ライブ感がある学びを!
(今回は医学専門書の話です)
1月の終わりに、地区の薬剤師会で『患者さんを副作用から守ろう~薬物動態の活用』という研修会をやらせてもらいました。
私はグループワークで使うスライドと練習問題を作りました。処方内容を薬物動態を使って評価し、患者さんの相談にどのように答えるか?という問題を、自分の薬局での出来事をデフォルメして(個人情報に配慮する必要がありますので)作りました。グループワーク終了後、研修を一緒に進行してくれた仲間は楽しそうな顔で言いました。
「やっぱり実症例はいいなあ」
医療は、目の前の患者さんから学ぶ職種だと思います。もちろん、理論を学ぶことは大切です。でも、医療現場で起きたこと、悩んだこと、疑問に感じたことを確認・評価して次に生かすというサイクルを回すことが一番のトレーニングのように思います。
『薬の上手な出し方&やめ方』という本を読みました。本書は、総合診療という医師向けの情報誌で連載されていた、『もやもや処方の処方箋ーカンファレンス de ベスト処方・ベター処方』をベースに編集されたものです。よって、医師向けの書籍かもしれませんが、これは地域医療、プライマリケアに関与する薬剤師に読んでほしいと思います。
・・・と、つい熱く語りたくなったんですね。一気に読みました。なぜだろう?と考えた時に、やはりカンファレンス(会議)を追体験させてもらえる内容だからなんです。自分ならこの症例どう考えるかな、と思いを巡らせながら読むのは楽しいです。
自分一人でも学ぶことはできますが、三人寄れば文殊の知恵という言葉があるように、集まって学ぶことは楽しいです。それを感じることができる本でした。また、3章、専門医が教える薬の始め時・やめ時は処方提案後のモニタリングに活用したい内容でした。
すごい!すごい!と感動するだけではいけません。薬剤師として、もやもやする処方にどう関わるか、考えながら読みました。以下に読んで思ったことと、参考にしたいことを引用改変しながら羅列します。
・薬歴管理を生かす→地域の患者さんの薬に関して、処方背景、処方歴、服薬状況を把握しているのは保険薬局の強み。よくわからない薬なら減薬を提案することがあってよいのかも
・減処方のプロトコル(直訳気味ですが)を生かす
(JAMA Intern Med. 2015;175(5):827‐834. PMID: 25798731)
(1)患者が現在服用しているすべての薬物と、それぞれの理由を確認
(2)個々の患者における薬物誘発性の危害の全体的なリスクを考慮
(3)現在または将来のリスクとベネフィットに関して各薬物を評価
(4)利益と害の比率が最も低く、有害な離脱反応または疾患リバウンド症候群の可能性が最も低い薬剤を優先して中止
(5)中止レジメンを実施し、転帰の改善または副作用の発現について患者を綿密に監視する
上記に患者の思いや価値観を加えて減処方する薬剤の順位付けを行う
・アンダーユーズの理由を考える、本当に必要な薬なのか考える
(Br J Clin Pharmacol. 2008;65(1):130‐133. PMID: 17578478)
5剤以上のポリファーマシー患者の42.9%にアンダーユーズが存在する
・時間経過と今後の受診の目安を丁寧に説明する(これに対して、私はどういう説明を受けたのかを確認するようにしている)
・予防薬が足を引っ張ることもある
・『年のせい』は早期閉鎖ワード(診断エラーを引き起こすバイアスの1つ)
・対症療法薬→患者さんからやめどきのアドバイスを求められることが多い。「先生に聞いてください」は思考停止で、薬剤師なりの意見とその根拠を提示する。もしくは疑義照会なりトレーシングレポートなりで主治医とつなぐ。
・複数診療科を受診している患者さんに、全体を診るかかりつけ医がいないときに薬剤師はどうする?
・代理受診はアラート、通院困難はプロブレム
・ノーアセスメント、ノープラン→(処方の)しまい忘れ注意、そのプロブレムは今も生きているのか?を確認
・常に、なぜ?どうして?これでいいの?を考え続ける
・せん妄に対する薬物療法は薬物的抑制
・地域の関係性が処方をつくる
良い刺激を頂きました!
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