【ショートショート】ホテル屋サカキの命令違反「メイド略奪」
「メイドのイエリです」
坂木道夫のなかで、眠っていた向日葵が一瞬のうちに開花した。一目惚れだった。
晩餐会で出会ったイエリは、知的で笑顔が眩しく、清楚なのに少し傲慢で、それでいて外見がストライクだった。
――この出会いは運命に違いない。
イエリの雇用主を前にして、坂木は一歩も引かない覚悟を決めた。
「メイドさんを私にください」
口から出た言葉は明らかに説明不足で、まるで、結婚を決意した男が、相手の親に認めてもらおうと足掻いているかのようだった。
「そんなさぁ……お嬢