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自然の中の宿泊施設

こんにちは、コーイチです。
今回は、現在新しい変わった施設がぞくぞくとオープンしている「グランピング」施設を見ていき、今後も引き続き成長していくのか、またいつまでこのブームは続くのか考えていきたいと思います。

1. グランピングとは

 「グランピング」とは、英語で“魅力的な、華やかな”などを意味する「Glamorous(グラマラス)」と「Camping(キャンピング)」を組み合わせた造語で、直訳すれば「魅力的なキャンプ」という意味になります。
 「グランピング」が日本で広まり始めたのは、2005年、インターネット上において英国での「グランピング」の検索が確認されたときからと言われています。
 以来、「グランピング」は欧米で非常に人気となり、日本でも急速に浸透しています。
 現在、英国には「グランピング」を自称する施設が多数あり、多くは牧歌的な観光地において手ごろな価格で楽しめるものとなっています。
 その一方で、「グランピング」のキーワードが誕生する前から、カナダやアフリカなどには富裕層をターゲットにした高級なアウトドア・アドベンチャーテイストのリゾートが存在していました。
 富裕層向けの施設は、文明社会から隔絶された自然の中に設けられており、「グランピング」を自称していないものも少なくありません。
 現在では設備の質やターゲット、「グランピング」を自称するかどうかに関わらず、キャンプテイストの宿泊施設は第三者から「グランピング」と呼ばれており、海外ではすでにキャンプよりも高い人気を誇っています。
グランピングの定義は主に3つとなります。
とにかく豪華であること(シャワートイレや豪華なベットは必須)
テント(又はテント的なもの)内からでも自然を感じることができること
ストレスのたまらない高級ホテルにのような作り
 この定義より、キャンプと「グランピング」は自然を楽しむということ以外、根本的にそれぞれの定義が違うと言えます。

 キャンプをするにはテントや寝袋、食材など必要な物を持参して、テントの設営や食事の用意は自分で行うのが一般的ですが、キャンプ初心者や、虫が怖い、シャワーなども入りたいし、キレイなトイレも欲しいなどの人でも、「グランピング」施設では、気軽に豪華なキャンプを楽しむことができるので、人気を博しているのかと思われます。
 「グランピング」施設では、テント内にエアコンが設置され季節を問わず利用できるところや、敷地内に温泉やアスレチック、収穫体験ができる農園などが用意されている施設や、食事は準備から調理まですべておまかせ、または準備と後片付けはおまかせで調理は自分で、というようにアレンジが可能な施設も多く、豪華なアウトドア料理のケータリングを行っている施設もあります。
 キャンプにおいて初心者が不便、難しいと感じるポイントをサポートしてもらえ、豪華かつ快適に過ごせるのが「グランピング」の良いところといえます。

2. グランピングの始まり

① 源流(諸説1)

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 (出典:travel.co.jpより)

 「グランピング」のルーツはモンゴルにあると言われており、モンゴルの遊牧民が現在も使用している「ゲル」こそが、グランピングの始まりとされています。
 「ゲル」は家畜とともに草原を移動して生活する遊牧民が住む移動式住宅で、一見テントのような家の中で生活するスタイルとなります。
 確かにグランピング施設を見るとテントでもなくハウスでもないような造りとなっており、その造りは「ゲル」からきていると言われています。
 「グランピング」のルーツには諸説ありますが、これが一番有力とされています。

② 源流(諸説2)

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(出典:teestyle.jpより)

