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近未来の充電ステーション

こんにちは、コーイチです。
今回は、ほぼすべての自動車メーカーが電気自動車に関して見込む急速な成長を背景に、急拡大中の充電ステーションを見ていき、今後の充電ステーションはどうなっていくのか考えていきたいと思います。

1.日本の充電スポットの状況

 ガソリンスタンドの数が減少している一方、ここ数年で充電スポットは全国的に急増してきています。
 EVを販売しているカーディーラーはもちろん、コンビニやスーパーマーケットをはじめ、日常よく訪れる場所にも充電器が数多く設置されています。
 また、高速道路のサービスエリアや道の駅など、長距離移動時の幹線道路沿いにも整備されており、休憩時間や買い物ついでに充電する人も多く見られます。
 全国の充電スポット数は2019年には、1万8千箇所以上にのぼり、ガソリンスタンド数の約6割に匹敵するともいわれています。

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(出典: 一般社団法人次世代自動車振興センター
                 「EV/PHV普及の現状について」より)

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(出典: 経済産業省「自動車を取り巻く現状と 電動化の推進について」より)

 政府は去年、2035年までにすべての新車をEVやハイブリッド車、燃料電池車などの電動車にするという目標を掲げましたが、右肩上がりで増えていたEV用の充電スタンドの数が2020年度に初めて減少しました。
 その要因の1つは“老朽化”と言われています。
 充電スタンドの耐用年数は、8年前後が目安とされていり、国内の多くの充電スタンドは、2010年代前半に国の補助金制度を活用して設置されましたが、その時の充電スタンドが続々と耐用年数を迎えているということです。
 また、耐用年数を迎えるタイミングで撤去に踏み切る自治体や民間事業者が相次ぐのは、充電スタンドの数に対して、EVの普及が追いついていないという事情があります。

 充電スタンドの整備などを手がける民間の事業者「e-Mobility Power」は、EV・PHEVの台数が今の4倍を超えないと事業として軌道にのらないのではないかとみています。
 また日本には、火災を防ぐためガソリンの給油口から一定の範囲には引火しやすい機器などを置いてはいけないという規制があり、都市部の敷地が狭いガソリンスタンドでは、給油口と充電スタンドの間に一定の距離を取るのが難しく、ガソリンスタンドでの併設も困難な状況です。
 仮に設置できたとしても、1台1台の充電に時間がかかるため、採算をとるのは難しいといった見方もあるようです。

2.海外の充電スポットの状況

 一方、世界を見渡すと、電動車の普及に力を入れているドイツは去年、ガソリンスタンドに充電スタンドの設置を進める方針を打ち出すなど、充電インフラを整えるための対策を次々と打ち出しています。

 また、アメリカでは1990年代から大気汚染改善を目的として、電気自動車の普及を進め、2009年からは充電インフラ整備のための大規模な実証実験として、米国エネルギー省の助成を受けた、充電設備メーカーのECOtality社の「The EV project」がスタートしています。
 このプロジェクトでは、電気自動車と充電設備の利用実態を調査するために、対象車種を所有するユーザーに対して、家庭用充電器を無料で配布しています。
 対象地域は、カリフォルニアやワシントンDCなどの米国の主要都市を含む、10の州と1つの特別区で、これらのエリアで家庭用の充電設備が無料で導入されています。
 「The EV project」によって、家庭用充電器設備が約8,000ヶ所、商業施設等の充電設備が約5,000ヶ所、急速充電設備が約200ヶ所整備されました。

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 (出典:一般社団法人次世代自動車振興センター「The EV project」より)

 2019年からは、電気自動車用充電サービス会社の「Volta(ボルタ)」が、全米初の無料急速充電設備のサービスを開始しています。
 このプロジェクトでは、充電設備の中でも最大級の出力である直流急速充電器が採用されています。
 直流急速充電器では1時間で約560キロ分の電力が充電可能で、無料となるのは、約280キロ分に相当する30分間の充電です。
 無料サービスの目的は電気自動車の利用者増加で、無料分は充電器に設置されるデジタル広告の収入によってまかなうビジネスモデルになっています。

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                        (出典:Volta Charging より)
 更に、EVを先導する自動車メーカーによって、新しい充電スポットの開発が進んでいるようです。

3.Tesla Supercharger

                    (出典:CNBC youtubeより)

 昨年「Tesla」は、レストランサービスの分野における自社ブランドの新しい商標を申請しました。
 これは、イーロン・マスクCEOをはじめとする同社幹部たちが、少なくとも2017年から公に議論してきたアイデアを実現するために、いよいよ準備が整いつつある可能性を示しています。
 「Tesla」は「レストランサービス、ポップアップレストランサービス、セルフサービスレストランサービス、テイクアウトレストランサービス」のカテゴリーをカバーする3つの新しい商標を申請しています。
 そのアイデアは、EVの充電ステーションを、食事も提供するフルサービスのコンビニエンスストアにするというものです。

 「Tesla」は、このアイデアの縮小版として、カリフォルニア州ケトルマン・シティのSuperchargerステーションにあるラウンジのようなものを作りました。
 ケトルマン・シティのSuperchargerステーションには40基の高速充電器があり、休憩所は24時間365日営業しており、食事や飲料、子供の遊び場、ペットエリア、家族向けの屋外スペースなどが利用できるようになっています。
 入場にはカーナビに表示されるコードが必要なため、ラウンジの利用は「Tesla」のオーナーに限定されています。
 営業時間中は、「Tesla」のエスプレッソバーでコーヒーを飲みながら充電したり、自動販売機でスナックを食べたりすることができます。
 またオプションとして、ルディクロスモード(エスプレッソのダブルショット)とオートパイロット(バリスタの選択)も用意されています。
 その他、Tシャツ、帽子、ジャケット、さらにはTesla Supercharger携帯電話充電器などの「Tesla」グッズを購入しています。
 エスプレッソバーはガラスの壁で仕切られ、ソファチェアや小さなベビーベッド、休憩室があるラウンジのような部屋になっており、館内では無料Wifiが利用できます。

