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「わたしを離さないで」 (ハヤカワepi文庫)〜カズオ イシグロ

私たちは都合のわるい「事実」を都合のよい「妄想と思い込み」で差し替えて生きている。丁寧で確信犯の供述自白文書のような体裁と単眼的な主観で語られた告白により、読者は逆にストーリーの外側においやられ俯瞰することになる。まるで産業動物のように産まれ育ち、その役割をはたしていく青年たちの灯す青白い炎で炙り出される「魂」が語りかけてくるのは、命は命を消費しながらいきているという、なかなか直視できない、しようとしない都合のわるい「事実」だ。

「わたしを離さないで」 (ハヤカワepi文庫)〜カズオ イシグロ


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