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世界で一番とびきり特別なもの

もうあと1ヶ月もすると35歳の誕生日を迎える。ついに、だ。ニューヨークで過ごすことを目論んでいたけれど今回はそれは叶わないらしい。連休を申請しなかったし、来年の移住のために余計なお金は使いたくないと考え控えた。それに納得している。さてしかし、ここからが肝心。特別な人に誕生日に何をねだろう。1億5千万のマンション、ブルガリの指輪、それとも・・・。

はっきり言って金額ではない。世間一般で価値のあると言われるものでもない。何か、世界で一番ととびきり特別なもの。そういったものが欲しい。それが物かどうかも分からない。そう思った私は、燃えるような朝焼けの中彼に尋ねた。東の空にかかる雲に太陽のだいだい色が燃えるようだった。

「あなたにとって世界で一番とびきり特別なものは何?」

「空。僕はいつも昔から空を見ていた。」

やはり私の特別な人は特別だった。ただその答えだけだと不思議な人だと思われるだろう。実際におかしな人だ。純粋でワガママでやきもちやきで癇癪持ち。それでも好きで好きでたまらないのだから私もだいぶ盲目らしい。私の特別な人。大好きな人。続けて私は質問する。

「あなたの特別になるにはどうしたらいい?」

「特別じゃなかったら駅まで送らないよ」

彼にとってもすでに私は特別だった。何度も何度も繰り返し聞いた。私は特別かどうか、何度も何度も繰り返し聞いた。今年度一、幸せな時間だった。もうすでにあなたに会いたい。四六時中一緒にいたい。今日も睡眠時間2時間半。どうしたらもっと一緒にいられるか考える。私の好きな人、特別な人。困難しかないけれど、あなたが好きです。たまらなくあなたが好きです。拗ねる私に「おいで」と言って手を差し伸べ抱き締めて頭を撫でてくれるあなたが好きです。

秋の気配を感じる風の中、彼は私を駅まで送ってくれた。別れ際の甘いキス、何度も何度も繰り返す。あなたは私の「世界で一番とびきり特別な」人。

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