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忘れたい夏の思い出

中学生のとき、夏場の体育は選択式だった。
水泳かマラソンの二択である。

その二択であってる? と思うよね。
私は思ったよ。
夏と冬の象徴みたいな二択。
考えることを放棄したような選択肢投げ付けられた感。
もっと他に解決策はなかったのだろうかと。

圧倒的に水泳派が多かった。
もちろんそうだよね。
だって暑いもん。
寒いときに走るより、暑いときに走る方がしんどいよ。
太陽の光と、それを反射した校庭からの熱気で蒸し焼きにされるよ。

でも当時の私、マラソンを選びました。

だって水着を着たくなかったから。
泳げもしないし、体育見学すると必然的に生理周期を知られるシステムも嫌だった。
マラソンだったらまあしんどいけど参加は出来るもんね。
究極の二択だったよ。
「そもそもどっちもやりたくない」が心の底からの本音でした。

マラソンの方、ほとんど男子はいませんでしたよ。
女子もほとんど陸上部か運動部で、「走ることに四季など問わぬ」という猛者ばっかり。
運動音痴の私、明らかに場違いで浮いていた。

いや、そもそも体育で私に居場所があったことなんてない。
運動は全部苦手だから。
だからまあ、通常通りだったともいえる。

マラソンという授業の名の通り、始まりから終わりまでただ走る授業なんです。
校庭の中のトラックをぐるぐるぐるぐると。
ひたすらに走る。
何周したかを自分で数えるだけ。

だけどやっぱり明らかに手を抜いていれば教師から「頑張れー」とか「もっとペース上げろー」とか言われるわけですよ。
熱中症がさほど問題視されていなかった時代。
夏でもガンガン走らされていました。

校庭の奥にプールがあったから、プールから「キャッキャうふふ」が聞こえてくるなか、私たちは灼熱の校庭をただ走る。
……地獄ってこんな感じなんかなって思いながら、脇腹抱えて走ってたよ。
汗だらだら流して、恐らく自分の顔は鬼になってたよ。
真っ赤な顔した赤鬼さん。
思春期女子の目指す方向性とは逆方向に大暴走していたよ。

面倒見の良い陸上部女子が「羽鳥意外と早いじゃん」とか、「一緒に頑張ろう」とか言ってくれたけどさ。
そのキラキラ感、すごい眩しかったよ。
「私、頑張りたくないです」とは言えなかったよ。
気にしてくれるもんだから手も抜けなくて、何で走ってるか分からず夏を終えたよ。
キラキラした女子の傍にいても、キラキラは伝染しません。
ひと夏頑張っても、同化することは出来ませんでした。

結局私は最後までマラソンが嫌で、頑張って走ったからといって何かを得たわけでもなく、しかも今でもときどき思い出すという最悪のコンボ。

思春期の思い出が全部美しいってわけじゃないよねという話。
さっさと忘れたい夏の思い出。
今年も思い出したので書きました。
早く成仏してくれますように。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。

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