大好きな人に会いに行こう アイスクリーム溶ける前に
FINAL SPANK HAPPYの「ヒコーキ」という大好きな曲がある。記事のタイトルは、歌詞から拝借した。2020年夏、この曲がすっきり軽やかに響いてくるので、感じたことを書き残したい。
はじめて「ヒコーキ」を聴いたのは、2019年5月の代官山UNITでのライブ。大人の切なさも感じながら「ポップさ」にほんのすこしだけ驚いて、最初はなんだかすぐには馴染めなかった(それは彼らの最新型ポップミュージックについていけなかっただけなんだけど)。ふたりのチャーミングさの効いた振り付けに、ただくぎ付けになったことを覚えている。
▼FINAL SPANK HAPPY「ヒコーキ」
(ここから先は曲を聴きながら読み進めてね)
2019年9月、同曲が収録されたアルバム『mint exorcist』(ミント・エクソシスト)がリリースされた。アルバムを聴きこんでいくうちに、この曲がどんどん好きになっていた。
おもわず、歌詞をツイートしてしまうほどに。
最初はすぐに馴染めなかった曲が、個人的にこんなにも2020年の「夏」にフィットするなんて思ってなかった。
FINAL SPANK HAPPYの楽曲のなかでは特にポップな装いだが、どの曲にも共通して感じる「クールな質感」と「大人の切なさ+エレガントさ」は、夏のうだるような暑さとは対極の位置に存在しているよう。すっきりと軽やかに響いてくる。
サビの歌詞はこうだ。
ヒコーキに乗って何処へ行こう
過換気になっても夢を見よう
大好きな人に会いに行こう
アイスクリーム溶ける前に
あゝ あゝ あゝ あゝ
アイスクリーム溶ける前に
個人的な印象だけど、この曲は「変化」や「終わり」を歌っているように思う。
「アイスクリーム溶ける前に」ってかわいらしいフレーズだけど、暑さによってアイスクリームが溶けていくのは、あるものの形が時間の流れとともに変化し、なくなっていく=終わることを表しているように感じる。
この曲で歌われている「恋人」だった日々が突然終わってしまうように、夏のアイスクリームなんて、急に溶けちゃうからね。儚いものです。
「恋人」が「友達」になるという変化(「恋人」の終わり)、アイスクリームは溶けるという変化(形状がなくなり、アイスクリームがなくなるという終わり)、さらに「世界がゆっくりなくなるまで」というフレーズもあるけど、それをカラッと軽快に、ポップな装いで歌っている。
あゝ
「あゝ」という感動詞も好き。
この2音が「さぁ」だと、異なる趣になり「大好きな人に会いに行こう」をうながす作用となる。これが「あゝ」だと、アイスクリームが溶けていくことを小さく嘆いているようだ。時間の流れも、変化も、(広義での)世界の終わりも止められない。そんな事実を「あゝ」と嘆き、受けとめながらも「大好きな人に会いに行こう」と言葉にしている。
大好きな人に会いに行こう
さらに、2020年の夏にこのフレーズを聴くと「大好きな人に会いに行こう」は、物理的に「会いに行く」ことだけにとどまらないように感じる。
いま、直接会うことが以前よりもむずかしい状況にある。でも「大好きな人に会いに行く」が対面でできなくても、それが叶えられることをわたしは知っている。
Zoomにてオンラインで会うこともできる。電話をしたり、テキストメッセージやSNSでやりとりしたり、ただ投稿を見ることも「会いにいく」ことだと思うのだ。
その人の文章を読んだり、作品を観たり、ラジオを聴いたりして、その人の想いに触れる。それも広く「会いに行く」に含まれているように思える。
時間は有限だから、(広義での)世界はいつか変化して終わるから。夏のアイスクリームが一瞬で溶けてしまうように、人生はあっという間に終わってしまうかもしれないから。だから、大好きな人に会いにいく。
すぐに溶けてしまうこの瞬間を「大好きな人に会いにいく」ことに使いたいのです。
そんなことを思いながら、ぽろっとあんなツイートをしてみた。
歌詞よりも「ああ!」がちょっとつよめだけども。だって、最近、濃密で楽しい時間が秒で過ぎていくんだもん。ああ!
上のYouTubeで聴き逃した方は、ここで聴いてみてね。
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おしまい🍦
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