"We will"
2024年10月19日、僕はZEPP SAPPOROにいた。そう、「結束バンド」のライブに行くために。倍率が高い中、上手く掻い潜りチケットをゲットすることができた僕は、この日を待ち侘びていた。
2022年に放映されたアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』。ストーリーの良さはもちろんだが、劇中のバンド「結束バンド」の楽曲の良さで、瞬く間に人気が出て、今も話題が尽きない。
「結束バンド」の良さは、語り尽くせない。まずは突き刺さるような歌詞。誰しも持っている自分の心の中のコンプレックスを直接掃き出し、ありのままを表現している。またサウンドも良い。ギター、ベース、ドラムという最小限の楽器から鳴るトラッドなバンドサウンドは無駄がなく洗練されている。それを声優の素晴らしい声にのせている。全てが完璧なバランスの上に成り立っている。
ZEPPの裏手で一度グッズを買い、ホテルに戻った後再度開場の40分前に着いたが既に人集りができていた。この日の札幌は今季最も寒い日。雨風が強い中、1人静かに開場の待機列に並んだ。
開場されるとゆっくりと列が動きだし、それに合わせて気持ちも高まっていった。
入場するともう人がぎゅうぎゅう詰めになっていて、後ろから押され会場の中腹に押しやられた。これだけの人々が同じものを目撃するために来ているという事実が、自分を誇らしくした。
場内が暗転し、ギターの音が会場に染まっていく。「天才だって信じてた」、もう泣いていた。一曲目『月並みに輝け』、僕の一番好きな曲だ。自分が特別でないと知り、人生を諦めかけたとしても、自分を信じて進むしかない。もっと自分はやれると思っていたはずなのに、そうはならなかった過去。日々後悔する自分を重ね、自然と目尻に涙が溜まる。
位置取りが悪く、ステージが見えない。たまにチラチラとベースの高間さんが見えるだけ。でもそんなことはどうでもいい。全てはもう僕の心に届いている。音や空気感、「結束バンド」全てが壁に反響し、僕の体内に沁み渡っていく。これで満足だ。
あっという間の20曲。最高という言葉があまりにも稚拙だと分かりつつ、代わりの言葉が見つからない。行けてよかった。改めて「結束バンド」を好きでよかったと思った。「結束バンド」が目の前にいる、そのことが現実と劇画の世界をシームレスにし、自分を果てしなく広い世界に放り出させる。大袈裟かもしれないが、人生に対する姿勢を示してくれる。
今回のツアータイトル"We will"。ちょっと先の「結束バンド」を表現している。時間軸で言えばアニメのその後ということだろう。つまり僕たちに合わせた時間軸で生きている。ぼっちちゃんはアニメの中で少しずつでも成長していった。僕たちも一歩ずつ成長していかなければならない。いくらコンプレックスを抱えていようが留まることは許されない。それを原動力に変え、成長することで克服とまではいかないかもしれないけど、自分を好きになれるはずである。「僕たちはどうするか」という問いが"We will"に込められている。僕たちは生きなければならない。進まなければならない。成長しなければならない。これには明確な答えがない。答えが出なくてもいい。「結束バンド」とともに前を向く必要がある。