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2021/03/28 「子午線の祀り」を観る③知盛と勝呂

「子午線の祀り」を観劇する前、録画していた三谷幸喜・脚本、アガサ・クリスティー・原作のフジテレビスペシャルドラマ『死との約束』を見終わったばかりだった。野村萬斎が悲壮感たっぷりに知盛を演じているのに、日本版ポワロ・勝呂武尊(すぐろ・たける)がオーバーラップしてしまった。

シリアスな知盛とコミカルな勝呂は、発声が違う。勝呂は抑制した低い声が続くのに対し、知盛は高低の幅が広く、それがそのまま感情の揺れ幅にもつながっている。

しかし、この二人。同じ俳優が演じたからかもしれないが、対極にありそうで悲喜劇をまとっている点で、根っこは同じなのだと感じた。

「子午線の祀り」では、優柔不断で頼りない兄の棟梁、宗盛がコミカルで、それに振り回される知盛の姿が悲喜劇に見えた。一方、今回の勝呂は、かすかに慕情を感じた女性の犯行を悟りつつ、事件を解明していく。「真実」を知ることの悲劇を漂わせた。

「見るべき程の事は見つ」人間に待っているのは、やはり非情の世界なのだろうか。

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