 ヨーロッパ貴族の文化の一つが狩猟で、1800年代後半から欧米の白人が狩猟を目的にアフリカを訪れるようになりました。
 こうした人々はホワイトハンターと呼ばれ、1700年代に入り込んだ英国の探検家が、その起源とされています。
 1960年代頃から動物愛護思想などの高まりもあり、アフリカ観光の主流は狩猟から写真撮影へと変わり、そして1960~1970年代に掛けて、観光客向けに常設のロッジが多く作られました。
 2000年代初頭には、すでに「ラグジュアリーキャンプ」といった言葉が使われ、富裕層向けに豪華な「サファリロッジ」が登場していました。
 この「サファリロッジ」も現在の「グランピング」の源流の一つと考えられます。
 施設はゆったりとした空間に贅沢な調度品を備え、落ち着いた色使いとクラシックな設えが中心で、これはアフリカ探検や富裕層向けの旅行の歴史のうえに確立された様式と言えます。

③ 発祥の地

(出典:High Oaks Grange youtubeより)

 2005年に「グランピング」のキーワードを生んだとされるのがイギリスです。イギリスではロンドン郊外を中心に全土で250を超える「グランピング」スポットが展開されています。
 とりわけ施設はイングランドとウェールズ地方に多く分布しているのが特徴で、特に「グランピング」施設の多いコーンウォール、サマセット、ノーフォークは海があり、自然の豊かな地域として観光業が盛んです。
 イギリスの「グランピング」の特徴は、田園・農村地帯ならではの牧歌的な雰囲気にあり、宿泊施設はハットと呼ばれる非常に小型の小屋、古風な馬車風トレーラー、ゲルなどが主流で、いずれもファンシーな色使いや装飾が見受けられ、可愛らしい雰囲気が持ち味となっています。
 演出はイギリスの牧歌的な雰囲気に馴染み、また、大半の施設は手の届く価格で宿泊できるため、のんびりとした風光明媚な場所への気楽な旅といった性格が強いと言えます。

3. ユニークな施設

 ホテルと変わらないものなど、様々な施設がありますが、今回はその内の一部を見ていきたいと思います。
① INN THE PARK沼津

(出典:Phoenix Films inc. youtube)

 泊まれる公園「INN THE PARK」は静岡県沼津市の林間学校に利用されていた「沼津市立少年自然の家」を、現代的にリノベーションした宿泊施設となります。
 土地の広さは代々木公園よりも広く、解放感があり、ホテルのようなアメニティを完備した宿泊棟・天窓から景色を堪能できるドームテント・森の中に浮かんでいる感覚が楽しめる吊テントの3種類の宿泊タイプがあり、それぞれ違った形で広大な自然を感じられます。
 夕食には季節の地場野菜がふんだんに使われており、自分自身で炭火調理する料理もあります。
 また、公園やサロンで遊べるアクティビティグッズなどの貸し出しがあるほか、施設の象徴ともいえる芝生広場ではナイトシアターや音楽イベント、青空の下で楽しむ写真教室、ヨガ、アロマ、ネイチャークラフトなど地元の有識者や講師を招いたワークショップが開催されています。
 2022年3月には、リニューアルオープンした国営公園『海の中道海浜公園』の「光と風の広場」の中心に「INN THE PARK 福岡」が開業しました。
 こちらは、「巨大球体テント」をはじめとした4タイプの宿泊施設、昼と夜で表情が異なるレストラン、温浴施設、バーベキュー場、ラウンジからなる複合施設となっています。

② グランオーシャン伊勢志摩

(出典:glamp ocean youtubeより)

 125社ある伊勢神宮内宮の社のうち、もっとも海辺に近い神社「粟皇子神社」が見守る遠浅で穏やかな海が広がるプライベートビーチにある「グランオーシャン伊勢志摩」。
 「グランオーシャン伊勢志摩」で楽しめるのが、プライベートビーチでのシーサイドグランピングです。
 ドーム型の客室内には、ホテル並みに充実した設備とアメニティがそろい、オールシーズン快適に過ごせるよう冷暖房も完備しています。
 客室タイプはさまざまで、波打ち際の「シーサイドデッキ」や海をテーマにした「海の棟」、白をベースにした「白の棟」など、客室ごとに異なるコンセプトやテイストを楽しめるのもポイントとなっています。
 海の棟では、目の前に広がる伊勢湾のオーシャンビューを楽しめ、新たにオープンした「ベイテラス」は、森に包まれる静かなロケーションで、プライベート感が高く、都会の喧騒から離れて落ち着いたひとときを過ごせる施設となっています。
 新設された9棟全てのドームには、プライベートデッキを完備しており、周りを気にせずリラックスでき、テラスからは海を見晴らすこともできるほか、海との境界線が一体になったかのような感覚を味わえるインフィニティプールも併設しています。
 ディナーには、贅沢食材をふんだんに使用したプレミアムバーベキューが用意されており、シーサイドグランピングにはリキュールなどのドリンクを注文できるビーチハウスも併設しています。

