見出し画像

あの時の一息


#炭酸が好き

出不精な私にとって、自ら外に出ることは少なく、尚更に運動することなどあるわけがなかった。
そうしてあんなにも億劫に感じていた学生時代の体育の授業のありがたみを十数年越しに感じたわけである。
健康や時間を努力して得る必要がある現代人にとって、半強制的な運動習慣とはありがたいものであったと思う。
こう思考するに至ったきっかけはたった一缶の炭酸飲料であった。

こんな私でも少しばかりの友人はいて、ありがたくも軽い登山という外出の機会を得た私は数時間の苦行を得て、山頂に至った。
そうして数年ぶりにサイダーを山頂にて飲んだわけだが、これが中々に素晴らしいものであったのだ。
運動後の一息とはこんなにも気持ちの良いものであったのか。
そして数年ぶりに、学生時代の体育の授業の後に自動販売機の前でたむろっていた、あの時の記憶が思い起こされたのである。

あの感動というか、開放感が忘れられなかった私は社会人ウォーキングサークルに所属することにした。
少し前の私では信じられないことであったのは言うまでもない。
そうして、何とかゴールに至り、目についた炭酸飲料を一気に呷る。
が、これがまた拍子抜けするようなもので、正直あまり満足のいくものではなかった。
別に運動後の炭酸飲料が悪かったわけではない。
そして私は明確な答えをその場で思い至ったのである。

きっと私は運動後の単純な休息を欲していたわけではないと思う。
ただ友人と駄弁りあうあの時間と空気感が恋しかっただけなのだ。
こんなことに今更になって気づくとはなんとも寂しい話であると思う。

とはいえ、私はサークル活動をやめることはなかった。
数年ぶりに、私は新しい友人をサークル活動で得たためである。
もしかしたら再びあの感動をこのサークル活動で得ることはできるかもしれない。
そうして、私はこれからのサークル活動が楽しみでならないのだ。

さて、こんな知見を一缶の炭酸飲料で得るとはなんともままならないものだなと思う。
とはいえ、ただ今となっては毎度愛飲しているあのサイダーに感謝の意が絶えない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?