 イーロン・マスクCEOは2018年1月、このコンビニエンスストアのアイデアを発展させたレストランのコンセプトを、Twitterで「LAで新たなTesla Superchargerを設置する場所の1つに、昔風のドライブインにローラースケートとロックを組み合わせたようなレストランを併設するつもりです」とツイートしました。
 「Tesla」のSuperchargerレストランは、そこまで革命的なものではありませんが、人々に新しいクルマを購入するための新たな誘引構造を提供し、EV業界の競争に創造性をもたらすものと思われます。
 近未来的な施設とレトロなデザインの融合、1号店のオープンが楽しみですね。

4.Electrify America

               (出典:Electrify America youtubeより)

 「Volkswagen」が、ディーゼル車の排ガス不正問題に関する米国の規制当局との和解の一環として設立した「Electrify America(エレクトリファイ・アメリカ)」は、2025年末までに米国とカナダにおける電気自動車用急速充電ステーションの数を倍増すると2021年に発表しました。
 この取り組みが成功すれば、それまでに1800カ所の急速充電ステーション(充電器1万台)が設置・運用されることになります。

 また、2022年3月には「未来の充電ステーション」と呼ぶべきデザインを発表しました。
 そのフラッグシップステーションには、待合ラウンジ、バレーサービス、イベントスペース、コーヒーなどが備わり、充電用にも利用できるソーラー・オーニングなどの機能を備えたステーションが予定されています。

 電気自動車への充電は、ガソリンのように簡単では無く、時間もかかるため、「Electrify America」のステーションでは、EVの充電にかかる時間の長さを考慮し、快適性、安全性、アメニティーを中心に構成されています。
 「Electrify America」は、「従来のガソリンスタンドから電気自動車のライフスタイルへの移行をより魅力的にする」ことを目標に掲げており、社長兼CEOであるジョバンニ・パラッツォは声明で、「これらの新しいデザインは、超高速で信頼性の高い沿岸から沿岸までのネットワークを基盤に、お客様の充電体験を高めるのに役立つでしょう」と述べています。

                                                          (出典:ABB EV Charging youtubeより)

 「Electrify America」の現在のデザインで最も注目すべき点は、ソーラーパネルの日よけを取り入れたことです。
 この日よけは、お客様を日差しや悪天候から守ると同時に、ステーションの運営に必要な電力を供給するという2つの効果があります。
 現在、全国100カ所の充電ステーションで、400〜500台の個別充電器にソーラーパネルの日よけを追加している最中で、すでに、カリフォルニア州ベイカーとサンタクララにある同社の主力充電ステーションにソーラーキャノピーを設置しています。

 リニューアルした充電スタンドのカスタマーラウンジには、イベント専用スペースを設置しており、更に、夜間に充電するEVユーザーに安心感を与えるため、監視カメラや照明が設置される予定とのことです。
 また、ショッピングセンターの近くに設置されるステーションでは、バレットチャージやカーブサイドデリバリーのオプションが提供されるかもしれないとということです。
*バレットチャージ:スタッフが変わりに充電しておいてくれるサービス
*カーブサイドデリバリー:車まで充電器を持ってきて、充電してくれるサービス

 最後に、「Electrify America」は、送電網へのエネルギー負荷を管理し、可能な限り余分な太陽光エネルギーを回収するために、全米で150の充電器にオンサイト蓄電システムを配備すると発表しました。

 近い将来、日本にも登場するかもしれませんね。

5.最後に

               (出典:Electric Autonomy youtubeより)

 石油会社メジャーの「Shell」も、EV充電時間を有効活用できる多機能の充電ステーションを計画しており、既存のガソリンスタンドに代わり、電力と休憩スペース、郵便物の預かりサービスなどを提供するなどのビジネスチャンスを見出しています。

 また、「車を止めてから充電する」というこれまでの常識をひっくり返すような研究も始まっています。
 東京大学のチームは、道路上に磁気を発生させ、磁気に反応するコイルを積んだ車がそこを走ると、電気が発生するという仕組みを研究しています。    
 このEVを走らせながら充電させる実験では、磁気が発生している道路を30メートル進めば、350メートル走行できる分の電気を充電できるということのようです。
 この「移動しながらの充電」は、フィンランドやノルウェイ、スペインなどの海外ではすでに公道上での実験が始まっています。

                    (出典:Matter youtubeより)

 以前記事に書いた、中国の自動車メーカー「NIO」は、交換式バッテリーを採用しており、今後はどのような方式がスタンダードとなっていくのか、今後どのような充電ステーションが望まれていくかは、充電に要する時間や手法によって変わってくるかと思います。

 日本のガソリンスタンドは、コンビニやカフェ、美容室などを併設した展開を見せていますが、充電が今のように時間がかかるのであれば、このような複合的なステーションも望まれるのではないかと思います。

 日本の法整備が望まれますが、これからの充電ステーションは、立地やニーズに合わせた複合化が重要になるかと思っています。
 充電ステーションは、もう単なるインフラではなく、楽しめる施設になっていくのかもしれませんね。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。          
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