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JR線 恵比寿駅 西口改札交番前で

忘れられない人がいる。

人生の主役は私。アカデミー主演女優賞を貰ってもいい。友達も両親も恋人ですらサブキャラで、私の人生を引き立てる存在だ。それでも助演男優賞を上げたい人は一人二人はいる。恋多き女なので。

彼は23区内様々なところに連れて行ってくれた。椿山荘にホタルを見に行ったり、最後の東京花火大会は雨で残念だったけれどその代わり二人で銀座の鰻屋に行った。とても紳士な人で、私が帰りやすいからと恵比寿で会うことも多かった。

彼との一番の思い出は、葉山に行ったことだ。水着でじゃれ合って、疲れては彼の肩に寄り添って。私たちはもうすでに別れていたけれど、未だ惹かれ合っていた。恋人でも友だちでもなかった。いつまでも彼の迷いが見えていた。

友だちと八重洲で飲んだ夜。ある友だちが恋人に会いに渋谷へ行くとタクシーに乗った。私もたまらなく彼に会いたくなり、同乗することにした。恵比寿経由で渋谷へと、運転手にリクエストする。

車内は静かだった。たくさん飲んで少し気持ち悪かったのもあるけれど、友達も友だちで恋人のことを想っているし、私は私で別れた恋人のことを想っていた。恐らく今日も五反田に流れるだろう。そんな予感しかしなかった。

23区内、目まぐるしく恋をした。短い季節だった。私の心に傷を付けた。人生で忘れられない人。忘れられない人は忘れたい人。そんなことを教えてくれた。

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