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空中戦で大事なこと

今回のテーマは「空中戦(ヘディングの競り合い)において、身長はそこまで重要ではない。」ということ。
身長が平凡でも、空中戦で世界と渡り合うことは可能だ。身長は「あると有利」という程度だと思う。

空中戦において本当に大事な3要素

それは、

1、落下地点を素早く的確に見極める能力
2、相手より先にそこに入り、相手が入れないようにフィジカルでブロックする能力
3、ジャンプ力(あるいは身長)

だと思う。要するに、身長が無くてもジャンプ力があれば十分だし、それすらなくても、1や2があれば良いのである。わかりやすい例は元日本代表の岡崎慎司だろう。彼は身長もジャンプ力も平均的だが、ヘディングでのゴールが多い選手だ。
槙野も昌子もそう。身長は182cmだが、1と2が上手いがゆえに、世界の巨人たちに空中戦で負けない。



それが結構難しい

言うのは簡単だが、ハイボールの落下地点を見極めるのは本当に難しい。
カーブがどの程度かかっているか、ボールがどの程度落ちてくるか、逆に伸びてくるか。風にも左右されるし。
もちろん、難しいのは攻撃する側(アタッカー)も同じ。アタッカーの場合はセンターバックとは違い、落下地点を見誤っても、「ミスったら終わり」という恐怖がない。精神的には楽だ。ただしアタッカーは、センターバックと違い、「ヘディングできれば勝ち」ではない。目標は得点だからだ。つまり、ゴールも見ながらそれをやらなきゃいけない。これは恐ろしいほど難しい。

これが世界一上手かった(と個人的に思っているのは、元ドイツ代表のミロスラフ・クローゼ。
クローゼのヘディングゴール集↓
https://m.youtube.com/watch?v=ns0oyH1x8fs
身長は182cm。ヘディングの神とさえ言われてきた割には、案外小柄だ。(バク転パフォーマンスからも分かる通り、ズバ抜けたジャンプ力はあったが)
彼のヘディングの最大の特徴は、居場所の良さだった。つまり、ボールが落ちてくる場所に瞬時に位置取りできるのだ。
相手はクローゼに一足先にベストポジションを奪われてしまい、花見の席取り合戦に負けた人のごとく、舞い落ちてくるボールに対して中途半端な場所から頭を伸ばすことになる。そりゃ、勝てるはずがない。
他にも、175cmながら空中戦でワールドクラスの強さを誇るチチャリート(ハビエル・エルナンデス)、178cmながら世界屈指の空中戦の強さを持ち、日本代表を散々苦しめたティム・ケーヒル。
彼らもなにかと「背は低いがジャンプ力が高い」と評価される。だが個人的に、バケモノ級にジャンプ力が高い印象は受けない。高い方、そんなレベル。
彼らが空中戦でワールドクラスの活躍を見せてきたのは、この記事に書いてきた能力の高さのおかげだと思っている。

上田綺世の空中戦の強さ

そして、法政大学から鹿島アントラーズに加入した上田綺世にも、彼らのような才能がある。
彼は身長182cm。空中戦を武器にするには微妙な体格だ。しかし、彼の空中戦の強さは驚異的だ。
それは、上述した3要素、すなわち

1、落下地点を素早く的確に見極める能力
2、相手より先にそこに入り、相手が入れないようにフィジカルでブロックする能力
3、ジャンプ力(あるいは身長)

がズバ抜けているからだ。3のジャンプ力も、単にジャンプ力があるだけでなく、長い滞空時間を活かして最高到達点でヘディングできるというジャンプのセンスがある。身長は182cmだが、ジャンプすると192cmの選手に見えるのはそのためだろう。

さらに、彼は空中戦に限らず優れたポジショニングセンスを持つので、そもそも初めから良い場所にいるというアドバンテージもある。

空中戦の強さを持つ日本人選手は少なく、いてもセンターバックであることがほとんどだった。センターフォワードの選手でここまで空中戦に強い選手は貴重であり、なおかつ上田には駆け引きのうまさ、スピード、シュート技術も備わっている。
コパアメリカで日本代表の試合しか観ない人たちに叩かれた彼だが、上述の理由から、まぎれもない超逸材だと思う。

終わりに

空中戦の際の落下地点予測に関しては、練習するしかないと思う。指導にも限界があるし、プレー動画を見ていてもどの程度参考になるのやら… 選手の思考回路まではわからないよね。
しかし、練習を重ねて落下地点予測の達人になれば、身長が180前後でも、世界と戦えるだけの空中戦の強さを手に入れられると思う。具体例は、アタッカーなら先に挙げたエルナンデス、ケーヒル、ディフェンダーならカンナバーロやイバル・コルドバ。彼らは皆、身長170cm台。
イバン・コルドバに至っては170ちょいだ。それでも彼は世界最高のセンターバックとして君臨していた。(カンナバーロは2006年にバロンドールを獲ったし)

プレーする人も観る人も、「身長が低いから空中戦ダメ」というネガティブな固定観念にとらわれず、「実は空中戦は奥が深く、身長は勝敗を決する1つの要素に過ぎない」ということを知っておいてほしい。

お金に余裕のある方はもし良かったら。本の購入に充てます。