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株式会社デジタルハーツプラスの取締役を退任しました

デジタルハーツで異能人材を発掘してきました。

経済産業省を2018年7月に退職して、株式会社デジタルハーツホールディングスに入社。最初は営業部に配属してもらい、ソフトウェアテストの案件開拓を行いました。

最初に受注した案件は、ドリンクメーカーのキャンペーンサイトの画面崩れ検証の仕事。38万円。

スタートアップ向けの新商品を企画して、グイグイ突撃したら新規受注を獲得できました。最初は安価に小さく入れば、スタートアップの成長に伴いお仕事も増えていくでしょうということで、なかなか良い狙いの付け所だったと思います。営業の仕事は性に合って楽しかった。

そんなことをやりながら、人材発掘のために引きこもり支援団体を巡りました。

めっちゃ凄い異能人材がたくさん埋もれているのに、人材を再配置する仕組みがないから、埋もれたままになっている。

デジタルネイティブなゲーマー人材にぴったりな、サイバーセキュリティ領域にチャレンジしてもらう。深刻な人材不足だし、いけるんじゃない?

最初はセキュリティの専門家から、「そんな簡単にセキュリティ人材が育つわけないでしょう。200人ぐらい育成して、モノになるのは1人ぐらいですかね」と冷笑されました。

就労困難性を抱える人材の発掘育成、すなわち「異能が活躍するプラットフォーム」というコンセプトで2019年10月に子会社を設立して代表に就任し、2022年5月からは取締役として関与してきましたが、2024年3月末で退任する運びとなりました。

異能人材との出会いを通じて

ということで、2018年7月から約6年間、引きこもり人材の発掘採用に取り組んできました。

新規採用で50人ぐらい、ゲームデバッグからのキャリアシフトも入れると200人ぐらいと関わってきました。オンライン講座では1000人以上のリスキリングに関わりました。

私が適当に喋った一言がきっかけで、長い引きこもりから脱して活躍している人がいるというのは本当に嬉しい。逆にいうとたったその程度のことしかできていない。それ以上に、面接で落としてきた人も沢山いて、一時期はずっと思い悩んでました。

結局は自分の都合、会社の都合でやれることをやっているだけでしかなく、誰もを救うことが出来る訳じゃない。

あるとき、育て上げネットの研修を経てインターン実習に来てくれた人は、10年引きこもってて、一念発起して働こうとして100社ぐらいに履歴書を出したけどどこも面接すら進めなくて、ようやくのチャンスだった。

なかなか良いやつで、グループワークでも一生懸命に議論に参加していた。
その時の採用枠は決まってて、他も優秀で、結局、相対比較で彼を採用することは出来なかった。

一人ぐらい多めに取ってもいいんじゃないかと最後まで悩んだけど、そしたらこっちのやつはどうなるんだとキリがなく、やっぱり仕事として、経営者として、温情で計画を歪めてはいけない。

インターン実習の最終日では、色々話した。本人曰く、とにかくチャンスが貰えて嬉しかった、自分は何となく、高校の途中から行かなくなって、そのままズルズル、遅れれば遅れるほどプライドが邪魔してゲームに逃げて、一念発起してゲーム機を捨てたり、また買ったり、親と喧嘩したり、避けたり、コンビニも夜中にしか行けなくなったりして。

久しぶりに社会に出てきて、満員電車に乗って、研修を受けて、色んな人と話して。やっていけそうな気もするけど、まだよく分からない。でもこうやって動いて行けばいいと分かった。ここで働けなくても、自分は大丈夫な気がする。きっかけを貰えて良かった。

そんなことを語っていた。事前の面談の時よりもスッキリしたいい目をしてた。

絶対取ってくれ!と食らいつくわけではない、就活という椅子取りゲームでも遠慮してしまう繊細さ。

なんて、いいやつなんだ。

今でも採用しなかったことを悔やんでいる。でも、新しい拠点の立ち上げで、全員が即戦力で活躍してくれないと次に続けられなくて、ギリギリでやってるので、やっぱりここで判断を緩める訳にはいかなかった。

同じく、そのインターンの最終日。

参加者達に、自分以外で誰が凄いか聞いたら、ほぼ全員が名前を上げた女の子がいた。

彼女は面接恐怖症で一言も話せない人だった。

就労困難人材を積極採用するソーシャルファームの話を知り、この機会を掴みたいけど、面接では一言も話せないんです、という手紙を貰って、チャット面接を経てインターンに参加してもらったら、面接以外では全く問題なくて、周りもビックリの実力。

採用後、凄い勢いで仕事を覚え、脆弱性診断チームの欠かせない戦力になり、早々とソーシャルファームから親会社に転籍して大活躍している。なんと、次の戦力を強化するための講師のリーダーを担ってもらうまでに成長した。

「面接」では喋れないけど、業務内容の講師なら人前でも話せるらしい。心療内科の問診も「面接」に近いので話せないから病院には行くことができず、診断名もつかない困り事を抱えながらも、自分の力を発揮できる居場所を見つけて、活躍している。

他のメンバーも国家資格を取ったり難しい案件で結果を出してくれたり、頑張って次に繋げる仕事をしてくれている。

思った通り、凄い奴らがたくさんいるじゃないか。彼ら彼女らとの出会いを通じて多くを学ばせてもらった。

やればやるほど、辛い

それでも、やっぱり、出来なかったことについて考えてしまう。

沢山、採用しなかった人達がいて、時々その人達のことを思い出す。

異能活躍社会なんて、全然出来てないじゃないか!オレも雇ってくれよ!ってクレームを浴びせられたならまだ救いがある。

自分からの批判には逃げ場がないので、辛い。

お前、もっとできただろ。まだ、こんだけしかやれていないのか。

しかし、そもそも、自分には全ての人を救うことが出来るという考えこそが傲慢そのものだろう。

自分にできることはきっかけの提供でしかない。本人がそのきっかけで活躍したとしても、それは自分の手柄ではなくて、本人の真の実力が発揮されたに過ぎない。

あるとき、息子が引きこもり状態にあると相談を受けて、紹介されて話してみたら良いやつだったので研修に入れて、今では立派にサイバー人材として活躍している子がいた。

久しぶりにたまたま職場で遭遇したので嬉しくなって「元気!?」と挨拶したら「えーっと、誰でしたっけ?...あー、ども。」という超絶薄いリアクション。

何故かとても救われた。

心のどこかで感謝されると思ってたんじゃないの?それって傲慢なんじゃないの?っていう心の声が聞こえてきた。

本人がいま活躍してるのは紛れもない本人の実力でしかなくて、きっかけ役なんて、忘れ去られるぐらいで丁度いい。

感謝されるためにやってる訳じゃない。

他人のためではなくて、自分のためにやってるんだと思うようになって、少しは悩みが軽減された。

やれることは小さいけど、それでも、自分のエゴを貫いてやりたいことをやっていく。大企業の中で新規事業を興して子会社を設立するとか、取締役になるとかは、実現のための手段であって、やりたいことを実現するための手段はたくさんある。あとは、できるまでやるかどうか。

2022年に宇宙輸送(ロケット)の会社を設立し、最初は一人で始めましたが、今日、11人の社員が入社し、43人にまで増えました。宇宙開発が忙しいからといって、異能発掘の志を忘れたわけではありません。

10年間の引きこもり生活から脱してインターン実習に来てくれた彼のことは一生忘れない。

この国に新しい産業を創る。多くの人が自らの才能を発揮して、付加価値と雇用を生み出す。未来を創る。

これは紛れもない、私のエゴです。

誰もがやりたいことに没頭する社会を創ります。

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