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30年以上通りながら降りたことがなかった駅で降りた先で見えたもの

 東海道線に「根府川」という駅がある。知ってる人は知ってるだろうが(あたりまえ~)、ホームの目の前が↑ご覧のように海だ。熱海と小田原の間、海の目の前、山にへばりつくようにある駅だ。

 私の実家は沼津市で、人生ずっとお金がないんだよ~~~♪と生きてきたから、実家に帰るときは、新宿~小田原(小田急線快速など)&東海道線などの「1円でも安くしたるで。フンガッ!」コースで電車に乗り、この根府川駅は30年以上ずっと通って、その度に海を見ては「きれいだなぁ」と思ってきた。

 でも、そこは通り過ぎる場で、降りるという発想がまったくなかった。けど、今日、ふと、ここで降りてみようか?と思った。どんな駅なんだろう? 周りに何があるのかな?

 で。降りてみた。

 どうやらサルがいるらしい。

 で、てっきり海に降りて行く方に改札があると思い込んでいたが、そりゃそうだ。崖っぷちに建ってる駅だもん。改札は山側にあった。あって、そこの前に小さなマイクロバスが止まってて、運転手さんが「急いでくださああい」と叫んでいる。何事だ?と思ったら、どうやらここから山を登ったところにヒルトンホテルがあるらしく、そこのランチ?に行くマダムたちがこの駅で降りて、そのバスに乗って行くらしい。私もその一人だと思われたみたいだが、いえ、違います、とうつむいて、改札(は、実際はなくて、ピッとするスイカ用の機械があるだけでした)を出た。

 出ると、この辺りの地図があり、見ていたら「てくてく歩いて早川(東京方面への隣の駅)まで歩くウォーキングコース」なんてのもある。へ~~と思ったが、かなり大変そうなので却下。さて、どうすんべ?と思ってたら、駅にいたおじさんが、「何か探してるの?」と声を掛けてくれた。

「あ、ここに初めて降りたんで、何があるのかなぁ?と思ったんです」
「そっか、じゃ、地図あげるよ、待ってて」

 おじさん、駅に戻って、地図を持って来てくれた。と、おお、これ、おじさんの手作り?

 「この寺山神社の向かいから階段下りてけば、海に出られるから。なぁに、あんたはまだ若いから、この昇り下りぐらい、たいしたことないさ。わっははは」と笑うのだが、どう見ても大変そう。しかし、せっかく降りたのだから、とりあえず、寺山神社へ。

 途中にみかんが売ってる。重くなる、ということも考えずに即購入。今まさに私はみかんが食べたい、と思っていたのだ。思っていたら則行動。何も考えずに買って、買ってから重いと気づいたが後の祭りだ。

 神社にもお参りに。

 おじさんが「道祖神もいるよ!」と言ってたが、本当に可愛い道祖神さんたちがいた。かわいいね~~~!と話しかける。思ったことも全て口にすることにしているので、相手が道祖神さんだろうが、言う。きっと、嬉しかったはずだ。可愛いと言われて、いやな気持がするわけがない。

 そして、向かい側の海に降りて行く道を下りた。けっこうな坂。雨の日なんて無理。雪なんて即死する。。。と思った。晴れててもわたしゃ、ゆるゆる下りたよ。

 東海道線は、こんんところを通ってたのか。。。意外とこう見ると、デンジャラスというか、30年以上、こんな怖いところ通ってたのか!と今さら知り、ちょっと震えた。

 そして海~~~。。。。海だが、だからって、波打ち際まで下りていく口もなく、30秒ボオとして、そしてさっきのミカンを立ち食いし、観光は2分で終了してしまった。チ~~ン。。。。根府川、駅前には何もなかった。優しいおじさんと、ミカン買ってるときに「ここのミカン、おいしいわよぉ」と話しかけてくれた親しみやすいおばさんがいて、人は素晴らしいことはわかったのだが、とりあえず観光のなんちゃらは見当たらなかった。いや、山沿いをハイキングしたらあるのだろうが、その体力がなかった。いや、もし、私が車と呼ばれる便利な機械を扱えたら、そりゃまた違ったんだろうが、その便利な機械を扱う免許もお金もないので、仕方ない。とりあえず、海見たし、さぁ、坂を戻るか?と思ったら、バス停におばさんが待ってる。あれ? バス来るんですか? 「ええ、今から来ます!」マジですか? じゃ、坂、上らないで済む! 小田原行! やった! 時刻表見たら驚愕。

 1日1本! なんと潔い! そしてたまたまこれに巡り合えて良かった。

 で、ぶ~~ん。バスも海沿いを走り、美しい。へ~~。いいね~~。

 やれやれ。小田原着。バス代は420円。節約してるはずが思わぬ出費だが、まぁ、いいや。これで根府川を下りる、という経験が出来たのだから。さて、何か菓子パンでも買って電車でむしゃむしゃしてやれ、と歩き出したら、えっ? えっ?

