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鮮魚街道七里半[二巡目]#5

-利根川から江戸川まで-
 江戸時代から明治初期、銚子で水揚げされた魚をなるべく早く江戸まで運ぶため、利根川と江戸川を陸路で繋いだ鮮魚街道(なまみち)をめぐる旅の二巡目。
二〇二一年 六実→五香

※オレンジ色の道が二巡目で通った道

 五月二〇日(木)九時四六分。
 電車が六実駅に到着するなり、東武アーバンパークライン(旧東武野田線)の車両ドアから威勢よく吐き出された。改札位置を知らない私はプラットホームを端から端までかなり歩かされた。
 ホームの屋根の隙間から僅かに垣間見る四角い空を見上げると天気は生憎の薄曇り。いや、これでいい。この方が撮影に向いている。曇りなら太陽の向きや逆光に悩まされなくて済む。鮮魚街道に劇的な青空など必要ない。
 それより今回はリベンジマッチである。一巡目の時にこの六実→五香間で機材トラブルがあったのだ。後半から写真が全部真っ青。海中で撮影したみたい。

ハトヤの4126体操したくなるほどのブルー。

気持ちもブルー。

おまえとヴァージンブルー。

 いやいや、そんな綺麗なブルーじゃない。勝浦海中公園の薄汚れた丸い窓から見えた、あの澱んだブルーだ。
 最初は購入したばかりのレンズ、宮崎光学MS-OPTICSのAPOQUALIA五〇ミリF3・5の調子が悪いと思っていたのだが、よくよく調べると、Leica M9のホワイトバランスのモードをオートにせずにタングステンに設定し間違えてしまったのだ。逆光の露出補正なんて慣れないことをしてしまって余計なボタンを押してしまったのだろう。なので、今回はリベンジでライカM9にアポクオリア五〇ミリを装着し、新たな気持ちで撮影に挑みたい。

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 改札を抜けると駅前の小さな商店街には目もくれず、すぐさま右折し鮮魚街道に入った。ド平日だが街道は車で混んでいる。松戸市に入った途端にこれだ。
 途中「むつみ音頭」という碑を見つけた。

 サーサみなさん うれしじゃねぇか
 ドドンと鳴りだす 太鼓が合図♪

 六実の歴史は浅く、明治政府により計画された開墾地である。
千葉県では開墾順に一から十三まで土地がナンバリングされている。

初富(鎌ケ谷市)
二和(船橋市)
三咲(船橋市)
豊四季(柏市)
五香(松戸市)
六実(松戸市)
七栄(富里市)
八街(八街市)
九美上(香取市)
十倉(富里市)
十余一(白井市)
十余二(柏市)
十余三(成田市・多古町)

の順番で六実は一八七〇年に開墾が始まった。

 開墾六実は 百年まつり
 長者でいこうぜ 此の世極楽♪

 歌詞がエグい。
 サイケデリックである。

 歌詞に百年まつりとあるので一九七〇年あたりにこの音頭が作られたのだろうか。

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 さすがに二巡目ともなると余程の発見や瞬間がない限り、カメラを構えてシャッターという面倒な動作はしない。そうやってウォーミングアップ的な写真作法をしないので、突然来たるべき決定的瞬間を写真に収められないのだろう。

〝お散歩がメイン、写真はついで”
 
 ではマズい。

 ディズニーグッズが豊富に売ってあった本屋に休憩も兼ねてまた入る。前回は娘へのお土産を買うか買わないか迷って結局買わなかったので、今回は良いものがあったら積極的に買っていこうと思う。不思議な国のアリスの珈琲カップにちょっと手をかけたが、やっぱり今回も見送った。家に珈琲カップばかりあってもしょうがない。(←やっぱり買っておけば良かったと家に着いてから後悔した)

 街道も右側を歩くか、左側を歩くかで景色は微妙に変わる。一巡目は左側を歩いたので、今回は敢えて右側を歩いてみた。

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 シャッターもさほど切らずに一時間ほどでゴールの五香駅に着いてしまった。駅ビル内の珈琲屋に入ると先客のオババがレジ脇の微妙な位置にあるガラスケースを覗いていた。ガラスケースを見終わるのと同時のタイミングで私がレジに入ったので、オババ的には若干私が割り込んだ感じになった。オババはそのままプンスカと怒って何も買わずに去っていった割り込まれるのが嫌ならガラスケースのケーキは諦めてとっとと珈琲を注文すればいいし、どうせ暇なんだから私一人くらい待っても良かろう。ホンダCR-Xの後部座席かってぐらい心の狭いオババだった。

 こちらは優雅に珈琲を啜りながら今回の撮影行のメモを取った。

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 次はここ五香駅からスタートする。

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