森保一が地味に悩んでいそうな、日本代表の中盤の構成
はじめに
現代サッカーにおいて、パスコースを消す守備は基本だ。ある程度のレベルになると、これができないチームは無くなる。
では攻撃側は、パスコースを消された時にどう対処すればよいのか。方法は大きく分けて2つ。
(今回はタイトルにも書いたとおり、中盤に限定して文章を書いていくので、アタッカーやディフェンダーの対処法についてはスルーしてほしい)
パスコースを消された時の対処法
1、パスを回して相手を揺さぶり、隙を見つけてパスを出す
2、ドリブル突破によって自分の前にいる相手を減らし、パスコースを作る
1を多用していた例としては、ザックジャパンが挙げられる。と言えば格好が良いが、実際のところは少し違い、あのチームにはドリブラーが存在しなかったため1しか使用できなかったというのが実情だ。
2は欧州の強豪によく見られる。わかりやすい例だとレアルのトニ・クロースやシティのデ・ブライネ。逆に中盤が、ドリブルが苦手な選手のみで構成されている強豪チームはあるだろうか? おそらく、見つける方が難しいのでは無いだろうか。
少し考えればお分かりかと思うが、中盤の選手がドリブルで持ち上がれるだけで、攻撃の選択肢が格段に増える。
相手にパスコースを封じられる度にパス回しだけで相手を揺さぶっていては疲れるし、何より「パスしかしてこない」と分かっていると、相手はパスコース封じに特化した大胆な守備シフトを敷くことができる。
だから、中盤にドリブルでグイグイ持ち上がれる選手がいるに越したことはないのだ。
そういえばハリルホジッチが以前、原口元気をボランチで起用したことがあった。あれは、これが狙いだったのだと思っている。
日本代表の中盤の問題点
さてここからが本題。今の日本代表のボランチのメンバーを見てみよう。
柴崎岳、遠藤航、橋本拳人、板倉滉
おわかりいただけただろうか。ドリブルが得意な選手がいないのである。
彼らの能力を否定するわけではない。全員優れた選手だと思う。ただ、このメンバーでは、中盤のパスコースを封じられた際、打開策が非常に限られてしまう。
彼らが独力で前に進めないので、毎回前線の南野や堂安が後ろに下がってパスコースを作らなければならない。本来最前線にいるべき彼らが後ろにいるので、自然とチームのバランスが後ろに寄り、ゴール前にいる選手が少なくなってしまう。
日本代表の攻撃が上手くいかないのは、だいたいこのパターンだと思っている。よく「堂安は下がりすぎ!前に張ってろ!」と怒っている人を目にするが、仕方ないのである。堂安だって、得点が欲しいのにわざわざ後ろに下がってくるのだ。なぜならそうしなければチームが前に進めないから。
この問題を解決する24歳の男
そこで、僕は「ドリブルのできるボランチ」が代表に必要だと考える。個人的に推すのは、この記事の表紙を飾っている男、サンフレッチェ広島の24歳、川辺駿(はやお)だ。
彼はジュビロ磐田でボランチとして活躍。ハードな守備と豊富な運動量を武器にする選手だったが、さりげなく攻撃センスも持ち合わせている。現在、広島ではドリブルをはじめとした高い攻撃能力を買われ、攻撃的なポジションで起用されることも多い。そう、彼は日本には貴重なドリブルの得意なミッドフィルダーなのだ。
彼が中盤に入れば、日本代表の攻撃オプションは格段に増えると思われる。
彼を起用する上での障壁
しかし、ここで問題が発生する。そしてこの問題があるからこそ、森保一は川辺の召集に踏み切れないのではないかと思っている。(あくまでも憶測です)
現在、日本代表の中盤は、司令塔の柴崎が絶対的な地位におり、相方は(彼の守備力の低さを介護できる)守備的ミッドフィルダーで構成されている。
現在レギュラーの座を争う遠藤や橋本は、柴崎の相方として適役なわけだ。
しかしながら、川辺には遠藤や橋本ほどの守備力は無い。運動量や攻撃力で勝る分、相手からボールを奪う能力、危険を察知したポジショニングは劣る。
日本代表の中盤において柴崎岳が絶対的な存在である以上、相方には守備力の高い選手が不可欠である。川辺だと、そこが、それだけが、不安なのだ。
システムを替えれば良い?
実は、この障壁は、システムを替えるだけで乗り越えられる。すなわち柴崎と川辺をボランチではなくインサイドハーフにし、その後ろにアンカーを置くのだ。これで守備力の低下はカバーできる。
思えば2010年南アフリカW杯の日本代表は、司令塔(遠藤保仁)、ドリブラー(若き日の長谷部誠)、バランサー(阿部勇樹)で構成されていた。アンカーに誰を置くかはさておき、再びあのような構成を取ってみるのもアリなのではないか。
しかし別問題が生じる
なんとなく予測のついた人もいるだろうが、中盤をインサイドハーフ+アンカーの逆三角形にすると、アタッカーが3人になる。
すなわち、(個人的な好みで選手を選ぶと)
南野 大迫 久保
柴崎 川辺
アンカー
というふうになり、セカンドトップが消えるのだ。代表監督就任以降セカンドトップに拘っている森保一が、これを感化できるだろうか。
南野はサイドの方が向いている(と思う)し、久保もサイドで問題ない。だが、このシステムだと、南野、中島、堂安、久保という日本代表の看板選手4人のうち、2人しか出場することができない。
残念ながらそれは、電通やスポンサーが許さないのではないか。
それに、今でこそ中島と堂安が不調なので上記のようなフォーメーションを組めるが、彼らが成長し、調子を取り戻し、世界相手に互角に戦えるようになった場合には、宝の持ち腐れ状態、すなわちアルゼンチン代表のような「良い選手がたくさんいるのに使う枠がない」ことになってしまう。それはそれでもったいない。
結局のところ
元も子もない結論になるが、結局のところ、穴にならない程度には守備力の高い司令塔が出てくればいい話なのだ。今の日本代表は致命的な弱点のある柴崎岳という選手に依存しすぎているから、何をするにも動きが取りづらいのだ。ワールドクラスの選手でもない限り、絶対的な存在(その選手ありきでチームを作るような)は作らない方がいい。
まあとりあえずジョアン・シミッチを帰化させ(ry というのは冗談で、日本人若手選手から彼のような選手が出てきて欲しい。
司令塔=守備が苦手でドリブルもできなくていい という時代はもはや終わりつつある。近い将来、トニ・クロースやデ・ブライネのようなマルチな司令塔が出てくることを期待している。
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