私がすべての選挙を取材しない理由

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●行きたくても全部には行けない━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「私の地元で面白い選挙が始まります。個性的な候補者が出るようです」「素晴らしい人が立候補してくれます。一度取材してもらえませんか」
「自分で選挙に立候補することにしました。ぜひ取材に来てください」
「今やっている、あの選挙を取材には行かないのですか」

多くの人から嬉しいお声がけをいただく。選挙は毎週のように日本のどこかでやっているため、とてもじゃないが自分一人では情報収集が追いつかない。みなさんからの地元情報や内部情報提供は大歓迎だ。

しかし、こうした声をかけてもらうたびに申し訳なく思う。そして、ときどき深い悲しみで落ち込む。私自身は毎日選挙取材をしていたいくらい現場が好きだが、体は一つしかない。物理的にすべての選挙を自分で取材することは不可能だ。そのため、実際に取材に行く場合には、選挙を絞らなければならない。

そもそも日本は選挙期間が短すぎる。

ときには例外もあるが、通常は最短の町村議会義員選挙が5日間。最長でも知事選や参議院議員選挙の17日間。そのうえ事前運動は禁止されているため、「法令遵守」を心がける新人候補になればなるほど告示日前の政治活動には慎重になる。立候補の準備を誰にも知られないように進める人もいる。

新人候補は初めての選挙だから情報が少なかったり、発信に不慣れだったりすることが多い。立候補にあたって各メディアや団体からのアンケートに真面目に答えようとすれば初動も遅れてしまう。そのため告示日当日はまったく活動できない候補者も少なくない。

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次の取材につなげたいと思います。よろしくお願いいたします。