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旬の錯綜

私は果物で季節を感じることが多い。これは皆さんの中でも「冬はコタツでみかん」とか「夏はスイカ」、「クリスマスにはいちごの乗ったケーキ」とかの果物と季節が関連した認識があると思う。

今年はコロナの影響で春先までは家にひきこもっていたので、たまたま外に出たら桜が咲いていてビックリした記憶がある。その分、果物はスーパーとかに買い物に行くだけで旬を感じられる。
例えば今の時期だとサクランボが終わって桃が沢山出てきたとか、スイカが安くなったとか凄く季節感が反映されている。
何故か?って言われたら人の手が加わってるとはいえ植物であるので、当然のことはあるが…

ただ、年々旬が感じ取りにくくなりつつある。オレンジ、キウイ、バナナなんかは一年中出回っている。特に例を挙げた3種は人気が非常に高いので通年で安定した需要が求められるのも確かである。バナナとかパイナップルは温度があれば時期をずらして一年中栽培できるということもある。

その中でもイチゴが1番わかりやすいだろうか?本当に一年中見かけるようになった。夏に欲しいと思って血眼に探しても見つからない。見つかっても未熟かと思うほど硬く酸っぱいアメリカ産しかなかった。味は冬のものに比べると劣るが、アメリカ産よりはマシである。これはここ5年位前の話。最近は味の良いのもぼちぼち見かけるようになりました。
他の温帯の果物は梨、桃、ブドウ、柿、サクランボなどがありますが、出てきても輸入物を含め似たようなものは1年中はなく、この様な果物たちが季節感をつくりだしているのだろう。前の文で例に挙げた果物は温室で栽培されており、本来の時期よりも2~3ヶ月ほど早く出荷されるものもあります。初物は本来の時期と外れているものですが見つけると「もうこんな季節か!」と思うと同時にちょっぴり嬉しくなります。
意外かもしれませんが、海外から(特にニュージーランド、タスマニア)から冬くらいに紅秀峰、マスカットオブイタリア。春には巨峰。夏になるとふじりんご、ミカン、富有柿なんかも出回ります。

NZ産の巨峰。国産に比べて見た目や味に謙遜はない。

その中でも唯一、温室で栽培されないものがあった。リンゴだ。
確かについ最近まで、温室栽培のリンゴなんて聞いたこともなかったし、小さい頃の自分も疑問に思ったが、少し考えれば分かることである。

まず、冷蔵保存のものが夏まで出回ること。最近は4~8月にNZ産の輸入りんごが入ってくること、8月になると早生のものが出てくることにある。
確かに貯蔵物は酸が抜けて旬のものと比べると劣るが、 そこまでして早出しするメリットはない。なんなら近年では海外の安い旬のものが出回るので、食味に重点を置くならばそれを食べた方がいい。私も夏はNZ産のリンゴをよく食べる。

早く出したとしても、最近はシナノリップ、恋空、紅ロマンなど優良な早生品種が出くるのでよっぽど早く出さない限りは価格面で競合が難しいと考える。また、旬である桃や梨、ブドウにスイカなんかもライバルになりうる。当然、旬の果物のほうが安くて美味いのは事実である。

「温室でリンゴ栽培なんてありえない」って思っていたが、驚くべきものが売っていた。そう、温室栽培のリンゴである。


これをデパートの果物売り場で見た時は3度見くらいしたと思う。「え?温室栽培?!」
固定観念が打ち砕かれた瞬間であった。存在は聞いていたが、普通に売られていてビックリした。値段もそこまで高くなく3個で1000円ほど、貯蔵物とさほど変わらない。迷うことなく、手に取ってレジに進んだ。

早速、食べてみた。味は10月くらいから出回る早生ふじそのものだ。蜜の入る頃のフジより硬くシャクっとした食感で、やや甘味は薄いが爽やかな味である。私ならこの値段帯なら好んで買う。

温室ものだからとはいえ、不味くも特別な味であったりはしない。裏を返せば旬の時期のものと謙遜がないという事だ。この時期に綺麗に着色させるのは、さぞ大変であろう。
メリットとして本来ならりんごのない7月にこの様な高品質のリンゴを出せるのはとても強みである。貯蔵品では食味。海外産のものとも産地のブランド・見た目で勝負できている。値段帯も悪くない。りんごの需要はあるので増えてきても良いと思う。
また、8月のお盆頃にも需要はあるので不味い無理やり着色させたような品種の代わりになるだろう。また、燃料代はかかるが施設栽培なので霜や台風の被害を受けにくいといったメリットもあると推測される。
まだまだ出荷量は少ないが、夏に美味しいフジを食べれるようになって欲しいと思う。

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