Debussy Reflets dans l'eau

ドビュッシーの音遣いなんて、さんざん聞いているし、耳にもなじんで、どうということはないような気はする。気はするが、一応調べておこうと思った。題材は人口に膾炙したところで亜麻色の髪の乙女くらい行こうかとおもったが、ちょっと軟弱すぎると思ったので「水の反映」にしてみた。興味は和音の色彩と連結の仕方にある。形式とか、まぁあんまり興味はない。

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①冒頭は変ニ長調、特に臨時記号もないのだが、(移動ド)ドソレという動きに伴う和声が、Gb>Fm>Ebm7となっていて、これはIV-iii-ii7という動きで特徴的かつ魅力的である。特にIV-iiiというのがドビュッシーの発明であろう。

 ② これはジャズがさんざんお世話になることになる、属七和音の連続半音上行である。ありていにいって、これをやっておけば、上に何が乗ってきてもたいていうまくいく(<ほんまでっか

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③13小節目。不思議な4度和音。④減七和音と属七和音が交替し、かつ二重の倚音が付されている。譜面は複雑だが響きは美しい。

⑤左手オクターブ、右手5度とオクターブで外側から中心に向かうモチーフ。

⑥f as ces es as f des という不思議なフレーズ。無理に言えばD♭7(9)だが、F 上のロクリアンっぽい。このモチーフはあとで形を変えて出てくる。

⑦に小節にわたってハーフディミニッシュ(Dm7♭5)が短三度ずつ上がっていくアルペジオ。

⑧f as b ces es から始まって下がf fes es d 上が es fes f ges と半音ずつ広がっていくアルペジオ。

25小節目からは全音音階全開である。

⑨の部分は、ブロックコードの半音平行移動の形。31小節目の後半は、バスのb a as g に従って、b e g という和音が半音ずつすべり降りてくる。

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 ⑩のところ(36小節目)はアルペジオになっているが、冒頭の音型の再現である。Gb Fm Ebm7(Gb抜き)が連続して冒頭部分を回想させる。

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⑪44小節目からはバスに全音音階の旋律が現れて上行し高揚する。49小節目に至って調号が全部はずれるが、同じ全音音階が続く。C# aug/Bの形になっている。

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50小節目から、C#aug/B, B7(9), D7/A, G#7(-9)と属七和音系の和音を連ねて(バスは B A G# と順次下行)ついに、⑫57小節目において、劇的な4度下行(5度上行)により、E♭上の長三和音に達する。

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 そのあとは、属七和音のヴァリエーションに全音音階を加えた進行が続き、⑬66小節目に至って調号はシャープ三つになる。ここでのF#m - Dm という連結は独特の風合いをもっている。

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⑭では、安定したAの長三和音の上に四六の和音の形で、C#m B A が平行移動するという形になっている。これも特徴的でかつ効果的である。全体としてはAのリディアンを感じさせる。

⑮に至るところはA Cm という連結でこれも耳をそばだたせる。

⑯はEbm/Ab というポップスではおなじみのドミナントの形に、同じく四六の和音が平行移動する(B♭m7, A♭, G♭)。

⑰はテーマの再現である。少々和声は変わっているが移動ドで ドソレ・レラミというテーマは同じである。

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⑱の左手から右手に受け渡される音型は、なんとなく耳なじみのあるもので、⑥の音型とか、60-61小節目の音型とかを想起させる。

⑲の低音部はB♭♭とD♭の2オクターブ重ねであるが、旋律は変ニ長調であり、Aの上にDes durが乗っているような、複調的なイメージがある。

曲はG♭、E♭、を経由して、D♭・A♭の空虚5度の上に静かに終止する。

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