
有機栽培のキャベツは害虫が少ないことが判明!英国研究チームの成果について
一般に、農薬の使用が制限されている有機栽培では、害虫の被害が増えると考えられています。
ただそれとは反対に、
「自然に近い状態で栽培された野菜に虫はつかない」
「害虫が増えたのは化学肥料のせいだ!」
といった意見も多く存在します。
はたして、どちらが正しいのでしょうか?
簡単に結論は出せませんが、この問題に取り組んだ研究がありましたのでご紹介しましょう。
タイトルは、「Varying responses of insect herbivores to altered plant chemistry under organic and conventional treatments」です。
ICL研究チームの取り組み

研究に取り組んだのは、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の研究チーム。
ICLはロンドンの理工系大学で、2023年の世界大学ランキングでは第10位ととても権威ある教育・研究機関です。
この研究では、有機栽培と普通の栽培でキャベツを作り、キャベツの大害虫である「コナガ」という種類のガの産卵数を比較。
コナガの産卵数が多いキャベツほど幼虫に葉っぱを食べられてしまい、害虫に弱いということになります。
それでは、結果を確認してみましょう。
結果① 有機栽培のキャベツはコナガの産卵数が少ない

実験の結果、有機栽培のキャベツはコナガの産卵数が少ないことが分かりました。
Plutella xylostella laid significantly more eggs on plants fertilized with ammonium nitrate, compared with those fertilized with chicken manure or John Innes fertilizer.
しかし、なぜ有機栽培のキャベツは害虫に強くなるのでしょうか?
害虫はキャベツに含まれる窒素成分が大好き
窒素肥料として、有機栽培では有機肥料を、普通の栽培では硝酸アンモニウムを使っています。
有機肥料にくらべて、硝酸アンモニウムは即効性がある肥料です。
そのため、硝酸アンモニウムを与えられたキャベツは生育が早い代わりに、窒素成分をたくさん含む体に。
害虫は一般に窒素成分を多く含んだ野菜を好むことが知られているので、今回の実験でもコナガは窒素を多く含んだ普通のキャベツを選んで産卵したと考えられます。
結果② 有機栽培のキャベツは機能性成分のグルコシノレートを多く含む

グルコシノレートはキャベツを含むアブラナ科野菜に含まれる物質で、体内でイソチオシアネートに変化し、ガンの発生を抑制する機能性成分として注目されています。
これまでの研究で、有機栽培によりグルコシノレートが増えることが知られていましたが、今回の実験でも同様の結果が得られました。
普通栽培のキャベツに比べ、有機栽培のキャベツはグルコシノレートを3倍含んでいたとのことです。
Differences in glucosinolate concentrations were substantial, with up to three times greater concentrations in organically fertilized plants.
有機栽培によって機能性成分グルコシノレートが増える理由は、いまだ研究途中
なぜこのような結果になるのか、研究が少ないため結論は出せません。
ただ、植物の中の窒素成分が少ないほどグルコシノレートが増える傾向にあるようです。
有機キャベツのメリットについて

これまでの結果をふまえて、有機栽培のキャベツのメリットをまとめました。
消費者メリット
残留農薬が少ない
機能性成分のグルコシノレートが豊富
生産者メリット
コナガに対する農薬の使用が減り、経費を削減できる(可能性がある)
有機栽培という付加価値により、青果物を有利に販売できる
この研究結果は2007年と2008年にイギリスで行われたものです。
かならずしも現在の日本で同じ結果が得られるとは限りませんが、有機栽培の可能性を感じる研究でしたね。
この記事が、皆さんの参考になればうれしいです。
それでは!
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