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映画『Gメン』レビュー

胸が熱くなる、この夏、最高の映画を観た。待ちきれず朝一番の上映回に飛び込み、スクリーンに映し出されるストーリーに夢中になり、エンドロールが流れた瞬間に浮かんだのが、「また、最初から観たい」ということだった。何故、この映画はこんなにも魅力的なのだろう?

『Gメン』は、秋田書店「週刊少年チャンピオン」にて連載された、小沢としおのコミックが原作の実写作品である。4つの女子高に囲まれた私立武華男子高校に転校してきた、喧嘩には強いが女には弱い高校1年生の門松勝太(=岸優太)。だが彼が入ったクラスは、校舎から隔離され、教師すらも怯える問題児だらけの1年G組だった。

私立武華男子高校は成績によりアルファベットのAから順番にクラス分けがされており、G組は、そのヒエラルキーの最下層である。昭和の不良のようなスタイルの梅田真大(=森本慎太郎)。アニメやプロレスのオタクである肝田茂樹(=矢本悠馬)。さらに、「戦争じゃー!」が口グセの薙竜二(=りんたろー)。

またあることがきっかけで、勝太はA組に所属する女子の憧れである瀬名拓美(=竜星涼)とも出会い仲を育んでいく。

さらにその清楚な容姿からは信じられないほどの豹変ぶりを見せる女性教師•雨宮瞳(=吉岡里帆)、やがて勝太に淡い思いを寄せるようになるレディース•上城レイナ(=恒松祐里)。勝太達の先輩であり、喧嘩がめっぽう強い伊達薫(=高良健吾)。伊達とつねに行動をともにする、ある秘密を抱えた八神紅一(=田中圭)という豪華な配役ぶりだ。

だがあるとき勝太達に、都市伝説と化している不良グループ・Gメンが、かつて潰したはずの凶悪組織・天王会の加藤(=尾上松也)らの魔の手が迫っていく。

男子高校生らしい下ネタに爆笑し、彼女が欲しくて奮闘するも連敗続き。そんな勝太やG組の面々に、暴力という名の支配が近づいていくのだ。勝太がピンチに陥ったとき、G組の仲間達がどうするのか。ぜひ、その目で確かめてほしい。

この映画の魅力は、どこにあるのだろう。アクションの素晴らしさ、だめんずな男達が奮闘する姿、熱い男の友情。胸がキュンとする甘酸っぱさ。そのどれも魅力のひとつであることに変わりないのだが、一番はやはり役者陣の芝居そのものの熱量だろう。

30代の役者ばかりが高校生を演じるという設定だが、そこに違和感はない。むしろ、「何か、面白いことがはじまった」と高揚する映画なのだ。

いい大人だと言われる大人達が、全力で愛すべきおバカな男子高校生達を演じ、全力でぶつかっている。そのまっすぐな熱量に、ただ打たれるのだ。吉岡里帆のぶっ飛んだ役どころも素晴らしく、映画館の場内はつねに爆笑に包まれていた。

また、この映画の登場人物達は、勝太をはじめ秘密を抱えているメンバーも存在する。その秘密を勝太が打ち明けられたとき、勝太がどう振る舞うのか。その人としての部分が、勝太を演じている岸優太の人となりやあたたかさ、周囲に愛される魅力と重なるのだ。この映画を観た人は、間違いなく門松勝太と岸優太のファンになるだろう。

なお、この作品は、「おっさんずラブ」シリーズの瑠東東一郎が監督を務めている。瑠東監督による、大好きな作品がまたひとつ増えたことが喜ばしい。

笑って泣けて、男の友情に胸が熱くなり、ラストでは突き抜ける爽快感が待っている。ぜひこの夏、スクリーンで出会ってほしい。

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