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胸糞映画「ミスト」から得られる「生きる勇気」

はじめに

この映画は3/13日にテレビで放送されます。今回の文章は、それに際して書きました。
記事後半にネタバレがあります。しかし、ネタバレの前にちゃんと「ここからはネタバレです」と書いてあるのでご安心ください。

簡単な映画の概要

「ミスト」はカルト的人気を誇る有名な映画。
この映画の持ち味(?)は、なんといっても圧倒的な後味の悪さ。あまりの後味の悪さに精神状態を悪くするまで出てくる、そういう次元。
だが、圧巻のオチ、ミステリアスな雰囲気、人間の本質の描写などが非常に優れており、名作として評価されているのも事実である。

ネタバレしないストーリー紹介

大勢の人で賑わう週末のスーパーマーケットが、突然濃い霧に覆われる。勇気を出して店から出た人々は姿を消してしまう。霧の中には一体何が? 客は次第にパニックに陥って行く…という話だ。ええーなにそれ気になる〜!と思うだろう。だが、言ってしまえば、真相は大したことない。そんなもんか〜って感じ。
大事なのはそこではなく、あまりにショッキングな結末だ。

結末に関するエピソード(ネタバレではないのでご安心を)

ちなみにこの映画の結末は、スティーブン・キングが書いた原作小説とは異なるものになっている。
監督のフランク・ダラボンが書き換えたのだ。しかし、キングはこの結末を絶賛した。「なぜ自分にこのアイデアが浮かばなかったのか。」とまで言ったとか。ホラー、サスペンス映画がハッピーエンドである必要などないと考えているのがその理由だそうだ。
だが個人的には、映画版の「一見最悪なバッドエンドに見えて、実は観るものを励ます」という、解釈次第で受け取るメッセージが180度変わる、奥の深い終わり方は、純粋に至高だと思う。
気になった人は観てみて。

(余談)この作品と同じくらい後味の悪い映画

後味の悪い映画は少なからず存在するが、個人的にはこの「ミスト」と、ブラッド・ピット×モーガン・フリーマンの「セブン」が群を抜いていると思う。
両者とも、あまりに救いようのない、辛い結末を迎えるのだ。
ちなみに蓮氏が両映画を観た後にとった行動は以下の通り
ミスト…布団に入って寝込む (昼)
セブン…心ここに在らず状態で何となく昼食を食べる


オチとネタバレ

以下、ネタバレになります。すでに観た人、あるいは「観てないけど別にネタバレされてもいいアルよ」という人以外は読まないでね。

霧の外にいたのは軍の実験のミス(だったと思う)で生まれてしまったモンスターだった。
主人公はそれでも、店にいるよりはマシだと考え、脱出することを決意する。息子と、同意してくれた男女3人とともに、5人で車に乗り込む。彼は怖がる息子に「必ず守る」と約束した。
しかし霧の中から現れたモンスターに囲まれてしまう。
ここで主人公たちは決意する。「もうダメだ。こんな気持ち悪い奴らに殺されるくらいなら、自分たちで死のう」
そして拳銃を手に取るが、ここで問題が。
5人いるのに、弾は4発しかないのだ。
そこで、主人公は「僕は自分で何とかするから」的なことを言って、モンスターに殺されるのだけは嫌だと言う自分以外の4人を射殺。彼自身は止むを得ず、気持ち悪いモンスターに殺されることを覚悟し、やつらの前に出て行く。
しかし… モンスターはいない。代わりに軍の戦車が現れた。
つい先ほど、軍がモンスターを駆除したのだ。
モンスターの餌食になる役を買って出た自分が、1人だけ助かってしまった。罪悪感に囚われて大泣きする主人公を軍人たちが見つめる。そんな光景を最後に、映画は終わる。

この結末から勇気をもらえるとはどういうことか。

さて、この最悪の結末から勇気をもらえるとは何事か。
この映画の結末は、「諦めずにもう少し粘っていれば、全員が無事に助かることができた」という皮肉なものだ。
主人公たちは恐怖の対象が近づいてくるのを感じ、死ぬことを選んだ。しかし、その数分後に状況は大きく変わり、完全なる平和が訪れたのだ。

つまり、この映画から我々人間が得られる勇気とは、
「生きるのが辛い、死にたい、死んだほうがマシだ、と思っても、諦めずにもう少し粘ってみよう。粘っていれば、数分後とまでは行かなくとも、近い将来自分の人生が大きく好転する可能性があるのだから」
というものだ。
確実に好転する保証などないが、絶対に好転しないとも言い切れない。もう少し、生きてみようよ。というメッセージを感じたのは僕だけではないはずだ。

監督のフランク・ダラボンがここまで考えてこの結末を作ったのかはわからない。単に「ショーシャンクの空に」、「グリーンマイル」と言った感動話を立て続けに作ってきた身として、今度は感動話と見せかけてからの超バッドエンドで観客を驚かせてやろう!くらいのノリだったのかもしれない。
だが、結果として、この結末が多くの人に勇気を与えているような気がしてならない。

お金に余裕のある方はもし良かったら。本の購入に充てます。