 びっくりしたことに、駅前に最近はほとんど見なくなった、ものすごくものすごくボロボロなホームレスさんがいる。最近はホームレスさんでも身なりを整えてる人が多い中、その人はもう、持ち物含めすべてがボロボロだった。うそおお?と思って少し近づくと、えっ? えっ? 女性だ。うそおおおお?

 しかも、若い。どう見ても40代ぐらいだ。髪の毛に白髪はあるものの、私なんかよりずっと若い。

 どうしよう? どうしよう? どうしよう? 何か声をかけるべきか? こういうとき、どうしたらいいんだろう? そうだ、とりあえず、何か食べ物を渡そう。そう思ってセブンイレブンに入り(今、何かと話題のセブンイレブンです)、カレーパンを買って、そしてホームレス女性の元に行ってみた。「これ、よかったら、カレーパン食べません?」いきなり差し出すと、女性はちょっとビックリした顔で私を見上げ、でも、ううん、と首を横に振る。あ、カレーパン嫌いだったかな?

 そして下を向いてしまったんで、私もどうにもできず、一旦その場を離れた。でも、でも、でも、どうしよう?

 このまま何もしないで猿、、、じゃない、去るのか? それはなんか、なんか、このボロボロの女性をこのままにするのは、なんか。なんか。なんか。私はそれはつらいよ~~~~~~~~~~~~~!

 だって、彼女は一人ぼっちなんだもん。温かい日だとはいえ、今は冬。そんな中でボロキレのような服を着て、ほとんど形をとどめない靴を履き、ぼろくずのような荷物を持ってる。みんな彼女が見えてるはずなのに、誰も彼女を見ないで通り過ぎる。もし私が彼女だったら? 私だって彼女になる可能性は多大だ。このまま去るのはあまりに辛い。ひとりぼっちにしておけるわけがない。

 そうだ、もう一度。

 お財布を開けて、でも、あんまり中身がないから、五百円玉を取りだし、彼女のところへ。

 「あの、これ、良かったら、何か買って食べて。もらってくれますか?」

 五百円を差し出したら、手を伸ばして受け取り、彼女は消え入るような声で「ありがとうございます」と言った。

 「ホームレスの支援団体とか、市役所とか、何か手伝いしてくれるよ。お願いしたことありますか?」聞いてみたが、彼女はただ「ありがとうございます」と消え入るような声で言うだけ。目はとても純粋そうで、肌は思いのほかきれいで、たぶん40代始めぐらいで、でも、きっと精神の病を負っているのではないか?と想像できた。

 私はそれ以上どうしたらいいか分からなくて、「ごめんなさい、これしかできないで。気をつけてね」とだけ言って、横のエスカレーター口に行った。彼女は私の方を覗き込むようにして見て、その横を通り過ぎるオバさんが、怪訝な顔をして、私たちを見ていた。

 ホームレスの女性。若い。そういう人はレイプされたりの犯罪に巻き込まれることも多いと聞いたことがある。小田原市さん、なんとかしてあげてください。そして、こうしてホームレスの女性を見かけたとき、どうしたらいいんだろう? 支援団体に今度学びに行きたい。

 どうか、彼女が一日も早く施設などに入れて、生活が送れますように。

 30年以上通り続けた根府川駅で降りて出会ったのは、若いホームレスの女性だった。根府川駅で降りて、本当に考えさせられた。

追記:で、小田原市の福祉課に電話してみました。すでにやはり彼女のことは把握していて、警察と共に何度か保護しようとしたものの意思の疎通がうまく図れず、強引に連れていくことができないので今に至る、と言ってました。なので「彼女は明らかに精神的疾患を抱えているから、それを理解して施設や病院に保護してください」とお願いしました。電話して、最初は怪訝な声で話されましたが、話してるうちに、そうですね、と真剣に聞いてくれました。小田原市が彼女の保護と、治療などをしてくれること、願っています。

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