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鮮魚街道七里半[二巡目]#2

 -利根川から江戸川まで-
 江戸時代から明治初期、銚子で水揚げされた魚をなるべく早く江戸まで運ぶため、利根川と江戸川を陸路で繋いだ鮮魚街道(なまみち)をめぐる旅の二巡目。

 二〇二一年 千葉県我孫子市布佐→印西市阿夫利神社。

※オレンジ色の道が二巡目に歩いた道

 二〇二一年二月十八日(木)十一時三〇分。
 JR成田線布佐駅にいる。
 前回はこの布佐駅周辺をねっちりと撮影したので、今回からいよいよ鮮魚街道(なまみち)を松戸に向かって歩く。梅も咲き始めて、鮮魚街道はゆっくりと春の兆しを見せ始めている。ひんやりとした気候が良いからか、序盤から脚がグングンと進む。歩道がなく車がスレスレで横切るタイトな関枠橋もやり慣れたスーパーマリオの1ー1面のように危なげなくクリアした。

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 交通量の多い雑音だらけの大きな通りから一本裏通りの鮮魚街道に入ると、まるで遮音性の高いヘッドフォンをしたかのような静寂へと一変する。門構えの立派な米農家の軒先をふらふらと進む。初めて歩いた時はちょうど米の収穫期だったので米殻が散乱しアスファルトが金色に輝くほどであったのだが、収穫を終えたこの時期の田んぼは水を抜かれ、土はひび割れ、周囲には人影もない。がらんとしたこの裏通りで目につくのは…

 「不審者に注意」

 の旗である。インクの臭いがしそうなほど真新しいので色が目に痛い。そいつらが戦国時代の旗印のように勇ましく通りに沿って過剰な数でどーっと並んでいる。

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 不意にカーブミラーに自分の姿が写ると、マスク姿でカーキ色のMA-1ジャンパーにデニム。そして首からはカメラがぶら下がっていた。カメラ上部のホットシューにはご丁寧に黒光りしたツァイスのターレットファインダーがリボルバー拳銃のように備え付けてある。そんなヤツが裏通りの農家の軒先をふらふらと歩いている。これが「不審者」でなかったらいったい誰が不審者なのだろうか。

 さぁ、村人よ。
 通報するならしてくれ!

 前回は米の収穫の様子を撮りまくったこの発作集落も冬の閑散期だと何も撮るものが無かった。さらに二度目なのでルートで迷うこともない。そして豪農の立派な門構えにも慄くことはない。ちょっと横道に逸れたくても平野なのですべて見渡せる。偶然の瞬間や奇跡のスナップショットなど生まれるはずもなく、私は不審者の格好をして、半端な田舎道をただただ歩く人になる。
 発作集落を抜けると前回行こうか迷って結局行かなかった日本三大井戸「月影の井」を巡ることにした。ここでアイテム「虹のしずく」を手に入れることができる。リムルダールの岬で使用すると竜王の城への橋を架けることができる。ってそんな訳ないがな。

 とくに感動も無い。

 ちょっと解説看板の付いた井戸なだけであった。

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 わざわざ遠回りしてこの井戸を見に来たので、本来のルートから少し外れた。もと来た道には戻らずに勘を頼りに左に巻きながら坂を上がり、鮮魚街道と合流する木下街道に出る。
 火気厳禁の灯油スタンドで茶色いニットキャップを被った爺さんがタバコを美味そうに吸っている。危険が危ないが、これぞ田舎のストロングスタイルだ。

 メキシコなら即座に銃殺されているだろう。

 その横の掘立て小屋で野菜が売られている。なぜかオババがいる有人販売である。かなり品揃えが豊富な直売所だが、お買い得かどうかは分からなかった。

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 ド派手なピンクの大型バスが何台も停まる観光バス会社と阿夫利神社を目の前に左折した。今回の鮮魚街道はここまで。とはいってもここは木下街道なのだが。

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 退屈な千葉ニュータウンという名のオールドタウンなので写真は撮らない。ライカを鞄にしまい、ひたすら歩いて千葉ニュータウン中央駅に着いた。
 北習志野駅で下車し、駅前の珈琲屋でメモを整理してから帰宅した。

 次回はまた魔の「白井市エリア」が待っている。

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