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輝く尾

3
小説第二弾
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輝く尾 ③

そこは、人間の手によって開発が進んでいる地だった。丸太が横たわり、大地の表面が露わになっている茶色い土地だった。以前はここに巨きな鳥たちがたくさんいたはず。ぼくはそう思った。しかし、今は重機の音がするばかりで、鳥の啼く声は聞こえない。ぼくたち鳥にとっては不毛の土地だ。巨きな鳥たちは逃げてしまったのだろうか。

ここまで人間の手が及んでいるのか。それを知れただけでも、斥候としての役目は十分果たせたで

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輝く尾 ②

〜〜
ある日、森でレースが行われることになった。ぼくたちのいる森は幸いなことに天敵も少なく平和そのものだった。ただし、退屈だった。ということで森を挙げてレースイベントを開催することになった。
ちょうどみんなと遊んでいるときに、広葉樹の太い幹に貼られているレースイベントのチラシを見た。そこで、変わった色の尾をしたそいつは、俺も出てみようかなとつぶやいた。なんだこのイベントに興味あるのか出たらいいじゃ

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輝く尾 ①

かつて、人間の住む世界から遠く離れたところにぼくたち鳥だけの棲む森があった。森から人里まで行くのに、岩肌が露われた鉛筆の尖のような山々を2つも3つも飛び越えなければならなく、しかもそこにはぼくたちより巨きな鳥が眼を光らせながら飛び回っていて、とてもじゃないけど、人里まで行くことはできなかった。

ぼくも含めて、この森にいる鳥はみんな、コーヒーを水に溶かしたような、汚い茶色を全身に纏っていて、鳴き声

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