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【小説】42歳、主婦。ホームレス。

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15年の専業主婦生活を経て仕事に復帰した。そこに至るまでの人間関係の葛藤、大人の恋愛の話。
まだまだ日本という国は女性が生きづらい。たくさんの登場人物の中に、あなたがいるかも。男性は女性の生…
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#小説

19、浮気の対処

2014年4月 3月中に何日か打ち合わせに行った後、4月1日きっちりに私の仕事は始まった。 着慣れないスーツに身を包んだ新入社員達が乗る電車に乗り込んで、少しだけこなれた服装の私も同じように緊張していた。 仕事に合わせて、いくらか洋服を新調した。 15年前はデパートの中か紳士服専門店でも揃わなかった女性の働くための服が今は豊富に揃う。楽天でいいショップを見つけたので、出かけずに済んだ。 和也は初めて春やすみにひとりで過ごした。それも中学校に入るという期待が大きく、お昼を

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17、答えの出ない問い。

2017年5月 会社は1週間休んだ。最初は長いと思ったけれど、案外短かった。 最初の3日は、ほとんど眠って過ごした。 眠っているうちに夜になり、そしていつの間にか朝になった。どれだけ体が疲れていたのかを思い知らされた。 夢も見なかったのだから… 4日目からは家の事をした。料理と洗濯は必要に迫られるのでこなしてきたが、掃除はどうしても後回しになってしまう。 気になりながら今まで手をつけれなかったところを掃除した。 そして、大量に物を処分した。 「断捨離」と呼ばれるこの儀式は

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16、離婚は不幸なのか?

三者面談はあっけなく終わった。 私も先生も、心配な部分は見当たらなくて先生との雑談で終わった。 玄関を出ると、お決まりのようにいつものママ友達が集まっておしゃべりをしていた。 和也と同じクラスの女の子のパパとママが離婚したらしい。 その理由がどうやらご主人のDVらしい、という話だった。 へぇ、そんな風に見えなかったけど。夫婦ってわからないものだな… 「そんな風には見えなかったけど、確かにあのご主人は表裏がありそう。」 「子供も少し気になるところがあったよね…」 「娘が言

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15、女が働くという事。

2日後の朝、もうこれ以上社長を待たせられないと思い夫に先日の話をした。 彼は寝ぼけたまま朝のテレビを眺めていた。 彼の頭が朝は働かないことはよく知っている。15年一緒にいるのだから。あとで「聞いていないよ。」と言われる可能性もあると思っていた。 でも彼は、とても喜んでくれた。 「そっか、良かったじゃん。頑張って!」 思いの外あっさりと承諾してくれた上に、心から喜んでくれているようで安心した。まずは家族は大丈夫だ。社長に報告できる! 数日間の胸のつかえが取れてその日の午前

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14、Facebookと誕生日。

その日、私はご機嫌だった。家族の事を考えるまでは。 相変わらず夫は夜遅く、おまけに酔って帰って来るだろう。彼に報告したかったが諦めた。 でも朝が弱いから、朝からこんな込み入った話はしない方が良い。そうなると夜いる日…金曜日までない。 家族に報告してから、一度社長に連絡することになっていた。 なるべく早く良い報告をしたい。

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13、引き寄せの法則

5つ年上の社長は「変わってないな!」と言った。 社交辞令かもしれないけど素直に嬉しかった。 「ありがとうございます。社長のご活躍は伺っています。お電話ありがとうございました。」 「どう、最近?」 社長はブレンドを注文するとカジュアルに聞いてきた。ブルックスブラザースの金ボタンの紺ブレがお決まりだったが、きちんと仕立てられた3ピースのスーツになっていた。 社長は背が高くて手足が長い。 きちんと計測されたオーダーメードのスーツは、それこそ上品で、あの頃以上に自信を湛える社長の表

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12、上品さ。とは何か。

人の好き嫌いはない方だと思っていた。 でも、最近思うのは 好き 嫌い を判断できるほど深く人と関わってこなかったのかもしれない。 私は常に広い視野を持って、狼狽したり臆したりする事なく物事に向き合い、合理的で理性的な判断を下せる状態でいる事が人として、大人の女性として美しく、品格があると思っていた。 今でもそれは変わらない。 真っ直ぐで、正直でありたい。 一瞬カッコ悪い時があったとしても、カッコ悪いと上品は反比例しないと思っている。 たとえカッコ悪くても、正直で上品であ

