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「おまえのサッカー旅記事が一番つまらない」と言われた時のYes&No【Short Letter】


大評判の『〝サッカー旅〟を食べ尽くせ! すたすたぐるぐる 埼玉編』は、生まれたての西葛西出版の運命を切り開いてくれそうではあるものの……。

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今日はピンチヒッターで急遽記事を書いているのでショートレターで、かつ無料公開とさせていただく。
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皆さんご存じの漫画家、能田達規先生からもお褒めの言葉をいただきました。びっくりしました……。

関連あるジャンルの書籍はいち早くチェックする研究熱心なところが、先生の作品のリアリティを作っているのだなと改めて実感した次第です。

ぼくの書いた後書きでも、能田先生の作品『サッカーの憂鬱』(実業之日本社)について少し触れさせていただいております。


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さて先日、高円寺のスポーツ居酒屋Kiten!で飲み会を開催した。とても懐かしい感覚だ。店主のふくやんにはデビュー作『サポーターをめぐる冒険』の出版記念講演に出演してもらって以来の付き合いだ。

ちなみに、Kitenが立川にあるころ、ふてくされてKitenの床で寝ているときに出会ったのが、池袋のスポーツ居酒屋バッカスの店主であった。

さておき、ふくやんも「すたすたぐるぐる」のクラファンに参加してくれて、早速本を入手していたのだが……。

ぼくらが訪れた前日に新潟サポの一団が訪れていて、そのうちの某メロコア男が「面白い本だけど、慎太郎の原稿だけつまらない」と言い残して帰ったらしい。

そう言われると、やっぱり何というか……。

一言でいうと、とても腹が立つ。

その男は芸能レポーターのような性格をしていて、人の収入について遠慮なくズケズケと聞いてくるなどという嫌な面がある。だから、彼らしい感想といえばそうかもしれない。が、「可愛くない」と言われて喜ぶアイドルがいないのと同様に、「つまらない」と言われて喜ぶ物書きもいない。

が、その見立てが正しいのも事実なのである。

というのも、ぼくが書いた記事「大宮」「浦和」「川越」は奇をてらった記事でなく、ホームスタジアムとホームタウンに対する王道の観戦記である。

つまり「現在形」を描いているのがぼくの記事だ。逆に評価が高い大宮けんのエッセイや、ほりけんの浦和ACLなどは、過去から現在までの幅を持っている「現在完了形」の記事である。

と言われても……。英語文法の話なのでよくわからないかもしれない。

現在形は現在の1点。

過去形は過去の1点。

そして、現在完了形は過去のある時点から現在までの「時間の幅」をもった表現だ。

旅記事というものは基本的には現在形(もしくは過去形)なわけで、厚みを出すのは難しい。その逆も真なり、ということで、現在完了形は強いのである。

ということで、答えは見えてくる。現在完了形の記事は強い。すたすたぐるぐるシリーズには、顔役として「完了形」の記事を作るべきだということ。

記事の性質として、過去、現在、現在完了が想定できるが、この3者のバランスを取っていくこと。過去と現在完了だけだと、それはそれで躍動感が出ない。うまく組み合わせていく必要がある。

そして、大宮と浦和については、最大限に努力して書いたのだが、やはり観光地ではないので執筆難易度は高かった。特に浦和の街レポートは、今まで書いたどの原稿よりも難しかった。ぼく以外に浦和旅をあのボリュームで書ける物書きはなかなかいないんじゃないかと思う。

大宮も浦和も本当に難しかった。けど、「サッカー観戦&すたぐる&食い倒れ」という王道中の王道をぼくが書いたことで、他の人が自由に書けるというのも間違いなくある。本当はこの王道枠は、大澤あすかなどの実力ある書き手がやってくれるといいのだが、性格がトリッキーすぎて全然コントロールできぬ……。

いや、今度はどっかで捕まえて書かせよう。誰か弱みを握っている方がいたら通報されたし。

info@nishikasaibooks.jp

さて、つまらんと言われると腹が立つのだが、そこから学びもあった。現在形の記事の書き方ももう少しやりようがある。過去にポイントを作れなかったら未来へ伸ばすという手もある(そう考えると大宮けんの文章は、過去から現在、そして未来へと時の幅を持たせていたので、確かによくできている)。

ぼくはまだ未熟な書き手だが、こうやって学べることはありがたい。物書きをやっていると腹が立つことを言われることもあるのだが、そこをうまく処理してより高次のものを作れるようにしないといけない。

あともう一つ、これは胸を張りたいこと。

『〝サッカー旅〟を食べ尽くせ! すたすたぐるぐる 埼玉編』において有名な書き手は宇都宮徹壱さんと中村慎太郎しかいない。しかし、そんなことを感じさせないくらいみんな活き活きと書いている。ぼくの記事と宇都宮さんのところだけ読んでおしまい、みたいな読まれ方は決してしないはずだ。

そうならないように全体を組み上げたのもあるし、OWL magazineというプロジェクトで書き手が育ってきていることの証明でもある。

「すたすたぐるぐる」の理想型はぼくが書かなくてもいいくらいみんなが成長していること。

中村慎太郎の記事がなくても、宇都宮さんの記事がなくても、OWL magazineのみんなが書いた本なら欲しいと思ってもらえること。

ぼくはOWL magazineのみんなにはそれだけの力があると思っている。だって、俺たちもう1冊本を作れたんだぜ?!

あ、理想型とはいったが、ぼくももちろん記事を書く。だって、ぼくは物書きだから。

というわけで今日はこのへんで!

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