サガン鳥栖への心ないバッシングに一言(ではないが)言いたい

サガン鳥栖の経営が苦しい。コロナの影響に関係なく大赤字だ。
このニュースを受けて、サッカー界隈からは「経営の失敗」との批判が相次いだ。

これには同意する。予算規模を考えれば、鳥栖の昨今の補強策には無理があった。ありすぎた。僕自身もツイッターで「経営は大丈夫なのか」と何度か疑問を呈したのを覚えている。

しかし、批判の中には冷酷で心ないものがいくつか見つけられた。「大金だして大して活躍できない大物を獲得するのが悪い」「身の丈にあった経営だけしてればいいんだよ」
…大きな反響を得ているものもあった。

僕はこれらに対して一言言いたい。

トーレスの獲得を、そんな冷酷な言葉で全否定するのはやめてほしいと。

フェルナンド・トーレス。殆どの日本人がテレビでしか見たことのないサッカー界の超大物。雲の上の存在。その世界的スーパースターが、小さな県の小さな市にやってきた。それも遊び半分ではなく、チームのために自分の良さを捨て、時には泥だらけになりながら守備に奮闘し、オフではチームや地元への愛着を語った。残留が懸かった大一番では決勝ゴールを決め、スタジアムと一体となり感情を爆発させた。
こんな光景、誰が想像しただろうか。想像どころか、夢にも見なかっただろう。誰一人として。

鳥栖に心ない言葉を浴びせている人々は、トーレスが鳥栖に来ると知ったとき、何も思わなかったのだろうか。上記のような出来事を見て、興奮しなかったのだろうか。多かれ少なかれ、鳥栖への感情がどうであれ、我々サッカーファンは鳥栖に夢を見させてもらった。そう思うのは僕だけだろうか。

「経営が傾いては元も子もない」ごもっともだ。トーレス獲得に対する批判自体は理解できる。肯定はしづらい。
しかし僕は、各クラブがコスパばかり考慮して小粒な補強に終始していた10年前のJリーグに後戻りしてほしくない。
各クラブが「DAZNマネーをいかに低コストで獲得するか」ばかり考えてしまい、(Jリーグは今後の世界展開を見据えて大物選手の獲得に接客的な姿勢を示しているが)それが形骸化してしまう。そんな夢のないJリーグは、魅力に欠ける。

プロサッカーはただのビジネスではない。人々の生活に根付き、夢を与え、生きる活力となるものだ。小さな夢も見れないこんな世の中において、採算度外視で世界的スーパースターを獲得するチームは夢を見させてくれる。明るいニュースを届けてくれる。それが小さな街のクラブとなれば、ますます夢がある。(これは、大都市以外にもチームを作っているJリーグの醍醐味だと思う。Jリーグにしか出来ないと言っては言い過ぎかもしれないが、それに近いところはあると思う)
トーレス獲得によってそれを見事実現したサガン鳥栖を全否定する論調には、この視点が欠けているように思える。

鳥栖の経営は批判されても仕方ない。しかし、トーレス獲得には夢を見させてもらったし、イニエスタとの対決等、Jリーグが明らかに盛り上がった。あのような補強は、経営を傾けたことを指摘しつつも応援していきたいと、僕は思う。

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