あなたにルビをふれるなら②
上げた頭で、大地を見ながら私は静かに言う。
泣きそうになりながら、言う。
「あなたのは、浮気だよね?
だって、既婚者なんだから。
仲良しの奥さんも、可愛い子どもたちもいるんだから。
私は、“浮気相手”なんだよ。。。」
だけど大知は、起き上がった私の目をまっすぐに見つめて言った。
「れみへの気持ちは、本気だ」
面食らった。
「本気」って、なんだろう。
……わからなくなった。
大知とのセックスは中毒性があって、最高に気持ちいい。
許される限り、私と会ってもらえる限り、お互いのどちらかに性欲がなくならない限り…
この人とずっとセックスをしていたいと思う。
だけど、私は、大知のことを、愛してはいない…。
やっぱり私は人を愛せないんだと思う。
独身だから浮気じゃないけれど、かといって本気の恋でもない。
安易に『本気』と口にしたことを後悔した。
更には、別れ際に「愛してる」と言われて。
エヴァンゲリオンの綾波レイじゃないけど、『どんな顔をしたらいいか、わからないの』状態になってしまった。
きっと、優しい大知のリップサービスなんだ。
今は「恋人」の設定だから…
設定に合わせて、言ってくれているだけ。
「ありがとう。
私も…愛してるよ」
たとえ設定だとしても、愛してると互いに言い合えたことは、嬉しいな。
本気で信じたら、痛い目に合いそうだけどね。
大知が口にした「本気」の文字に、「ホンキ」以外のルビをふれるなら、、、
それを「アイ」と読ませてもらえるだろうか。
私の名に、「ウワキアイテ」以外のルビが付くことはあるんだろうか。
あなたの名に、、、
私はいつか「コイビト」というルビをふれるの?
行きどころのないこの気持ちにも、なにか名前があるのかな。
end.
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