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タクシーをやろうとしている人は必読?! 書評『私がタクシードライバーを3ヶ月で辞めた5つの理由』


ぼちぼち本格的にタクシー本の執筆を始めないといけないと思い、Kindleの電子書籍で類書を見かけたので読んでみた。355円で買ったのだが、10分くらいで読める内容となっている。

そういう意味では割高なのだが、これからタクドラをやってみようと思う方にとっては貴重な情報源なので買う価値はあるだろう。

一方で、8ヶ月続けているぼくには不要な内容なのだが、3ヶ月で辞める人がどこに引っかかったのかには興味があった。ボリューム的にはかなり不満は残るが、Kindleのダイレクトパブリッシングというのはこういうものも含まれるのがいいところとも言える。

これからやろうとしている人、乗務を始めたばかりの人にはお勧めだ。


さて、ここで紹介されている5つの理由について、ぼくはどうやってクリアしたのかを簡単に記す。

著者が乗務していたのは2018年なので、ぼくが乗務を始めたコロナ禍の2020年よりずっと難易度が低い状況であったはずだ。それでも向かない人には向かない仕事なのだろう。


辞めた理由1:接客業としてハイレベルすぎ

これ、最初はぼくも思っていた。しかし、実はタクシードライバーは接客業としてはあまり高度ではないのだ。もちろん著者が言うように、お客様の数だけ事情があり、要望も異なり、目的地も違う。

しかし、逆に言うと、その3点だけ把握しておけばトラブルにはならない。後は会話がしたいかどうかなどもありますが、話したい方は話しかけてくれるのであんまり気にしないで大丈夫。

まずは、急いでいるのか、出勤なのか、帰宅なのか、酔っ払いなのか、体調不良なのかなど事情を理解する。わからなかったら聞いてしまう。

「お急ぎですか?」

そこで急いでいると言われた場合には、「なるだけ、急ぎます」と短く言って、加速度を上げる。「最高速度」ではなく、「加速度」。急いでいるという事情があるお客様に対しては、こちらも急げばいい。単純な話だ。

お客様が急いでいるかどうかが把握出来ないと難易度はあがっていくのだが、急いでいる方は見ればすぐわかるようになる。もし調子が悪そうだったら、その旨を聞いた上で「なるだけガタガタしないように走りますね。もし気持ち悪かったらいつでもお声がけくださいね」などと言っておく。

後は目的地と要望で、これはルート選択をする際にとても重要だ。タクシードライバーの最大の仕事は「道を選ぶ」ことであり、その上で安全かつ迅速、快適にお送りすることとなる。このへんには慣れが必要で、東京生まれのぼくでも最初はかなり苦労した。ただ、1000件以上もこなしているとかなり慣れてくるものだ。

接客が大変なので、安いお客様にはあまりサービスしたくなくなるということを著者は書いていたが、そこは職業倫理としてまったく違う。短い距離だけどいい?と言って乗ってきてくれたお客様こそ大切にし、短い時間でも満足感をおぼえてもらえるようにするべきだ。そして、またタクシーに乗ろうと思ってもらえれば、タクシー業界全体のリピーターになる。

ただ確かに、そのへんが苦になってしまうようだと向いていない。一定以上の社交性が求められる仕事なのは間違いない。ただ、接客の型が決まっているので、難易度が高いかというとそこまでではないと思う。


辞めた理由2:泥酔のお客様が本当に面倒くさい

酔っ払いは大好きだし、得意。殴られて警察いったこともあったけど、殴られたくらいでは全然平気。東大卒といえど、地獄の江戸川区公立小中育ちなので、バイオレンスには慣れている。

本当に強い人は殴りかかってくることはないので、目撃者がいる状況か、カメラに写っている状況かを確認しておけばまったく怖くない。このへんは自分も運動をしてきたので、いざとなったら負けないとか、逃げ切れるとかいう自信があるのだろう。このへんの肝も、ブラジルを一人で旅をしてからだいぶ座ったと思う。

小学校中学校では、しょっちゅう血みどろの喧嘩があったし、先生にもボコボコにぶん殴られたのだが、その経験がこんなところで生きるとは思わなかった。

実際の所、少年院行ってましたなどのヤンキー系の人は相性がいい仕事かもしれない。


辞めた理由3:道路交通法違反を要求される


お客様に曲がれないところを曲がれと言われたらどうするか?

ぼくはちょっと低めの声で音圧あげて「すーみません!ここはちょっと曲がれないんですよ。迂回できるルートありませんか?」と聞きます。それでも曲がれと言われたら、曲がれないと答え続けるのみ。

赤信号を行けと言われても行かないのと同様に、無理なものは無理なのだ。

一方で交差点内で停車しなければいけないことなどは日常茶飯事で、これは厳密に言うと道路交通法違反となる。

が、交差点内での停車で捕まるのは、六本木交差点や、せいぜい大通りくらいのもので、大抵は問題ない。

法律で決まっているということと、現実にどう運用されるかには差がある。例えば2車線の右側をずっと走るのは違反である。何故なら走行車線は左で、右は追い越しのときしか使えないためだ。右車線で追い越した後は、すみやかに左に戻る必要がある。

