介護事業経営調査委員会での数値を見ての私見②
前回のブログ「介護事業経営調査委員会での数値を見ての私見①」に引き続き、②として話をしたい。
前回は「令和4年度介護事業概況調査の概要」からの、各サービスでの「利益率」と「収支差率」に着目して話をした。
私も、2006年の介護報酬改定より、この動向を追ってきたので、当然次回の介護報酬改定における客観的な傾向や方向性を示すものだと考えている(介護報酬改定は3年に1回なので、私はもう次は7回目の経験だ。)。
それでは、今回のブログでは「収支差率に対する給与費割合」という論点から話をする。
令和4年度概況調査における令和3年度決算において「収入に対する給与費の割合」の対前年比を見ると、ほとんどのサービスで人件費割合が増加している。
やはり、新型コロナウィルス感染症の影響、各サービスでの職員採用のコストや給料や手当の増加も大きな要因なのは想像に容易い。
そして、人件費割合は個別の各サービスによってサービス提供態勢や施設管理の費用は異なるので、一概に比較は出来ないであろう。また、人件費を含む「外観上」の費用も、それぞれの事業者は企業努力しているのだろう。
では、今回、以下の2つのサービスを取り上げてみたい。
それは、①「福祉用具貸与」と②「居宅介護支援」であり、今回の数値の比較で共通点があるからである。以下をご覧いただきたい。
①【福祉用具貸与】※対前年比
収支差率 +1.9%
収入に対する給与費の割合 ▲0.6%
②【居宅介護支援】※対前年比
収支差率 +1.5%
収入に対する給与費用の割合 ▲1.5%
このサービス共通点は、「収支差率がプラスとなり、収入に対する給与費用の割合がマイナス」だと言うことだ。
同じ数値の傾向を示すサービスは、③「訪問リハビリテーション」、④「夜間対応型訪問介護」、⑤「小規模多機能型居宅介護」であるが、③⑤はその数値が僅少であり、④は事業所数が少なく、かつ異常値とも思える数値が内包されているので、ここでは捨象する。
②「居宅介護支援」については、前回まで介護報酬改定の都度、基本報酬が切り下がり、また管理者は主任介護支援専門員である必要があり(新設の場合)、かつ経過期間を鑑みると、この数値の意味合いは理解できる。
よって居宅介護支援については、事業者側の報酬と言うより、今後利用者負担、つまり「ケアプランの費用負担」をどうするか、という論点が注目されるだろう。
次に、①「福祉用具貸与」については、この数値、動向を見る限り、介護報酬改定が厳しくなるというより、「貸与対象から買い取りとなる流れ」が、間違いなく強くなるはずだ。
最後に、「令和5年介護事業経営実態調査」における調査項目においての重要な変更点を挙げることとする。
⑥物価高騰対策に関する項目
⑦介護職員処遇改善支援補助金に関する項目
⑧特別損益に関する項目
⑥⑦は説明の必要はないと思う。
しかし、⑧については、特別利益の実態を把握するため、「本部から事業所への繰入」が調査項目として追加されている。また、特別損失のうち本部への繰入額についても本来除外すべきものを適切に除外することが求められている。
この趣旨は、各事業者や法人本部との内部取引を明確化し、事業単位の適切な利益把握と、これが従業員へ適切に還元されているかを把握することに他ならないのだ。
ついに、単に収支差率や人件費割合という話ではなく、その数値の中身をより厳密に見ていくのだという財務省、厚生労働省、介護給付費分科会においての決心が、この調査項目の変更点に現れていると私は考える。
今回もブログ「旗本雑居帳」をお読み頂き、ありがとうございました。次回のブログもお楽しみに❗👍️
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