちについて考えてみる。まず、「3−40代の経営者トライアスリート」という存在は極めて少ない。イメージ通りなのは肌感的にせいぜい200人くらいかな? だからツイートに反応した数千にとって、まんまな人が身近にいるわけでもなく、「ネットで見かけるよくあるイメージ」を想像してのことと思われる。
絶対数のわりに存在感あるのも事実で、たとえば堀江貴文さん一人だけでも「トライアスロンしてる40代経営者」感の浸透力はすさまじく、イメージしやすいんだろう。プロ野球選手だって国内正規枠は70×12=840人だけなのに、みんなイメージできるわけで。
そんなレアモンスターさんたちが、
「ゴルフばっかりやってる上の世代(の経営者)とは違うみたいな空気でトライアスロンの写真をアップしてる」
とオレカッコイーアピールしてる(ように映る)=「下の世代にカッコよく見せているつもりで、エラそうにしか見えてないぞ」という上から目線感を、イジっているわけだ。
では、その下世代の若者たちは、自分がその立場になった時に、どうするのかな? と考えてみる。何か別のものがとって替わるのかな??
女性のヨガは人気だけど、20代なら機能しても、30代から筋肉が痩せていくと違ってくると思う。それで筋トレを追加するのは良いことだし、実際男女とわず流行っている。でもそれだけでは大会特有のお祭り感がない。筋トレ写真をインスタに上げて映えるのは基本は若いうち(ボディメイクを極めてるなら別)。モテるのがお祭り、という20代は確実にいそうだけど、40代で続けないでしょう笑。といって、これで35過ぎても十分ハッピーならばそれでよく、ただ現実そんな人ばかりでもなくて、世界はこうなっている。
・・・
もう1つ、このツイートみて思ったのは、「日本人、周りからどう見られてるかって話題が好きだよね?」ということ。それを当然と思っている人がとても多いからこそ、「キミ、周りから笑われてるよ?」的な表現がネタ的に成立してしまう。とくにツイッターではウケやすい。匿名が多いのになんで気にするのかな?笑笑 それでシアワセならいいんだけど笑笑
トップの写真は、「ちょっと仕上がったおじさん」が成功のトロフィーとして手に入れた光景。でもそのうちに飽きてきて、その地べたに降り立って、ハアハアと走り始めることになる光景。
そして上の世代とは違うみたいな空気で・・・
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