ただ、右を走っていて捕まることはない。知人が、横浜横須賀道路で神奈川県警に捕まったことはあるのだが、それはレアケースだと言える。

実際に、道路交通法がどうやって運用をされているかを知っていくのも、公道を職場とするタクシードライバーに求められることだ。駄目なもんは駄目。交差点内で手が上がって無理だと思ったら、手で先を示しつつ、そこまで行って止まるなり、手前で止まるなりすればいい。


辞めた理由4:世間からものすごく見下されている


正直ぼくは感じたことがない。多分ぼくは自分と自分の仕事に誇りを持っているからだろう。仮に「タクシードライバーごときが」と言われたところで、他の仕事も同じように扱われることを知っている。

「官僚がー、政治家がー」

「電通がー」

「新聞記者が−」

「NTTがー」

大事なのは自分と自分の仕事にプライドを持つこと。プライドがあれば、人に何かを言われても気にならなくなる。

ぼくは人から嫌われることをまったく気にしない。もちろん、それが気になっていたこともあった。いや、今でもまったくというと嘘になるかもしれない。そこそこのダメージはあると言うべきだろう。

しかし、他人に嫌われないように生きるのは建設的ではない。何故なら、他人というのは色んなタイプの人がいて、こんなぼくが嫌いという人もいれば、こんなぼくだから好きという人もいるのだ。

人から嫌われるようなことは直すべきなので、鼻毛は切るし、臭くないようにするし、約束した時間はなるだけ守る。ただ、「性質」のところを直せと言われても、そこは直すかどうかは要検討だ。

直すべきじゃないと思った場合には、付き合いをきるべきだ。その人に好かれていたところで、人生には何らプラスがないかもしれないからだ。このへんは『嫌われる勇気』で語られているアドラー心理学の受け売りなのだが、これは革命的に良かった。


人から好かれようという考えを持った時点で負けなのだ。特にぼくのような物書きは知らない人からボロカスに言われることもある。そこで傷ついていたら筆を折るしかないし、実際にそういう理由でやめていく人も多い。

けど、大事に読んでくれている人もいるのだ。

(読んだらシェアしてくれたり、いいねしてくれると本当に嬉しいんだぜ!!)


本論に戻るが、著者が見下されていると感じたのは、まだタクシードライバーとして未熟だったからかもしれない。正確にルートを把握して、お客様の要望をしっかりと捉えれば、職人としての敬意すら感じることがある。

あるときは「とにかく急いで!!」と女性のお客様に言われて、本当に急いだのだが、降りるときには「運転手さん……、本当にすごいですね……」と感謝されてしまった。いやー、ちょっとやりすぎた。

映画論を熱く語ったり、サッカーの話をしたり、人生論を戦わせたり、あるいは漫画の話をしたりと、慣れてくると非常に楽しい仕事なのである。

辞めた理由5:「明け休み」は「普通の休日」ではない


タクシードライバーは前後あわせて22時間程度連続で勤務し、そのあと約26時間程度の休みがある。タクシーに乗っているのが出番で、乗っていないのが明番だ。

確かに明番は身体を休めないといけないので休日ではないのだが、慣れてくるとかなり活用できる。身体も心も慣れる。

ぼくの場合は14時に家を出て、帰ってくるのが翌日の12時くらい。サラダをむしゃむしゃ食べて、ビールを飲んで、2時間くらい昼寝をする。そのあと15時くらいからはフリータイム。夜まで楽しく過ごせる。

そして翌朝も13時くらいまではフリータイムである。慣れてくると身体はかなり楽だ。こうなるためには、運転時に疲れを溜めないように休憩を工夫したり、運転姿勢を考えたりする必要がある。あと自宅での疲労の抜き方も重要だ。

それでも5連勤したときは流石に死ぬかと思ったのだが、2連勤くらいなら全然動ける。

要は慣れの問題だと思う。3ヶ月で慣れる人もいるし、半年かかる人もいるとのこと。

あと、この方N交通のグループだったらしいのだが、精算作業に2時間もかかったと書いている。あと銀行へ行ってお釣りを用意しなければいけなかったのだそうだ。

2年前の事情は知らないものの、弊社の場合は10分で終わるし、釣り銭も会社にある両替機で一瞬で出来る。釣り銭がなくてピンチでも1万円を借りることが出来る。

確かに2時間も精算にかかると疲れるだろうし、その時間が無給だと言われたら腹が立つかもしれない。弊社では、乗務時間の前後30分ずつが見なし勤務時間になっている。

後ろの30分からは少しはみ出て、11時に車庫に戻ったとしても、洗車を終えたときには12時を回ってしまうのだが、まぁそのくらいはいいかなというのがぼくの感覚だ。

ただ、乗務明けのビールがうますぎるのはいささか問題である。


最後に著者は、この仕事には向き不向きがあると指摘していて、自分は向いていなかったと記している。

そういう意味だとぼくは向いているのだろうか。警察沙汰になったことが3回あっても全然平気なので、そういう意味では適応していると言えるかもしれない。


というわけで、意見はまったく違うものの、自分の現在地を知る上で大変参考になった書籍であった。コスパは悪いのでそこだけご注意。


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作家・Youtuber。偏差値30からの大学受験を経て東京大学文科Ⅱ類(経済系)→文学部に進学(宮沢賢治の生命観)→大学院は理転して農学系(アワビ類の行動生態および繁殖生態の比較)→自主退学しスポーツ系の物書きに。著書『サポーターをめぐる冒険』がサッカー本大賞2015を受賞。

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