③ GLAMPROOK しまなみ

(出典:GLAMPROOK youtubeより)

 愛媛県今治市の市街地から来島海峡大橋を渡り、車で15分程のところにある馬島(うましま)は、人口が10人に満たない島で、車で入ることすら許可が必要な特別な島です。
 まるで日常から隔絶された別世界のような「GLAMPROOK しまなみ」は、グランピングとホテルの2種類の客室があり、瀬戸内海の潮流が育む魚介類や地元食材を生かした食事が楽しめる体験型リゾート施設となっています。
 瀬戸内海が誇る大自然に囲まれてのホテル泊やグランピング、ここでしか体験できないアクティビティを体験できます。
 豊かな緑や広い海を間近で見ているだけで、気持ちがおだやかになる、瀬戸内海に浮かぶ「馬島」はのんびりとした、独自の時間が流れている体験が出来る施設と言えます。

④ 星のや富士

(出典:Ronald Lagrone youtubeより)

 2015年10月30日に開業した日本初のグランピングリゾート 「星のや富士」は、日本にグランピングという概念を持ち込んだ、日本初のグランピングリゾートとなります。
 「星のや富士」は山梨県河口湖のすぐ側に位置し、首都圏からのアクセスはとても良く、客室、食事、体験、おもてなしなどの面において、すべてを贅沢を尽くして、日本グランピングの最高峰と言えるものとなっています。
 スタッフは自然に溶け込む制服と、温かいホスピタリティでゲストのグランピング体験をサポートしてくれ、施設の説明や、アクティビティの手配など、丁寧な対応が特徴で、初めてのグランピングでも安心です。
 宿泊するキャビンは全室がレイクビューで、テラスリビングには、冬はこたつ、夏はベットのような大きなソファが置かれ、薪ストーブが設置されているキャビンもあり、キャビンに滞在している時間も、アウトドア気分が満喫できるよう配慮されています。
 さまざまなアクティビティで賑やかなクラウドテラスの「焚き火ラウンジ」や「焚き火 BAR」ではウィスキーやワインを楽しめます。
 樹海と溶岩洞窟を専属ガイドに案内してもらう「樹海ネイチャーツアー」、ヘリ、カヌー、トレッキングを通して樹海の魅力を発見する星のや富士オリジナルツアー「ディスカバー樹海ツアー」などもあります。

⑤ アイスヴィレッジ/星野リゾート トマム

 (出典:星野リゾート トマム youtubeより)

 冬の夜にだけ毎年オープンするアイスヴィレッジ内の「氷のホテル」は、天井も壁もすべてが氷でできており、1日1組限定で、星のリゾートのホテル、リゾナーレトマムまたはトマム ザ・タワーに宿泊の人が氷のホテルで宿泊体験をすることができます。
 アイスリンクでスケートを楽しむのはもちろん、「氷のスイーツカフェ」では氷や雪をテーマにしたスイーツを味わったり、「氷のバー」で本格的にお酒を味わったり、「氷のアトリエ」でキーホルダーやグラスを作る体験が出来たりします。
 また、アイスヴィレッジの展望台からスケートリンクの上を通過する氷上ジップラインがあり、約60メートルの距離を滑りおり、アイスヴィレッジに飛び込めるスリル満点なアクティビティもあります。