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11、父が倒れた。

2012年10月1日4時40分 枕元の携帯電話が鳴った。父からだ。 こんな時間になんだろう…母方のお婆ちゃんに何かあったかな。それしか思いつかない。 夫はテレビの前で寝てしまったようで、寝室にはいなかった。寝ぼけながら電話に出ると警察だった。 実家から車で30分ほどの場所で父親が倒れていた。全身傷だらけで、10月とはいえ夜は冷え込む。凍死寸前の状態で新聞配達の職員の方が通報してくれたのだ。 謎しかない電話だったが、一瞬で目が覚めた。病院に行かなくては。

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10、もうすぐ春がくる。

義妹は実母を知らない。写真を見て、お姉さんそっくりですね!という程度の認識だ。 弟の前の彼女は実母が可愛がっていて、私も実母も、弟が彼女と結婚すればいいのに!と思っていた。 高校時代の彼女など、そう周りが思うほどうまくいくわけはない。どちらかというと、瞳さんと結婚したことの方が驚きだ。健太に彼女のような能力のある奥さんが来てくれるとは思っていなかった。 弟が結婚した頃は父はひとりで暮らしていた。たまに私が子供たちを連れて遊びに行く程度で、自営業の父はひとりで店を切り盛りし

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9、そして14歳の誕生日に…

祖母が亡くなる1ヶ月前に、14歳の誕生日を迎えた。 祖母も肺がんだった。祖母はまだ50代だったし、がん治療のあれこれも進んでいなかった時代だ。祖母に「あなたは癌ですよ」と最期まで言わなかったのではないかと思う。きっと聡明な彼女は気付いていたけど。 祖母が治療中で病院と自宅療養を行ったり来たりしていた頃、私は生と死について考えさせられた。とにかく『死』というものが身近ではなかったのだ。 私は母の本棚が嫌いだった。

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8、続・他人の不倫と祖母の死

2005年〜今日まで 私はとにかく、不倫相談や恋愛相談をされる。 今まで誰にもその内容を明かしたことがないから、ふたりの秘密だと思って黙っていたら実は周知の事実だった、って事も何度もあった。 私が他人に話さない理由はただひとつ。巻き込まれたくないのだ。 仕事を始めてからは男の人も同席する飲み会も多く、明らかに自慢の様相で語ってくる人もいた。 大抵の男の人が自身の恋愛話をしてくる場合、ほとんどが自慢ぽく聞こえる。最初は私にそういう話がないから、卑屈になってそういう風に感じて

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7、習い事と、私の人生

2011年5月10日18時00分 梨花とランチしたその日、夕方帰ってきた子供たち二人を連れて、私はサッカー場にいた。 丈太郎はサッカークラブに入っている。 彼の意思で小学校1年生に始めた。 野球じゃなくてよかった…と心底思った。 近くの野球チームは朝が早い上にパパ、ママの役割も多く、監督のお弁当まで保護者が順番で用意する。 聞くところによると、グランド整備も保護者の仕事らしい。 ママたちは口を揃えて野球のユニフォームの洗濯が大変だ、と言っていた。 おかしな世の中になった。

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5、女は、いくつになっても嫉妬する。

2017年2月27日19時00分 父の葬儀は実家の近くの葬儀場にお願いした。母は終始不機嫌だった。彼女は人前に立つのが苦手で、全てを私に押し付けたし、大事な決め事の時は決まって姿を消していた。 それなのに彼女抜きで決めた事には「私は聞いていない!」と必ず文句を言った。 弟はこういう時には本当に役に立たないという事がわかった。大企業で揉まれて少しは大人になったと思っていたが、私の前では結局弟なのだ。 私がそういう関係を40年近くかけて作ってきたのだろうか。 この母は、実は私

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4、他人の不倫は厄介だ。でも羨ましい。

今日梨花に呼び出された理由を、私は知っていた。 GW、お盆、お正月。その期間の梨花はおかしくなる。 理由は彼氏が奥さんの実家に行くからだ。 『奥さんに愛情はないと言っているくせに、奥さんの実家に行く』という行為が梨花には理解できない。自分だって旦那の実家に行くくせに。 私は梨花の思考回路が理解できないけど。 今日も梨花の言い分は身勝手で社会常識を欠いた、とうてい理解できる内容ではなかった。 「奥さんを助手席に乗せて3時間も一緒にいるなんて。」(そこは私の席なのに) 「奥

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