4. グランピング業界の動向

(出典:FDomes JP youtubeより)

 全国グランピング協会によると2022年に開業する施設数は過去最多で、全国で200前後になるとのことです。
事業再構築補助金の助成内容が、グランピングビジネスと相性が良く、事業者の参入を後押しする結果となっています。
 同補助金によるグランピング関連の事業採択件数は2021年3月以降で230件以上に上り、アウトドア事業として注目されています。また、関東圏や東海圏では、人口比でグランピング施設に不足感があり、多くの事業者が参入しました。
 また、グランピング大手の2施設目以降のオープンも増えており、今年、20施設のオープンを計画している企業もあるなど、先行事業者による多施設の展開が目立ちます。

 2020年12月時点でのグランピング市場規模は600〜800億円と試算されましたが、2021年以降にグランピング施設は150件以上増加しました。
 2022年1月時点で800〜900億円に拡大していると試算され、2023年までに新たに200以上の施設が加わると、1000億円に達すると見込まれています。コロナ禍に対応できる事業として注目を集めているグランピングが、その事業特性や政府の経済支援策により、市場拡大ペースが急上昇しています。

 住宅業界ではベランダでアウトドア気分を楽しむ生活スタイルを提案し、「ベランピング」という造語も生まれ、飲食業界では、アウトドア用品メーカーとコラボするアーバンキャンププラン、宿泊関連分野では、グランピング専門の予約サイトが急成長し、2020年5月~2021年4月の流通額は約11億円になったとのことです。
 グランピング専門の集客企業の開業計画をエリア別に見てみると、関東圏の案件数の多さが際立っており、案件の8割近くがドームテントを採用したグランピング施設となっています。
 なお、グランピング開発を計画している事業者は、「建設業」・「宿泊業」・「不動産業」・「飲食業」・「保険代理店」・「ビルメンテナンス業」・「中古自動車販売業」・「人材派遣業」・「設計事務所」・「食品小売業」・「食料品卸売業」など多岐に及び、幅広い業界から注目を集めています。

5. 最後に

(出典:Whole Earth Communications youtubeより)

 今回のコロナ禍によるグランピングブームにより多くの人が「グランピング」を体験しまました。
 キャンプの延長、自然の中で豪華に非日常体験をしたいグループもあれば、夏休みの家族旅行ニーズ、さらには数名の仲間や友人で楽しむ「宿泊スタイルのレジャー」としてグランピングを捉える層もあれば、今後は、海外旅行者が「特別な日本」を体験する手段としてグランピングを選択するケースも増えていくかと思われます。
 コロナ感染拡大が終息に向かい、自由に海外旅行が出来るようになれば、グランピング市場は一時的に縮小するかもしれませんが、従来の旅行とは違う新たな市場は確実に形成されたと思われます。
 更に人口が日本の半分ぐらいのイギリスでも2500施設ほどもあるため、日本の市場はまだ飽和しないと考えられます。
 また、ホテルなどの建物の投資と比較すれば圧倒的にコストが安く、初期投資の小ささが「グランピング」施設のビジネス的なメリットと言えます。
初期投資が小さければ、当然、金利や償却費の負担も少なくなり、黒字確保の難易度も下がります。冬季営業ができないケースや悪天候の影響を受けるというデメリットはあるものの、稼働率20%程度から採算を合わせられるといいます。

 今後「グランピング」施設は、コロナ終息と共に旅行市場は減少しつつも、新しい市場(レジャー、インバウンド、ワーケーション等)により、安定的に成長を遂げるのではないでしょうか。
 その土地ならではの特徴を出すのはもちろんですが、他と差別化することが今後はより必要になってくるかもしれません。
 また民間施設だけでなく、地方の自治体、企業、住民などが力を合わせたものを作れば、地域の活性化、地域創生にもつながっていくのではないでしょうか。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。          
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